トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1030

2017-05-12 08:22:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二日間にわたり地中海を航走した試作艇がわずかばかりの風格をにじませている。
 スダヌスらの船が浜を出ていく、オキテスら一同がこれを見送る。
 『おう、ギアス、俺らも出るか』
 『はい、解りました』
 一同の目線がギアスに集まる、指示を発する。
 『一同、乗艇!座につけ!ゴッカス、着座の指示をせよ!』
 『はい、了解!』
 浜一帯に凛とした気が漂う。
 『ギアス艇長、一同、着座完了!』
 『オキテス隊長、乗艇してください』
 乗艇する二人、部署に就くギアス、浜に目をやる、スダヌス方の者ら数人の姿が浜にある、オキテスとギアスが手を上げる、軽く低頭する、彼らが礼を返してくる。
 ギアスが指示を出す。
 『漕ぎかた、櫂をとれ!漕ぎかた開始!』
 艇が航跡を残して浜を離れ始める、ギアスらが再び浜に目を移す、手を振る、浜の彼らも手を振る、惜別の情が流れた。
 艇が進む、時を経る、四半刻、入り江口にさしかかる、入り江の海からクレタ海に出る。
 『ゴッカス、次の転進地点まで進路は北へだ。沿岸に沿って北上せよ、いいな』
 『了解しました』
 陽射しは薄陽、海はさざ波、緩やかなうねり、わたってくる風は東からの微風、凪の状態である。
 艇が北へと進んでいる、スダヌスの浜を離れて、一刻余り、西への転進地点に到った。
 『ゴッカス、進路を西へだ!ホたスルに舵操作を指示してくれ』
 『了解!』
 『あ~あ、それから、10人くらい、漕ぎかたの交替がどうかと考えているのだが』
 『いいですね!やりましょう』
 『このあと一刻半くらいで我々の浜に着く。半刻くらい進んだら、艇を西南に転進させるのだ。いいな』
 ギアスが言葉を継ぐ。
 『なお、西南に転進して半刻、小島が見えてくる。小島が見えたらその方向にまっしぐらに艇を走らせろ。それでいい、帰るべき浜が見えてくる』
 『了解しました!』
 ゴッカスは、ギアスからの指示通りに艇を航走させる。西に転進してから向かい風にあらがって艇を走らせる。
 わずかばかり細めにできている艇体、衝角構造の波割り、艇尾船底の流線形態等、艇の走りに効果的に働いている感がする。ゴッカスはヘルメス艇の漕走感と違いについて考えた。
 ギアスに言った時間経過と航走における到達地点に大きな隔たりがない、ゴッカスの目に小島が見えてきる。三日間の航海の終着点に近づいている。
 浜が見えてくる、大勢の者が浜に押しかけている光景が見えてくる。
 瞬く間に指呼の距離となる、大勢の者たちが手を振っている。
 艇上の者らも手を振ってこたえる。
ジャンル:
小説
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