雨の日の話 "古い宝くじは誰も買わない"

2016年10月25日 | 雨の日の話

 

 『イラへ 今日は弁当箱が空っぽだった。自業自得だと思っている。カフェで長いこと君を待たせたね。昨日の朝、出かけようとしてあることに気づき、洗面所に戻った。すると懐かしい匂いがした。祖父がシャワーを浴びたあとの匂いだ。まるで彼がいたような。

 でも、そこにいたのは私だけだ。私から、晩年の匂いがしていた。いつ老け込んだのか。その朝、老け込んだのか。ずっと前からだったのか。洗面所に引き返してたら、そのとき気がついたはずだ。

 人生は私をなだめながら進む。前後に揺らしたり、左右に振ったりして、気づいたときには、古い宝くじは誰も買わない。

 君が待っている間、私もカフェにいた。君はバッグをいじったり、水を飲んでいた。声をかけたかったが、離れて見つめるだけ。君は美しかった。君は若くて夢見る年頃だ。夢を見させてくれて、心から感謝しているよ』


 -The Lunch Box-


 平穏に暮らしていた日々が、ある日、少し変化する。偶然の間違いが、一時夢を見させてくれる。やがて、キラキラ輝いていた日々から、ありふれた日常へ。あきらめと引き換えにしたものは、何だったのだろう。


ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 雨の日の話 "Somewhere in T... | トップ | 水曜日の話 "雀谷 4"-"I Be... »
最近の画像もっと見る

雨の日の話」カテゴリの最新記事