自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その361)

2017-01-17 | ジャコウアゲハ

大雪が降った翌日のこと。ジャコウアゲハの蛹が雪を被っているか,見に行きました。途中見た河川敷の竹藪では,雪に押し倒された竹がまだ雪を被っていました。ふだんは思い切り生い茂っているだけに,いくらしなやかなからだとはいえ,枝に雪がバサーッと積もれば大きく曲がるほかありません。でも,縦に裂けない限り近いうちに元に戻るでしょう。


ジャコウアゲハの棲息地にて。波トタンが傾いている分,冠雪が避けられたようです。「ホッ。よかったー!」。蛹が数個寒さに耐えています。


ここにも蛹がありました。


ここにも。鉄板の傾きや波をうまく利用して身を守っています。


有刺鉄線に付いた蛹には雪はありませんでしたが,一度は雪を被ったことでしょう。腹部に黒っぽい色が見えます。もしかすると,体内で異変が起こっているのかもしれません。


同じ個体を反対方向から撮りました。向こうに見える木々はクリです。


棲息地での観察はここまで。我が家の庭にある蛹の一つは完全に雪に埋もれています。雪の下は表面程低温でないにしても,氷点下であることはまちがいありません。枝に付いている個体は,地上30cmのところにあって,降雪時は雪帽子を被っていました。

それらの個体の身を思うと凍えそうな寒さに感じられますが,氷点下5℃や10℃程度ではけっして凍りません。越冬昆虫の血液中にはグリセリンが含まれていて,水分が凍結して細胞を破壊するのを防いでいるのです。低温科学の知見が教えてくれています。長い生物史のなかで,こうした生理機構を整えた種が環境に適応して生き残ってきたというのが筋です。したがって,「かわいそう」と思いがちな人間の感傷は完全に的外れなのです。

羽化まであと3カ月。