トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  885

2016-10-12 05:02:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスと四日後に受け取る新艇の打ち合わせを終えたテカリオンは、アヱネアスに近づき声をかけた。
 『統領殿、オキテス殿より新艇について説明を聞き、諸事打ち合わせを終えました。新艇を買いつけたことに満足しています。ありがとうございました』
 『当方こそ、テカリオン殿に納入できることをこの上なく喜んでいます。礼を言います。いい取引をしていただけるよう祈っています』
 傍らに立っているイリオネスもテカリオンに新艇二艇の納入についての礼を述べた。テカリオンは、居ならぶ一同に挨拶を述べて自船へと歩を向けた。
 
 夕陽が空と海を茜色に灼いている、その身を海に沈めていく、アヱネアスらの浜が今日を閉じていく、浜の各所に終業の声がこだましている、彼らが宿舎への道をたどる、建造の場に警備の者たちが部署に就く、夜警の担当隊が野営陣を張る、かがり火の薪の山に火が入れられた。

 パリヌルスはハシケに乗って、テカリオンの船へと浜を離れていく。
 宵のとばりの中に声が通る。
 『おう、パリヌルス!よう来てくれたな』
 船べりに立つテカリオンが声をかけてくる。
 『おう、テカリオン!今日はありがとう。お前には、でっかい感謝だ、心から礼を言う』
 互いの声掛けが終わり、パリヌルスは、テカリオンの船に乗り移った。
 『おい、夕めしを済ませたのか?』
 『いや、まだだ。お前が来たら、一緒に食べようと思ってな、腹を空かせている』
 『おう、新艇の姿形図と仕様書きだ6枚づつある。受け取ってくれ!』
 『お~お、ありがとう!これがあると仕事がやりやすい、思いがけない効果があるのだ』
 テカリオンのスタッフがぶどう酒と肴を運んできた。
 『おう、ありがとう。船室においてくれ。みんなもやってくれているか?』
 『はい、楽しくやっています。パリヌルス隊長、ゆっくりしていってください』
 『おう、ありがとう』
 二人は船室へと身を運びくつろいだ。
 『パリヌルス、このたびは久しかったな』
 『おう、そうだな』
 『俺たち。あい変わらずだな。互いに元気で何よりだ』
 二人は肴をつまみ、杯に酒を注ぎ口に運ぶ。
 『こんな言い方はよくないが、ここだけ、俺とお前だけの場だ。俺がお前らと、このようにして取引きできる。これもお前がいればこそできる。お前に感謝の気持ちでいっぱいだ。パリヌルス、ありがとな』
 目線を通じて心を通わせる二人がそこにいた。
ジャンル:
小説
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