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寧静致遠②

2017-05-17 11:21:22 | お話
🍀🍀寧静致遠🍀🍀②


大学を出たら教職に就こうと考えていましたが、

あいにく、その年は地元山梨での採用がなく、

倍率30倍以上の東京都の高校教員採用試験に合格し、

東京都立黒田工業高校夜間部の教員として働き始めました。

学校では化学を教え、顧問を務めた卓球部都で準優勝に導くなど、充実した教員生活を送っていました。

小学校の教員として勤めていた母の日記に、

「教師の資格は、自分自身が進歩していることだ」

と書かれていました。

これは非常に厳しい箴言で、絶えず進歩しながら教えていくことの大切さを母から教わった気がします。


夜間で学ぶ生徒は仕事との両立が大変で、35人入っても卒業する時は20人、15人になってしまうのが常でした。

私は、とにかくこのクラスみんなで一緒に卒業しようというのを合言葉にして皆を励まし、

黒田工業高校で1番多くの生徒を卒業させたのではないかと思っています。

そこでまた学ぶことがありました。

学期末試験の時に、時間ギリギリに飛び込んできた生徒がいました。

答案用紙に向かうその生徒の手を見ると、油で汚れているのです。

それを見て私は大変ショックを受けました。

この生徒は仕事をしながらこんなに一所懸命勉強しているのに、自分は一体何をやってるんだろう。

そこで脳裏に甦ったのが、先ほどご紹介した、

五年が勝負だという田中元之進先生のお話です。

よし、では5年間もう一度心を入れ替えて学び直そうと決意して、

まず上京して2年目に東京教育大学(現・筑波大学)の聴講生として1年間勉強し、

さらに東京理科大学の大学院に進みました。

昼間は理科大で勉強し、夕方になると黒田工業高校で教え、

授業が終わると理科大の研究室や東京工業試験場の研究室で実験に打ち込むといった生活をしておりました。

あの頃は、給料をもらうと、まず通学・通勤用の定期券を買い込み、

それから食料確保のため即席ラーメンを1箱買い込んでおく。

あと残ったお金は、ほとんど学納金や本を買うのに費やして勉強していました。

そうして理科大の修士を大学卒業後5年で終了した私は、

教師を辞めて研究者になることを決意したのです。


冒頭にお話ししましたように、周囲からは、

「お前の経歴で研究者になっても、あまり将来性がない」

と反対されましたが、運よく山梨大学の丸田先生から声がかかり、

2年間ぶどう酒やブランデーの研究をしました。

そのうち、自分が学んできた化学と微生物の両方が生かせる研究をしてみたいと考えるようになりました。

そんな折に東京理科大学で助教授の採用があると聞き、

山梨大学に辞表を出して転籍の準備を進めていたところ、

状況が変わり、理科大のポジションが空かなくなってしまったのです。

困っているところへ、私の友人の佐藤公隆君から北里研究所が学卒を1人募集してるから受けたらどうかと勧められました。

大学を出てもう7年も経っており、学卒と競って受かる自信はありませんでしたが、

幸い、2人採用してくれて、

どうにか北里研究所に転がり込むことができました。

しかし、これまでのギャップを埋めるのは並大抵のことではないと自覚していた私は、

毎朝誰よりも早く研究所へ行き、他の方が出てくるまでに文献を読んだり、

一通り実験の準備を終えているようにしました。

するとあっという間に認められるようになり、

研究も順調に運ぶことができたのです。

私の研究は、自然界のあらゆるところから微生物を分離して、

それを培養した培養液の中に求める化合物が入っているかどうか調べていくものです。

一方、微生物のほうはその菌株を保存して、分類学的にどのような位置にあるのかを研究する。

そして、これは役に立ちそうだとなれば、本格的な研究開発に入るわけです。

当初、私の研究室にはスタッフが5、6人しかいませんでしたが、

今では70〜80人の大所帯になりました。

2015年までに我われが発見した化合物は488になりますが、

こんなにたくさんの化合物を発見したグループは、世界中で我われのところしかありません。

このうち26種類の化合物が実際に使われていますが、

ここからは、そのうちのエバーメクチンとイベルメクチンにまつわるお話をしたいと思います。


(つづく)

(「致知」6月号 ノーベル賞生理学・医学賞受賞 大村 智さんより)
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