トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1074

2017-07-13 06:52:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『狙った的を大きく外したとはな!』
 リナウスに指南を受けている者らがパリヌルスの弓射を固唾をのんで見入っている、80余りの目線がパリヌルスに注がれている。
 パリヌルスは二本目の矢をつがえる、心技体を的の一点に絞り込む、的中を強く念じる。
 弓の弦を引く、矢筈を放す、弓弦から放れた矢は、的を目指して飛翔する、的を射抜いた。
 リナウスの声が飛ぶ!
 『隊長!見事です!』
 これを目にした彼らは、的を射抜いた二本目の弓射の見事さに驚きの目を見張った。一拍の間をおいて拍手が沸き起こった。
 パリヌルスは、拍手をしてくれた彼らに軽く会釈して場を離れた。
 『隊長、見事でしたな。さすがです』
 二人は目を合わせる、微笑む。
 『いやな、二本目が的をとらえてほっとしている。それが本音だ。二本目も外れたらと考えた』
 『そうですか、私がやっても隊長のようにうまくいくかと考えると、背筋に寒さが走ります』
 『なあ~、リナウス、もし二本目も的をはずしたらどうなるかだが、背筋に寒さどころではなく背筋が凍るよ!』
 『隊長、何か用件があるのでは?』
 『おう、用件か、リナウス、お前から尋ねられると話しやすい』
 パリヌルスは、リナウスの目をじい~っと穴をあけるように見つめた。
 『実はお前に折り入って頼みたい用件があってきた。何としてもひきうけててもらいたい』
 『用件を承ります』
 『お前も知っているように、テムパキオへの新艇納入航海で敵と遭遇して海上において戦闘を展開して勝利した。その祝宴を明日催行する』
 『ほう、それはいいですね!彼ら一同、敵に命をさらして、戦い、勝利した。祝宴を催す、大賛成です。それで私がやる役務がある。うれしいですね、何でもやります。言ってください』
 『おおっ!お前、両手ばなしで引き受けてくれるのか。うれしいね!では、用件を話す。月桂樹の木葉で勝利の冠を作ってほしい』
 『どれくらい作るのです?』
 『祝宴というと、飲めよ食べろだけでは芸がない。海上で闘い、勝利した者らの栄誉を表彰してやりたい。浜にいる者らの気持ちを伝えたい。オキテスとオロンテスと俺の三人で話し合って決めたのだが、航海に参加した者ら全員に勝利の冠を送ろうということにした。彼ら全員だから93個だ。その副賞にオロンテスが特別のパンを焼くことになっている』
 『解りました。作ります。この間、三人の手すきの者を連れて山歩きをしました。そのとき、はからずも月桂樹の群生地を見つけました。いいタイミングです』
 『月桂樹の木葉の採集と冠の作り手に30人くらい動員しようと考えているのだがそれでいいか』
 『30人も作り手を動員してくれるのですか、それで十分です。木葉の採集、冠の製作、ひとりが三個くらいの製作ですね、うまくいきます。任せてください』
 『明日の朝、彼らをここへ連れてくる。リナウス、頼んだぞ!』
 『解りました。出来あがりを持参して、祝宴に参加するということでよろしいですね』
 『おう、それでいい!では、明朝、連中を連れてここへ来る』
ジャンル:
小説
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