髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

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天使の吐息 #33

2009-11-16 21:46:29 | 天使の吐息(詩)
病院にお母さん達に連れられた男の子がいました。

今、流行しているインフルエンザの予防接種に来たのです。

友達も一緒です。

「わーん!」「あああああぁぁぁ!」「いたいよぉぉぉ!」

同じように予防接種に来て沢山の子供達が泣いているのを見てすっかりビビッてしまいました。

「ううぅ・・・」

今まで注射が痛くて嫌なのでいつも逃げ回ってお母さんを困らせていました。

『痛いのやだ・・・』

受付を済ませて、並びました。

「やだな~」

みんな沈んだ顔をして言葉も少ないです。

『どうやって逃げようか・・・』

そんな事を考えていました。

ヒュウ

「マ、ママ!トイレに行きたくなってきちゃった」

本当に急にトイレに行きたくなってきました。

「ええ~!?そんな事を言ってどこか隠れる気でしょ?」

「本当に、行きたいの!」

「分かった。それじゃ、ママも一緒に行くね」

これでどうやら逃げる事は出来なさそうです。

「ちょっと待てよ!お前だけずるいぞ!」

「お前も行くなら僕も~」

友達もトイレに行きたいと言い出しました。

「もう少しで順番がまわって来るでしょ?我慢なさい」

ですが、友達のお母さんに止められてしまい、恨めしくこっちを見ています。

隠れる事がないようにとお母さんと一緒に女子トイレに入ったので逃げる事は出来ませんでした。

『今度はどうやって注射をしないように・・・』

「うわぁぁぁぁ!!」

友達が注射を終えて大泣きしていました。

「・・・」

見ていて何だか嫌だなと思いました。

今まで、他人の子供が泣いているのを見て来て何とも思わなかったのに友達が泣いている所を見て始めて違う気持ちになりました。

「よし」

大人しく並んで看護婦さんが腕にアルコールを塗り、スーッとしました。

それからお医者さんの持つ注射器の鋭い針が男の子の腕に突き刺さります。

「うううぅ・・・」

当然、痛いです。いつもと気分を変えてもやっぱり痛いです。思いっきり歯を食いしばりました。

「はい。終わったよ。良くがんばったね」

注射が終わりましたが泣く事はありませんでした。

「あれ?前まで毎回泣いていたのにどうしたの?」

お母さんも意外そうでした。

「ふふ~ん」

ちょっと胸を張りながら注射した後をもんでいました。でも、ズキズキと痛みます。

それでも、泣かなかった事でちょっと自分でも男として逞しくなった
気がしました。


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