トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1054

2017-06-15 08:15:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 進水した新艇が晴れ晴れしている。オキテスの目にそのように映る。
 船衆らが乗る、新艇が新しい命を得る、その息吹を感じた。
 頭領がオキテスに近づく、昂ぶる声音で話しかける。
 『おう、オキテス殿、ありがとう!進水式をこのように盛大にやったのは初めてだ。心から礼を言う。君らの帰りの航海は、船を押す風は期待できない、航海の安全と無事を祈る。俺はこれからラムピまで船衆と出かける。ではな』
 『そうですか、統領の航海の安全と無事を祈ります。これからもよろしく願います』
 頭領が手をのばしてくる、握るオキテス、二人の胸に感動が走る、オキテスは目を潤ませた。
 次いで、スダヌスに身体を向ける。
 『スダヌス殿、ご苦労でしたな。帰途も二日がかりの行程だ。道中の無事を祈る!』
 『頭領、またの会う日を楽しみにしています』
 『おうっ!』
 二人は手を握り合った。
 『あ~あ、オキテス殿、もう一つ、礼を言わなければならん。昨日は、海路の掃除をしてくれたそうだな。夕べ遅く、使いの者から報告があった。ガブドス島に住み着いている不逞の輩をやっつけてくれたことに礼を言う。ではな』
 オキテスらは、新艇に乗って出かける頭領ら一行を見送った。
 『オキテス隊長、ここまでの業務の遂行、ご苦労でした。帰途の航海を安全第一で乗り切ろうではありませんか』
 『了解!』
 新艇納入業務の句読点を『了解!』で打った。
 オキテスは、ギアス、テナクス、ゴッカス、班長らを招集する。
 『ギアス船長、まず訊ねる。負傷者二人の容態は?』
 『今朝、傷の具合を確かめました。快方に向かっています』
 『よし!そのようであれば、言うことなし!一同で朝めしにする。朝めしを終えたら、帰途に就く、風は期待できない。今夜の停泊地は、昨日と同じペレカノスだ。ギアス船長、漕ぎかたの交替をうまくやること。安全第一で航海だ。沿岸との離岸距離は、昨日と同様で航走してくれ。いいな!以上だ』
 『解りました』
 一同は、言葉を交わしながら朝めしを終える。
 軍船は、テムパキオの港を出る、凪状態の海に波をたてる。船上に響く櫂操作の調子をとる木板を打つ音、調子を合わせて海をかく、軍船は航跡を引いて進んだ。
 ギアスは、漕ぎかたの交替を漕ぎ座60座20人4班構成で交替手順を組んで航走した。
ジャンル:
小説
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