髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

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天使の吐息 #25

2009-09-21 21:28:37 | 天使の吐息(詩)
20代の男性がいました。

遊びに行く途中で自分の先祖が眠るお墓の近くを通りかかりました。

普段なら気にもかけず通り過ぎていた事でしょう。

ヒュウ

「30分ぐらい早く着きそうだな。時間があまるのも何だしたまには寄ってみるか?」

ここ何年も墓参りなど訪れた事もありませんでした。

『石に手を合わせて何になる』

と、思っていたので親から連れて貰わなくなってからは行く事はありませんでした。

殊に彼が生まれる前に祖父母は亡くなっていたので先祖についての意識はかなり低かったのが理由です。

「ああ・・・やっぱ線香くせぇな・・・」

お墓の前から立ち上る煙。これもまた、墓参りが嫌だった理由の一つでしょう。

「花もお供え物持って無いが別にいいだろ?大切なのは気持ちだ。気持ち」

そんな事言いつつ、あまりその気はないのですが・・・

バイクを駐車場に止めて、置いてあった手桶に水を汲み、柄杓を取ってお墓に行きます。

「えっと、確かこの角を曲がって・・・あった。あった」

10年ぐらい前の記憶を頼りに歩くとお墓に着きました。

「花が飾ってある。親父かお袋でも来たのかな」

掃除も行き届いていて、誰かが手入れしている事が伺えました。

「無駄な労力を・・・」

水をかけて立ち去ろうと思うと、そこにあった墓誌が気になりした。

「俺の先祖の名前と亡くなった日が彫られているのか・・・何か良くわからん名前が並んでいるな」

名前は戒名で刻まれているので彼にはわかりませんでした。

「何人も彫られているな」

10個弱は並んでいました。

「この連なっている一人の誰かが欠けたら俺は存在しないんだよな」

柄杓で墓石に水をかけました。

「!!先祖がいなければこうして水が手にかかって冷たいとも思わない・・・か・・・」

妙に感慨深くなりました。

「ああ・・・時間がないな。じゃぁ帰るか」

そう言って、歩き出しました。

「気が向いたらまた来るよ。じゃぁな。ご先祖さん」

そう言って、バイクに跨り走り去っていくのでした。


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