『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 902

　建造の場には、軍団長、オキテス、オロンテスがいる。
　『お～っ！来た来た！パリヌルス、こっちだ』
　イリオネスが手を振ってパリヌルスを招き寄せる。
　『おう、三人とも聞いてくれ。統領から連絡を受けている。各現場が今日の作業を終えたら、俺の宿舎に集合だ。パンとぶどう酒だけの夕食だがそれで我慢しろ！忙中に開く会議だ、明後日の新艇引き渡しを終えたら、案件を審議、検討して決定する。その打ち合わせ会議であると心得てくれ。いいな』
　『解りました。了解しました』
　『オロンテス、パン工房も大忙しだ。パンを５人分だけもって俺の宿舎に来てくれ』
　『パリヌルス、オキテス、そういうことだ。いいな』
　『はい、解りました』
　三人は各自の持ち場に散った。
　終業の時が来る、各現場が作業を終える、終礼を終える、各自がそれぞれの持ち場から、イリオネスの宿舎へと向かう。
　アヱネアスがイリオネスの宿舎の戸口の前に立っている、イリオネスが帰ってくる、パリヌルス、オキテスが姿を見せる、オロンテスの姿はまだない。
　『あっ！統領！ご苦労様です。オロンテスは、もう来ると思います。中へ入りましょう』
　一同が宿舎の中に入る、イリオネスは着席をすすめた。
　『あっ、遅れました、申し訳ありません』と言って、オロンテスも席に就く、一同の顔がそろった。
　アヱネアスが腰をあげる、一同と顔を合わせる、アヱネアスの目は一同に感謝を伝えている、口を開いた。
　『おう、一同。日頃の務め、苦労を掛けている。統領として諸君ら一同に感謝の気持ちを伝えたい。先日より、君たちに大変苦労を掛けた。その尽力に厚く礼を言う、ありがとう。明日、明後日と大変が続く、これが我らが大事だ、奮闘よろしく頼む。この多忙があればこそ、安心して朝を迎えることができている。君ら一同に大変感謝している、ありがとう。とにかく、明後日の新艇引き渡し、パン及び堅パンの納入を落ち度なくやり遂げる』
　『はい、解りました』
　一同が返事を力強く唱和した。
　『軍団長、各事業の現状を聞いてくれ』
　『はい、解りました』