チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「風を追う物語」第5章 幸せを願い その35

2011-09-07 23:13:44 | 十三歳、少女の哲学「風を追う物語」
 前来た時と比べると、今日は混んでるなぁ。食券を買って、ハヅキ先生と席を探す。
「眩しい!・・・でも、ここしか空いていないわね。」
少しブラインドを下げさせてもらって、大きな窓に沿って設置された長テーブルの席に、二人並んで座った。
「ふぅ・・・今年は暑いわ。ユイさん、家に帰ったら暑いわよ。覚悟しておいた方がいいわ。」
目の前の景色を真っ直ぐ見据えたまま、無表情を貫くユイ。そう言う言われ方、からかわれているみたいで嫌いだ。その空気を読まれたのだろうか?ハヅキ先生は別の話題を振ってきた。
「そのぬいぐるみ、こうして見てると可愛いわね。」
こんな場所でも、ずっと膝に抱いている。これを気に入ったきっかけは、やはり、可愛いからだもん。
「お待たせしました。」
注文したアイスコーヒーが届くと、
「いただきます。」
添えられたクリームと、ガムシロップをたっぷり入れてかき混ぜるユイ。
「で、今は夏休みだけどね・・・」
一口ずつ口に含みながら、学校の様子を教えてくれるハヅキ先生。
 聞きたくもないかと思ったけど、意外。彼女、真剣に耳を傾けている。登校していなくても気になるんだな。学校の様子が。
「勉強の方は、大丈夫?」
首を縦に振るユイ・・・良かった。
「ユイさん、少し重い話になるけど、これからどうする?まず、夏休みが明けてからは?」
どうしようか?教室に入る事は絶対に無理。校舎に入るのも・・・
「自信ない?」
首を縦に振るユイ。
「ユイさん、やっぱり、学校は嫌?どう言うところが嫌?」
うなだれ、唇をかみしめている。こういうこと言って、無理やり登校させるつもりだと思われてしまったんでしょうね。だけど、このまま放りだしてはいけない。彼女の将来を考えたら。
「制服は、受け入れられない?ジャージならどう?」
確かにそれも受け入れられないけど、だけど・・・
 私も教師として、色々な話を聞いたけど、やっぱり、学校を辞めさせてはいけない。それだけは確かに思えることだから。
「すぐに答えられなくてもいいと思うわ。・・・ねえユイさん、私、ずっとユイさんの担任してもいいよ。」
え?
「来年になっても、それから先、高校三年生になっても!」
ハヅキ先生・・・ユイは何だか、物凄く力強い盾を得たような気がした。水滴でびしょぬれのグラスには、まだ半分ほどコーヒーが残っている。流れる雲を眺めながら飲み干すその味は、溶けた氷で薄くなっていた。
ジャンル:
小説
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