himetaku成長期

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仕事オンチな働き者

2011-03-15 07:26:46 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:仕事オンチな働き者
著者:山崎 将志

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:1.5H
おすすめ度:☆☆☆☆(5点満点4点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<現代は時間消費社会>

我々の多くは、健康で文化的な最低限度以上の生活をしている。
そして、その余った部分はより健康的で文化的な生活をするために使われる。

もちろん、余剰の一部は将来のための貯蓄に充てられるし、なかには医療費用や介護費用で大変な世帯もあろう。

しかし、それら以外の部分は、大画面薄型テレビや美味しく炊ける炊飯器の購入や、外食、お菓子、お酒、キャラクターつきの子供用のペンケースなどの消費に充てられている。これらは、すべて精神的満足のためである。

大昔の我々の生活から比べたら、なんと恵まれていることかと思う。たとえば、江戸時代の一般庶民の生活に比べたら、ずいぶん贅沢な悩みである。江戸時代の中心的エネルギーであった森林はきりつくされてしまった。黒船来航の時には、日本中の山が荒廃していたという。また、人口は3000万人でずっと横ばい。栄養不足も深刻で、男の平均身長は150センチ台、女は140センチ台まで低下、その多くは頭蓋骨には栄養失調の証拠がはっきりと表されているという。

悩むのは、悩む時間があるからである。

確かに、本当に大変な人もいる。しかし、大きな歴史の中での比較をすれば、我々は時間が余って仕方がない。食材はスーパーに行けばすぐに手に入るし、洗濯も機械がやってくれる。

そして余った時間をどう使おうかと悩む。そう、我々がいる社会は、「時間消費社会」である。

時間消費社会と言うと、勤勉、成長、規律などを重んじる価値観でモノゴトを考える人たちにとっては、なんとも不謹慎に響くかもしれない。しかし、人類の歴史はヒマ、あるいは余裕の追求であった。そして、その過程で生まれたヒマを埋め合わせるためのものを求めてきた。

人類は脳が発達したおかげで、刺激がないとおかしくなってしまう。刺激にはすぐ慣れてしまう。だから、さらに新しいものを求めていくのである。

あらゆる人が時間つぶしの材料を求めている。時間つぶしだから楽しくなければならない。何が楽しいかは人それぞれだし、どんなに新しくてもそのうち飽きられる。その時間つぶしの材料は、企業が提供している。そして、あくなき個人の欲求に応え続けるのは本当に難しい。

そう、時間消費社会で企業を運営するということ、そしてそこで仕事する我々には、本当に高いレベルが求められているのだ。

ソニーはある意味究極の時間つぶし材料提供企業である。生死に関係しないものばかり作っているが、だからこそ、実は我々にとって大変重要な企業なのである。

<利他のサイクルに乗せる。>

利他という言葉がある。

子育て行為など、自然には多くの利他的行動と考えれられる例が見られる。しかし、選択や淘汰は実質的には遺伝子に対して働くものであり、一見、利他的に見える行動は、種全体として遺伝子を残していくという観点から結局は利己的である、などと説明される。

人間社会では、利他と言うと、自分を犠牲にして他人のためになることをする、あるいは、強い者が弱い者に施しを与える、といったイメージで使われることが多いように思う。

しかし、ビジネス社会においては、異なる意味合いで、もっと使われるべきなのではないかと思う。

まず本の話である。
「本は書店で売っている。」これは当たり前だ。「本は書店が売っている。」これが新しい見方である。何だ、その程度のことかと笑わないで、これから先を聞いていただきたい。

著書は売ってくれていると思っている。それでいい。では書店はどうだろうか。

書店は売上を上げたい。店長は前年同期比○パーセント増、などの目標を持って、毎日店作りを考えている。書店員も自分の担当エリアがある。売上があがるような商品を探しているのと同時に、自分なりの仮説検証を楽しんでいる。

これ売れるかな、売れた。もっと売れるかな、もっと売れた。この本はあまり注目されていないけれど、自分は売れると思う。どうだろう―

書店員は、このような思考サイクルを回しているのではないか。だから、商材開発者(著者、出版社)としては、売り手が売りたくなるような、売りやすい商品を考えないといけない、いうことである。

要するに、目標達成したい、頑張りたい、楽しみたい、という人への実現ツールを提供すると、結果として自分の利になる。これが本当の利他である、ということだ。

KPIという言葉がある。Key Performance Indicatorという英語の頭文字をとったもので、目標管理における重点項目という意味である。最近のビジネス界では割と一般的に使われている言葉である。

先述の書店や書店員の話もKPIに深く関係する。成果の上げ方のエッセンスを一言で言うと、「他人のKPIに乗せる」ということである。つまり、他人の重点目標を実現してもらう事によって、自分の目的を達成されるのだ。

<あなたはwant,should,must型のどれ?>

会社組織のポジションには、大きく分けて事業家、管理者、オペレーターの3つがあると思う。この3つのポジションの特性も、want,must,shouldで整理することができる。事業家は「やりたいことをやる」人、「やるべきこと」をやるのは管理者、「やらねばならぬこと」をやるのがオペレーターである。

課長と従業員が仲が悪い、社長と課長の議論は平行線のまま、といった、本質的に分かり合えない理由はここにあるのではないか、と思う。

「これやろうぜ」と社長が言ったとしても、「なんだよ、こちらは手がいっぱいなのに、また仕事を増やして…」と社員はなってしまう。

それは、「やらなければならない」ことをやっている人の視点に立てば、「やらなければならない」ことが増えるだけだから面倒以外の何物でもない。これは当たり前である。

ビジネスのインパクトとしても、人のモチベーションとしても、shouldが一番弱い。

だから、「やるべきことをやる」管理者の立場は弱いと言えるかもしれない。「やりたいこと」を打ち出す事業家が強くて、でも「やらなければいけない」仕事をする社員がいないとできない。管理者の難しさはここにあると思う。もし、あなたが仕事でストレスをためているとすれば、今の期待されているポジションと、自分の趣向があっていない可能性を疑う必要があるかもしれない。must型、つまり塗り絵の中身を上手く塗るのが得意な人が、やりたいことをやれ(塗り絵自体を考えろ)と言われても、困ってしまう。逆に、want型なのに、枠組みの決まった仕事をこなすことを求められると、居心地が悪い。
これは、良し悪しの問題ではなく、マッチングの問題である。

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<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「残念な人の思考法」の著者である山崎氏の最新刊。

冒頭の「バカボンのパパ」と「福山雅治」の共通点は、本当に分からなかったです…

前著の「残念の人の思考法」と同じく、面白い切り口で非常に読み進める一冊です。

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

まず最初に、この度の東北大震災で亡くなれた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げます。

テレビからの情報しか被災地の状況を知り得ないのですが、津波や火事による多大な被害に心が痛みます。

1日でもはやく、元の生活に戻れるように願っております。

先週末、私の元に同じような趣旨のメールが4通届きました。

内容は、関西地区に住んでいる方への節電を呼び掛けるものでした。
「震災や原発事故の影響で関東・東北地方の電気の備蓄が底をつくので、関西電力や中部電力が送電しています。関西に住む方は節電を行いましょう」ということでした。

昨日、このメールはチェーンメールとして報じられ、転送しないようにと呼び掛けられました。報道の内容を要約すると、確かに関西電力から関東・東北地方へ送電は行っているが、関西と関東で電圧が違っており、送電の為に変圧を行える容量は決まっている。よって、関西の方が節電をした所で大した影響は無い。また、このようなメールが飛び交う事でネットワークに負荷を掛けるので、転送はしないようにという事でした。

これは、私はおかしいと思います。

メールの内容(節電)を行って誰か損をするのでしょうか?メールを送って節電した人もメールを受け取って節電した人も誰も損をしない。強いて言うなら、関西電力の売上が減るくらいではないでしょうか。

毎年夏に『クールアース・デー』を実施して、ライトアップ施設やネオンを一斉消灯しているのに、節電を広める内容のメールを他の人に回さないようにと呼びかけるのはおかしいと思います。

しかも、内容に御幣があったとしても、少しでも被災された善意の輪が広がろうとしているのを止める理由が「ネットワークに負荷がかかる」と言うのにも、違和感を感じます。

まだまだ言い足りない事があるのですが、出勤前なのでこの辺りにしておきます。

<お知らせ>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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