🌸劇団四季🌸
(劇団で年間300万人が来場しています。驚異的な数字ですね)
🔹ミュージカルや演劇などの観客動員数は年間1000万人と言われ、まだまだ少ない。
他の業界と比べると、プロ野球は年間2000万人で、1球団で200万人集めます。
東京ディズニーリゾートだと年間3000万人。
自分たちが用意した施設で観客を集める分野としてみると弱小でしょう。
(演劇のような不要不急のビジネスで顧客の購買意欲を高めるポイントとは何でしょう)
🔹やはり、お支払い頂いたチケット代を上回る感動を与えたかどうかに尽きます。
体験価値が支払いに見合っていないと次からは来てくださらない。
(動員率は90%を超えているそうですから、体験価値は高いと)
🔹そういう評価は頂戴できているのかもしれません。
2017年は94%で、首都圏、関西圏、中部圏の動員率は99%と、ほぼ満席です。
札幌と福岡が苦戦しているので、少し率を打ちますが。
(良質のエンタメはオチがわかっていても何度も足を運びたくなるものだと言われます)
🔹一回一回の公演をしっかりやる以上のことはないですないのですが、
できるだけ新作の受け入れスピードを早くしたい。
最低でも年一本は新作を上演できたらと思っています。
急いでやったのは『アラジン』。
公演を決めてから10ヵ月くらいで完成させました。
アメリカのブロードウェイでヒットしたミュージカルを日本語に翻訳していますが、
何でも良いわけではありません。
四季では『人生は生きるに値する』という人間賛歌のようなカルチャーを備えた作品に限定しています。
それが四季のブランドを守ることなので。
(そこが経営理念なんですね)
🔹浅利さんが1953年の創設時から大切にしていることです。
劇団は一緒のメディアで、左翼的な政治主張が強い方が多かった。
それを続けていると飽きられると浅利さんは思ったのでしょう。
演劇が本来持っている価値、観劇後のカタルシスや感動を大事にしなければいけないと。
(普遍的なテーマが大事だと。
女性の比率が8割も不変ですね)
🔹女性の方が感度が高いのかな。
ここを何とかしないといけないと思いますが、なかなか。
(浅利さんの退任から3年半。興行収入は安定していますが、何が1番苦しかったですか)
🔹3年半は、まさに浅利さんがいた時と同じように円満に業務を進めるための時間だったような気がします。
カリスマに仕えていると大変なこともありますが、
やはりいてくらると楽です。
ブレずに全体を一貫して見てくださり、指示に従えば間違いない。
しかも指示が具体的なんですよね。
俳優の演技はこうすべし、経営の数字はここを見ろ、技術者がものを作るときはお金をこう使えなど。
こうした実践的テクニックはマニュアルとして残っています。
自分で決めるのは大変でしたが、思想とイズムを継承するのは難しいことではなかった。
(セブン-イレブン・ジャパンに似ています。
創業した鈴木敏文氏が引退した後も好調を続けている点で)
🔹そうですね。四季にも新しい人が入って、演者含めた1,300人のスタッフのうち、浅利さんを知らない者が500人もいます。
イズムの浸透が課題です。
(カリスマはコンセプトや方向感を出すのがうまい。
「近くて便利」、「服を変え…世界を変えていく」、「お、ねだん以上。」とか)
🔹浅利さんも物事の本質をとらえるのが天才的でした。
よくお話ししていたのが
「日本生命は安心を売っている。
トヨタ自動車などメーカーは便利を売っている。
我々は何を売っているのか。
それは "感動" である。
そこに商いの中心があるんだ」
と。
(ビジネスと文化が融合した四季は小売業やサービス業にとって参考になります)
🔹価値はそれぞれなので一般化はしにくいと思います。
演劇の場合、アートと考えることを心の奥底で持ちつつ、
社会に寄り沿わないといけません。
フランスの芸術家にルイ・ジュべという方がいます。
ジュべはこういます。
「恥ずべき崇高さ、偉大なる屈辱」
と。
お客がいない劇場はあり得ない。
文学や音楽、絵画はモノとして残せますが、劇場はすべてコト。
観客と呼吸しながら作る生ものです。
観客がいないと成立しない不思議な芸術なので、
必ずビジネスの側面がついてくる。
だからビジネスの面を偉大なる屈辱と表現しているのかなと。
(四季の今後の成長戦略は?)
🔹今後重要になるのはオリジナル作品の創作です。
これがないと今後生き残れないと思うんですよ。
我々のビジネスモデルは完全な内需型。
外国の作品を日本語に翻訳し、日本人を相手に商売している。
人口減少が進み、マーケットは間違いなくじり貧になります。
外に出て行かなくてはいけないが、日本での上演権を持っているだけなので難しい。
自前のコンテンツが必要になります。
ブロードウェイには長い歴史があり、その果実が今の作品です。
人材も育ち、顧客は世界中にいる。
こうした方式をやらないといけない。
生産年齢人口の減少と観劇人口は同じではありませんが、
40年くらいまでに自前コンテンツを量産できる体制を整えたい。
(インバウンドの増加は影響していますか)
🔹近く、インバウンド向けの施策を始めます。
あくまで実験段階で、方向性までは見えていません。
以上
(「日経MJ」2018.1.19号、劇団四季社長 吉田智誉樹さんインタビューより)
(劇団で年間300万人が来場しています。驚異的な数字ですね)
🔹ミュージカルや演劇などの観客動員数は年間1000万人と言われ、まだまだ少ない。
他の業界と比べると、プロ野球は年間2000万人で、1球団で200万人集めます。
東京ディズニーリゾートだと年間3000万人。
自分たちが用意した施設で観客を集める分野としてみると弱小でしょう。
(演劇のような不要不急のビジネスで顧客の購買意欲を高めるポイントとは何でしょう)
🔹やはり、お支払い頂いたチケット代を上回る感動を与えたかどうかに尽きます。
体験価値が支払いに見合っていないと次からは来てくださらない。
(動員率は90%を超えているそうですから、体験価値は高いと)
🔹そういう評価は頂戴できているのかもしれません。
2017年は94%で、首都圏、関西圏、中部圏の動員率は99%と、ほぼ満席です。
札幌と福岡が苦戦しているので、少し率を打ちますが。
(良質のエンタメはオチがわかっていても何度も足を運びたくなるものだと言われます)
🔹一回一回の公演をしっかりやる以上のことはないですないのですが、
できるだけ新作の受け入れスピードを早くしたい。
最低でも年一本は新作を上演できたらと思っています。
急いでやったのは『アラジン』。
公演を決めてから10ヵ月くらいで完成させました。
アメリカのブロードウェイでヒットしたミュージカルを日本語に翻訳していますが、
何でも良いわけではありません。
四季では『人生は生きるに値する』という人間賛歌のようなカルチャーを備えた作品に限定しています。
それが四季のブランドを守ることなので。
(そこが経営理念なんですね)
🔹浅利さんが1953年の創設時から大切にしていることです。
劇団は一緒のメディアで、左翼的な政治主張が強い方が多かった。
それを続けていると飽きられると浅利さんは思ったのでしょう。
演劇が本来持っている価値、観劇後のカタルシスや感動を大事にしなければいけないと。
(普遍的なテーマが大事だと。
女性の比率が8割も不変ですね)
🔹女性の方が感度が高いのかな。
ここを何とかしないといけないと思いますが、なかなか。
(浅利さんの退任から3年半。興行収入は安定していますが、何が1番苦しかったですか)
🔹3年半は、まさに浅利さんがいた時と同じように円満に業務を進めるための時間だったような気がします。
カリスマに仕えていると大変なこともありますが、
やはりいてくらると楽です。
ブレずに全体を一貫して見てくださり、指示に従えば間違いない。
しかも指示が具体的なんですよね。
俳優の演技はこうすべし、経営の数字はここを見ろ、技術者がものを作るときはお金をこう使えなど。
こうした実践的テクニックはマニュアルとして残っています。
自分で決めるのは大変でしたが、思想とイズムを継承するのは難しいことではなかった。
(セブン-イレブン・ジャパンに似ています。
創業した鈴木敏文氏が引退した後も好調を続けている点で)
🔹そうですね。四季にも新しい人が入って、演者含めた1,300人のスタッフのうち、浅利さんを知らない者が500人もいます。
イズムの浸透が課題です。
(カリスマはコンセプトや方向感を出すのがうまい。
「近くて便利」、「服を変え…世界を変えていく」、「お、ねだん以上。」とか)
🔹浅利さんも物事の本質をとらえるのが天才的でした。
よくお話ししていたのが
「日本生命は安心を売っている。
トヨタ自動車などメーカーは便利を売っている。
我々は何を売っているのか。
それは "感動" である。
そこに商いの中心があるんだ」
と。
(ビジネスと文化が融合した四季は小売業やサービス業にとって参考になります)
🔹価値はそれぞれなので一般化はしにくいと思います。
演劇の場合、アートと考えることを心の奥底で持ちつつ、
社会に寄り沿わないといけません。
フランスの芸術家にルイ・ジュべという方がいます。
ジュべはこういます。
「恥ずべき崇高さ、偉大なる屈辱」
と。
お客がいない劇場はあり得ない。
文学や音楽、絵画はモノとして残せますが、劇場はすべてコト。
観客と呼吸しながら作る生ものです。
観客がいないと成立しない不思議な芸術なので、
必ずビジネスの側面がついてくる。
だからビジネスの面を偉大なる屈辱と表現しているのかなと。
(四季の今後の成長戦略は?)
🔹今後重要になるのはオリジナル作品の創作です。
これがないと今後生き残れないと思うんですよ。
我々のビジネスモデルは完全な内需型。
外国の作品を日本語に翻訳し、日本人を相手に商売している。
人口減少が進み、マーケットは間違いなくじり貧になります。
外に出て行かなくてはいけないが、日本での上演権を持っているだけなので難しい。
自前のコンテンツが必要になります。
ブロードウェイには長い歴史があり、その果実が今の作品です。
人材も育ち、顧客は世界中にいる。
こうした方式をやらないといけない。
生産年齢人口の減少と観劇人口は同じではありませんが、
40年くらいまでに自前コンテンツを量産できる体制を整えたい。
(インバウンドの増加は影響していますか)
🔹近く、インバウンド向けの施策を始めます。
あくまで実験段階で、方向性までは見えていません。
以上
(「日経MJ」2018.1.19号、劇団四季社長 吉田智誉樹さんインタビューより)