『ダークフォース』(DF)とか、 あとは読み物、落書き、日記などのブログ。

DFなどのブログを始めてみました。

小説というより、かなりテキスト寄りです。
更新遅めですが、よろしくです。^^

ダークフォース 第三章 中編 Ⅰ

2010年08月09日 20時36分07秒 | ダークフォース 第三章 中編(仮)
   Ⅰ

 ティヴァーテ剣王国には、
 『花』のように可憐で、美しい王子がいる。

 レトレアの薔薇姫と謳われた、
 その母さえ凌ぐ美貌を持ち、
 剣王国の人々は、彼のことを愛した。

  『ウィルハルト=マクスミルザー王子』である。

 彼、ウィルハルト王子は、
 現在、エグラート大陸の『皇帝』の座にある
 ノウエル叡智王(ノウエル帝)と、
 父王である、
 バルマード王との間で交わされた約束により、
 その身を『人質』として、
 皇都レトレアに置く必要があった。

 神聖不可侵とされたスレク公国を、
 フォルミ大公国が攻め滅ぼした、

  『スレク公国の乱』。

 そのフォルミに対する制裁措置を論議していた、
 御前会議の最中、
 断罪されるべきフォルミと、
 その国の戦士である『リシア』を擁護するような発言を、
 大国の王である、
 バルマード王が口にした事にそれは起因する。

 会議はその後、
 ウィルハルト王子の身を無事、
 この皇都へと送り届ける手段と、
 その期日について話し合われたが、

 王子の護衛を、
 剣王国から直に出させれたでは、
 他の諸侯たちが納得はしない為、
 会議は一時、紛糾した。

 大陸最強の名を冠するティヴァーテ剣王国の、
 その王国の至宝とも呼べる、
 ウィルハルト王子の警護の任である。

 バルマード王は柔軟で穏健だが、
 その配下の将軍たちは、皆が勇猛で、豪気だ。
 『人質』という言葉に息巻いた将軍たちが、
 警護という名目の下、
 どれ程の精鋭部隊を送り込んで来ることか、
 想像するだけでも、諸侯たちはゾッとさせられた。

 ティヴァーテ剣王国は、剣王バルマードは勿論だが、
 各々の将軍たちの実力も驚異的であり、
 万人隊長格(戦士LV85以上)の強者たちで、
 玉座の周りは固められている。

 剣王国に発言など許せば、
 おそらく、その将軍たちの命により、
 戦術級の戦士(千人隊長格 戦士LV80相当)が、
 百名近くは派遣されるであろうし、
 兵の列だけでも、ゆうに万は越えて来るだろう。
 国の二つ、三つ、
 いつでもなぎ払える大戦力である。

 そんな大部隊を、
 皇都レトレアに招き入れたりしては、
 大陸の情勢など一夜にして決してしまう。

 そこで、法王国の女教皇・アセリエスの名が出てくる。
 女教皇の治める、セバリオス法王国は、
 王子のいるティヴァーテ剣王国と、
 この皇都レトレアを結ぶ、その中間に位置する。
 多数の諸侯が列席し、少し慌しさを見せ始めた、
 御前会議のその中、

 セバリオス法王国の女教皇、アセリエスは、
 その純白の美しい法衣姿で徐に立ち上がると、
 慇懃無礼なまでに、丁寧な言葉を選んで、
 「皇都レトレアまでの道中、
  大事なる御身をお守り申し上げたい。」
 と、皇帝と剣王の双方に向かって、やんわり話を持ちかけた。

 ノウエル帝としては、
 いずれは孫娘のエルザ姫を、ウィルハルト王子の妃に、との願いから、
 王子の心象を少しでも良くしたいという考えがある。
 護衛を派遣するなら、女教皇の法王国からなどではなく、
 この皇都レトレアから直接、叡智王家の精鋭たちを送りたいというのが本音だ。

 彼、ノウエル帝の、
 ウィルハルト王子に対する好意は紛れも無いものだ。
 何しろ、かの王子は、
 我が娘同然に愛し育てたレイラ姫の、その忘れ形見である。

 しかし、単に政治目的で、ウィルハルト王子に姫を差し出し、
 強大なる剣王家の後ろ盾を得たいという諸侯は、少なくはない。
 二心なきを示したいバルマード王が、
 即座に、女教皇の申し出に快諾した為、
 王子を護衛する衛士は、法王国が派遣するという運びになった。

 また、各国の諸侯たちもそれで納得した。
 理由は簡単だった。
 「現皇帝の叡智王家と、大陸最強の剣王家が結ぶくらいなら、
  かの麗しき女教皇様に、
  その間を掻き回してもらった方がやり易い。」、と。
 アセリエスとしても、しっかりと掻き回してやるつもりで、
 いつもの如く、場を取り繕っただけのだけの微笑みを、
 列席する諸侯たちへと向け、「フフフッ」、と浮かべていた。

 こうして、ウィルハルト王子が、
 生まれ育った祖国を後にするその期限が、
 この女教皇の手に握られたのだが、
 彼女は、特に急ぐ様子もなく淡々と準備を進め、
 王子には十分な時間を与えてやった。

 結局、この後、アセリエスがその護衛の使節を剣王国へと派遣するのは、
 スレク公国が滅んで一年もの月日が経った、
 大陸暦4096年の、初夏となる。

 皇都レトレアでの会議を終えたアセリエスは、
 その帰途、実に満足気な表情であった。

 会議に先立って行われた、
 ガルトラント王を相手とした御前試合を、
 見事に引き分けて見せたことにより、
 ガルトラント王の面目を保ちつつ、
 屈強なる彼、ガルトラント王と一対一で渡り合える、
 優秀な駒を擁することを、
 諸侯たちの間に宣伝し、
 その発言力を増すことに成功した。

 その時、アセリエスは、
 口にこそ出しはしなかったが、
 この程度の駒なら、
 幾らでも用意出来るといった、
 余裕の表情を見せていた。
 彼女は意図的にそう微笑んだのではなく、
 諸侯たちが勝手にそう、
 思い込んだだけなのだが。

 法王国の人材の豊かさを示す、
 その結果を出せたことに加え、
 麗しいとされる、
 かの、ウィルハルト王子に、
 公然と関わる権利も獲得出来た。

 これは、彼女にとっては嬉しい手土産となった。
 本当ならば、会議を掻き乱して、
 無理矢理開戦へと追い込んでやっても良かったのだが、
 それよりも、遥かに面白い事を彼女は手に入れた。

 彼女は、美しいものを何より好む。
 異様なほどに、彼女の美への執着心は高い。

 誰も見ていて気付きはしなかったが、
 彼女はとても高揚し、ざわめく興奮が、
 その細く美しい指先から零れそうなほど、
 愉快な気持ちでいた。

 彼女はその異なる、ルビーとエメラルドの瞳を、
 まるでオモチャを手に入れた子供のように、
 無邪気に、そして恍惚と艶めかせていた。

 その僅かな機微を気付けるだけの繊細さを、
 レーナが持ち合わせていたならば、
 彼女に対して、こうも後手後手に回ることもなかったであろう。

 道中、アセリエスは、
 教団の戦士の実力を示した功労者であるレーナに、
 護衛の一件を、一切語らずにいた。
 彼女なりに言わせれば、
 「聞かれたならば答えた。」
 といった方が、より正しいが。

 アセリエスは、法王国の聖都へと辿り着いたその足で、
 真っ先に、セバリオス大神殿の中層部へと向かい、
 深緑の髪のエリスの姿を探した。

 アセリエスは、大衆の目など気にもせず、
 白という色があまりにも眩しい、
 目立ち過ぎる純白の法衣姿で、
 エリスの前へと姿を現したのだ。

 エリスはその事をまず驚いたのだが、
 次の瞬間、

「エリス様、お話しがございます。」

 と、アセリエスは声に出して、
 エリスの名を『様』付けでそう呼んだ。

 不意を付かれたエリスだが、
 これはさらに彼女を慌てさせた。
 アセリエスの言葉に、
 周囲の誰もが不思議そうな視線を、エリスの方へと向ける。

 たとえ大神殿内とはいえ、
 上層部に比べれば華もない中層部などに、
 無数の薔薇で満たされた、
 絢爛豪華な白亜の園の主である女教皇様が、
 のこのこと単身、お供の列も従えずに現れている。

 それだけでも、十分、奇妙な光景であったが、
 その彼女は今、動き回るのには、
 やや不便な格好をしている。

 公務の時にしか用いない、
 レトレア織の重たい法衣を着用しているのだ。

 彼女は、皇都から戻るその旅路では、
 数頭の馬に引かせた立派な馬車の中で、
 動きやすく肩の凝らない、仕立ての良いドレスを着ていた。

 聖都に入って、
 その厳(いか)つい法衣に着替えたものと思われるが、
 もっと動きやすいシンプルなものもある。

 アセリエスは、時折、見え透いた奉仕活動も行うが、
 その時も大抵は、略装の軽い衣である。

 それだけでも、アセリエスのこの立ち姿は、
 辺りの目を引いているのだが、
 何故、そのような格好をしているかの理由は、
 彼女にしかわからない。

 さらには、その尊大な女教皇様に正装させ、
 敬語を使わせる相手など、
 この地上にあっては、
 『皇帝』以外には考えられない。

 多くの者は、空耳かも知れないと思っただろうが、
 アセリエスは、エリスと呼ばれるその女性を、
 確かに、『様』付けで呼んだ。

 たとえ相手が、大国の王であろうとも、
 彼女が、その尊大な態度を変えることなどないという事を、
 誰もが知っている。

 アセリエスは、象徴(シンボル)としての、
 『神』や『皇帝』には、
 礼節を重んじるような姿勢を見せるが、
 それ以外の者に対しては、至って冷ややかな態度を取る。

 今、そのアセリエスが、
 エリスよりも一段低いその位置で、
 礼節に適った美しい立ち姿勢を保っている。

 女教皇のその姿は、
 厳かで気品に満ちており、神々しくもある。

 アセリエスは、周囲の視線など、
 まるで気にしていない様子だ。
 彼女にとって、意味を成さない人々の存在など、
 空気と何ら変わりはないのだから。

 だが、さすがに、周りの視線を辛く感じたエリスは、
 アセリエスを人気のない路地裏へと、
 強引に引っ張り込んだ!!

 周囲の人々には、
 突然二人の姿が消えたようにも映ったが、
 あの女教皇様の事なので、
 不思議がるような者も特にはいなかった。

「あんた、あたしをからかって、面白がってるだろッ!!
 人前であんたに、『様』付けされて呼ばれた日にゃ、
 ここでのあたしの立場ってもんが、
 なくなっちまうだろーがッ!!!」

 アセリエスは、
 顔色一つ変えずに、フフフッと笑う。

「笑ってんじゃないよッ!!
 まったく、・・・こっちゃー、息が切れそうだよ。」

 ぜいぜいと息を乱すエリスに向かって、
 アセリエスは言う。

「私(わたくし)、ジラ様とお話しをしていると、
 とても自然に、言葉を話せる気がするのです。」

「『ジラ』とも呼ぶなーーーッ!!
 ますます、タチが悪いわっ。
 ・・・頼むから、
 せめていつも通りに「エリスさん」くらいで頼む。
 ていうか、何で今日に限って、
 格好が『ロゼリアちゃん』じゃないわけよッ!?」

「これは、私としたことが、
 変装する事も忘れていたとワ。」

「ワ、じゃねーよっ!!
 あんた、絶対、ワザとやってんだろうがッ!!!」

「ウフフフフ・・・、
 確かに、冗談でございます。」

 熱くなっていくエリスの姿を、
 ただ、じっと観察するように眺めるアセリエス。

 ロゼリアの格好をしていないアセリエスは、
 感情の起伏を表に現さない為、
 エリスとしても、少々やりにくそうだ。

「ったく、もう。・・・お喋りがしたいんなら、
 一回、出直しておいで。
 あたしゃね、そーやって、
 からかわれるのは大嫌いなんだ。
 あんたはね、あたしの数少ない、
 まともな話し相手の一人なんだよ。
 頼むから、あたしの妹が苦労させられてる、
 どっかの馬鹿息子や、
 マスオなマスオストさんと話してるような、
 空気にしないでおくれよっ。」

 アセリエスはフフッと、笑う。
 嫌味なほどに、
 ワンパターンの表情しか彼女は作らない。

「まったく、・・・何考えてるのか、わかりにくい子だよっ。」

「ウフフ・・・、
 私としても敬愛するエリス様のその想いを、
 是非にも受け入れたいのですけれど、
 残念ながら、今の私では、
 こうする事しか出来ないのです。」

「だから、何だっていうんだい。
 ハッキリしなッ!!」

 特に怒っているわけでもないのだが、
 エリスの言葉遣いは激しい。

 逆に、アセリエスの口調は、
 棒読みとまではいかないが、
 淡々と台詞を読み上げるように語り掛けてくる為、
 この日の二人の姿は、
 いつになく対照的に見える。

 と、アセリエスは、次の言葉を述べる前に、
 エリスに深々と一礼した。

 この、自尊心の塊のような存在の女教皇様が、
 他者に対して頭を垂れるなど姿は、
 そう滅多に見られるものではない。

 アセリエスのその慎ましやかな姿を見て、
 さすがのエリスも少し時間(とき)が止まった。

 アセリエスは、言う。

「私は、エリス様の事を心より尊敬致しております。
 たとえ、信仰の対象で無かったとしても、
 貴女様へのその想いが、
 変わることなどございません。
 故に、礼を欠くのを承知で、
 このような言葉を口の端に上らせることを、
 お許しいただきたいのです。」

 アセリエスはそう言うと、
 一呼吸置くように、その胸を撫で下ろす。
 彼女が、そんな仕草をみせるのは、
 とても珍しい。

 エリスはただ、アセリエスの言葉を待った。

「この身の想いを、
 『アセリエス』として、
 この口から、直接、
 エリス様にお伝えしたく、
 最低限の礼節ではありますが、
 せめて、衣だけでもと思い、
 この姿にて、参じた次第にございます。」

 エリスを前に、そう述べた彼女は、
 凛として、他に並ぶものの無き、
 その女教皇の、品位と風格を漂わせていた。

 そして、
 次に彼女の口から発せられた言葉を、
 エリスは受け止めた。


 初めて、彼女から、
  アセリエスから、
    頼られたような気がしたからだ。


 後に、エリスは、
 ティヴァーテ剣王国へと派遣されるという、
 その一団に加わる事になる。

 
 そして、
   時はその大陸暦4096年の初夏へと移る。
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