東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動(学会活動・在宅医療のモデル事業のことなど)などについて書いていきます!

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

超高齢者の急性心筋梗塞におけるPCI(percutaneous coronary intervention) の意義

2016-12-13 20:09:57 | 勉強会

 少し前の話しではありますが、訪問診療を行っていた90歳台の女性が嘔気・嘔吐あり、来院しました。来院時には症状もほぼ消失してはおりましたが、検査のうえ心筋梗塞(STEMI)との診断に至りました。認知症はありますが、意思の疎通は十分可能であり、ADLもそこまで悪い方ではありませんでした。その時に、PCIをどこまでおすすめするかで迷いました。当院ではPCIを行えないのでその場合は転院となります。結果的には、その方は家族の希望により当院で保存的治療を行い、無事に退院されました。しかし、超高齢者にどれくらい治療的な意義があるのか、手技に伴うリスクはどの程度なのか、あまり知識的にわからないなと思い、今回、「超高齢者(85歳以上を目安)の急性心筋梗塞におけるPCIの意義」について調べてみました。

 

★Tegn Nらの報告(Lancet 2016)

80歳以上のNSTEMIもしく不安定狭心症の患者457例を対象に、侵襲的治療群(PCIやCABG)と保存的治療群(薬物療法のみ)を比較したopen-label RCT。

→平均1.53年のフォローで、侵襲的治療群が有意に心筋梗塞に対する複合エンドポイントが良好であったが脳卒中や死亡率では有意差がなかった。(出血イベントは大きな違いはなし)

★Yudi MBらの報告(Am J Cardiol 2016)

85歳以上のSTEMI患者101例を対象とした観察研究。45例がPCIを施行されており、保存的治療群と比較して、入院中の死亡・30日以内の死亡・12か月以内の死亡・長期予後において有意に予後が良好であり、多変量解析でPCI施行が長期予後良好の有意な因子であった。

★Doizonらの報告(Ann Cardiol Angeriol 2015)

85歳以上のSTEMI患者118例を対象とした後ろ向きの観察研究。71例がPCIもしくは血栓溶解療法(侵襲的治療群)を行われていた。保存的治療群の方が全死亡率は高かったが、有意差はなかった(P=0.077)。

★Fach Aらの報告(Am J Cardiol 2015)

Bremen STEMI Registryの集団を75歳未満(4108例)・75~85歳(1032例)・86歳以上(216例)の3群に分類。

→①年齢の増加に伴ってPCI不成功は増加、死亡率(院内・1年後)も増加。

 ②出血合併症は年齢の増加に伴って増加。

 ③多変量解析で、PCIの成功が86歳以上においても有意に院内死亡率を低下させていた。

結論:86歳以上では、PCI成功率が低く、出血合併症も多いが、それでもPCIの利益はある。

★Zaman MJらの報告(Eur Heart J 2014)

英国とウェールズのnational registryの155818例のデータを使用。

→85歳以上で再灌流療法を受けたのは55%であり、65歳未満の84%と比較して有意に低かった。再灌流療法を受けなかった患者はすべての年代において生存率が低くなっていたが(性別・心血管リスク因子・合併症・重症度など調整、平均フォロー2.29年)、年代があがるにしたがって、その恩恵は少なくなっていた(85歳以上だと侵襲的治療群と比較して保存的治療群で全死亡HRs:1.36、64歳以下だと1.98)。

★Renilla Aらの報告(Geriatr Gerontol 2013)

85歳以上のSTEMI患者98例を対象とした後ろ向きの観察研究。33例にPCIが、30例に血栓溶解療法が、35例に保存的治療が施行されていた。保存的治療群は再灌流療法群と比較して死亡率が有意に高かった。また、多変量解析で、入院時の心不全の有無が、死亡率と有意な関連があった。

 

 結構、ここ数年で80~85歳以上の患者を対象とした研究が多く報告されているのを知りました。背景にはその年代の心筋梗塞患者が増加していることがあるようですし、今まで同年代でのPCIの効果が明らかになっていなかったことがあるようです。

上記の報告をみていると、超高齢者においても、PCIを積極的に考えていく必要があるのかなとは思います。しかし、観察研究が多く、調整は行っているにしても、PCIが選択された患者と選択されなかった患者には研究上では明らかになっていない背景の違いがあるのかなとは感じますし、数少ないRCTでは現実での患者とのかい離が起こりやすい対象なのかなとは思います。そのあたりは慎重に考える必要があるのかなとは思いますが、同時に年齢だけでPCIの適応ではないのではと考える必要はないのだなと再確認しました。また、現実の超高齢者(特に在宅や施設患者)にあてはめて考える場合に、アウトカムを何におくか(死亡以外のもの)によっても考え方はかわるのかなと思います。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 平成28年度 蓮田市在宅医療... | トップ | がん性疼痛に対する鎮痛補助... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

勉強会」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。