髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

「口の周りに毛が生える」という呪いを受けたオッサンがファミコンレビューやら小説やら好きな事をほざくしょ―――もないブログ

天使の吐息 #12

2009-06-22 20:40:07 | 天使の吐息(詩)
40代中年男性がいました。

風呂上りで脱衣所で体を拭いています。

スタスタ・・・チラッ

「あ!だから脱衣所のドアは閉めておいてって言っているじゃない!」

娘から明らかな嫌な顔をされてドアをバタンと激しく閉められる。

『昔はあんな娘じゃなかったんだけどな~。嫌がるどころか一緒にお風呂に入りたがった事があるぐらいだもんな。今じゃ、顔を見せるだけで席を立とうとする。同じ部屋の空気を吸いたくないといった感じだ。昨日の父の日だって毎年恒例のネクタイをもらっただけだ。そんな物より家族一緒で楽しい食事に行く方がよっぽど嬉しいんだけどな・・・」

娘の昔の面影を自分の記憶から必死に手繰り寄せていた。

「いつまでそこにいるの~!」

どうやら脱衣所の隣のトイレを使いたいようだ。

「あ、ごめんごめん」

そそくさとパジャマに着替えて脱衣所を出る。今まではパンツ一枚でうちの中を歩いても何も言われなかったのだが・・・

『はぁ~』

ヒュウ・・・

「アアアァァァ!!」

娘の声が聞こえるや脱衣所から飛び出してきた。

「お父さん!虫が!気持ち悪い!どうにかして!」

娘は虫が大の苦手だ。

「分かった。分かった」

脱衣所に行くと子蜘蛛がいた。

「ゴキブリならともかく、こんな小さい蜘蛛なのにな・・・蜘蛛はハエや蚊とかの他の小さい虫を捕まえてくれるのにな~」

殺すのは可哀想だと思って手に乗せて窓から外に出した。

「驚かせてすまなかったな。けど、たまに頼むな」

ガチャ

「蜘蛛は?」

「外に追い出したから大丈夫だよ」

「良かった~」

こういう時だけ男を見せる事が出来て満足な父親でした。

「いい加減、こんな虫が出るうちから引っ越したいけどね」

「そうだね」

最後の一言は耳が痛かったが・・・


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