飛騨さるぼぼ湧水

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冒険小説「幸福の樹」(その 2 ) 五万年前の対面 御嶽富士

2017-03-15 22:06:38 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、飛騨の小路 小湧水でーす。おまたせいたしました。
先生の、第二話ができたようです。
今はタイムマシンみたいな話ですけれど、すぐ冒険小説となりますので、しばらくご辛抱ねがいます。
そうそうタイムマシンと言えば、将来も絶対できないと言う人がいます。
その理由は、もし未来にできるならば、そのタイムマシンで、今までに現れているはずだ、と言うのです。
なーるほど!
さてさて余談はこのくらいにして、早速、小説にまいりたいと想います。
はい、では、始まり始まーり!

その 2 五万年前の対面 御嶽富士

「うーん!」
太郎とハナは再び目が覚めた。
「あれーっ、また草むらの上だ」
横になっていた場所は、前と同じ草の丘だった。
「えっ、あれは!」
今度は驚く事に、目の前には、見た事もないまっ白な巨大な富士山のような雄大な山が立ちはだかっていた。
「えええーっ!」
おそらく初めて見る人達は、皆圧倒されるだろう。
現在の三千メートルの御嶽の平らな頂上に、さらに千メートルほどの円錐形の白銀の山を重ねたような山だ。
山頂は明らかに四千メートルを超えていて、当時の日本では一番高い山だった。
「あっ、そうだ、これが5万年前の御嶽だ」
太郎もハナも、その姿に息を呑んだ。
見れば見るほど、身も魂も浄められそうだった。
白銀の峰は、この世のものとは思われないほどに神々しく輝いていた。
「うわーっ、すごいわ。もう言葉にならないわ」
ハナが初めて大声で叫んだ。
しかし、それは、本当に言葉にも声にもならなかった。
その音声ではない何かが、はっきりと太郎には伝わってきた。
何かが変だった。
音にはなっていないのに、聞こえたように伝わって来るようだった。
「あっ、そうだ!ハナ、分かったぞ、これは、テレパシーだ」
太郎の言葉も、いつもの耳で聞く音ではなかった。
「えっ、太郎兄ちゃん、どう言う事?」
ハナの声も同様だった。
「うーん・やっぱり、そう言う事か・・」
太郎は何度も考えうなづいていた。
「うーん、つまり、・・・と言う事は、ハナ!やっぱり俺達はこの世界に生きているように思えるけれど、多分この世界の人達からは俺達は見えないと思う。だから俺達の声も出ないんだ」
「えーっ、そんな!それなら、この世界に住んでいる昔の私達とは・・・?」
「ああ、そうだ。多分、同化とか一体化とかはできないと思う。昔の写真やビデオを見るように、この時代の自分達を見守る事しかできないかも知れない」
「えっ、それじゃ、話しかけたり触れたりもできないの?」
ハナは、落胆と言うより、鳴き出しそうだった。
「ああ、きっと彼等は全然我々を感じる事はできないと思う」
太郎は他人事のようにさっぱりと言ったが、ハナの悲しそうな様子に黙ってしまった。
「うーん、・・・あのさ、ハナ!、やっぱり、その方が返って良かったのかも知れないよ。例の因果律と言うややこしい問題があるからな」
「ああ、そうね、分かったわ。あの、過去をいじると未来も変わってしまうと言う、あの問題でしょ?」
「うん、そうだ。そう言う事だ。・・・しかし、このテレパシーって言うのは不便なものだな、うっかり独り言も言えないや」
「そうね、元々太郎兄ちゃんの考えている事は分かるけど、私の考えている事がすべて分かってしまうのは嫌だわ。少し話すのを止めましょうよ」
太郎とはなは、しばらく沈黙して、目の前の雄大な御嶽富士を見つめていた。
そして、五万年前の、この時代の世界の事を考えて、気持ちの整理や心の準備をした。
大自然の中に身も心も浸りながら、何時間か経った。
二人は、ようやくこの世界の季節の秋の風をそれとなく感じられるようになった。
気づけば知らない内に、もう夕日が西の空の雲をまっ赤に染め始めていた。
その時だった。
突然現れた小さな女の子が手に野で摘んだような花束を持って、草の丘を歩いて来た。
その瞬間、ハナの全身がその女の子に釘付けになった。
その女の子は、真っ直ぐに縦長の石に向かって歩いて来ると、その手前で地面に花束を立てた。
その姿を食い入るように見ていたハナの目からは、大粒の涙がほとばしるように溢れ落ちていた。
太郎が不思議そうに、ハナと女の子を交互に見ていると、
「あの子は私よ。まちがいなく私だわ。なぜかどうしようもなく涙が出てくるの」
と、胸につまったようなかすかな声がきこえてきた。
太郎はテレパシーのお蔭でハナの声が聞こえたのだった。
その女の子は、どうやら、石の墓に花を供えに来たようだった。
もちろん、彼女には太郎やハナの姿は見えないらしく、全く気付かない様子だった。
小さな手を合わせてお参りすると、その小さなこぶしで涙をぬぐって、元来た方へ駆け出して行った。
まだ幼い女の子の、その一連のしぐさは、いじらしくけなげだった。
見ていた太郎にもいとおしさがこみ上げた。
「ハナ、彼女を追い駆けよう。きっとそこには俺もいるはずだ」
太郎に背中を押され、ハナも涙をハンカチで拭きながら、女の子の去った丘を追い駆けていった。
女の子の足は思っていたより速かった。
丘は所々すすきの雄花が、夕日の光を浴びて綿のように秋風にゆれていた。
「あっあそこだ」
太郎の指さす方をハナが見ると、別の丘の上で、大きな夕日の中に二人の子供の小さな黒い影が並んでいるのが見えた。
太郎とはなは、その丘へゆっくりと音を立てないように歩いて行った。
足音も話す声も、彼等には聞こえないと分かっていても、体や行動はすぐには変えらねなかった。
やがて、その丘にたどり着き、太郎とはなはそーっと、二人の子供の横に並んで座った。
夕日が、はるか遠くまでの雲と紅葉の山並みをまっ赤に染めていた。
ひときわそびえる白山の頂も、黄金色に輝いていて、その荘厳さに太郎とはなは息も呑むほどだった。
五万年前の空気は、想像を超えて飛騨の風景を美しく見せていた。
太郎とはなは、座ったまま二人の子供に合わせて、静かに彼等の気持ちや言葉を待つように、いつまでも夕日を眺めていた。
やがて太郎とはなには、自然に二人の子供の状況がはっきりと分かってきた。
この二人の子供の父母は、ハナがまだ赤ちゃんで太郎もわずか五歳の頃死んでしまっていた。
二人は、お爺さんとお婆さんに育てられたのだった。
太郎とはなは、この二人の子供のそばにいるだけで、二人の気持ちや記憶がどんどん伝わってくるのを感じた。
もちろん、小さな太郎の事は太郎に、小さなハナの事はハナにである。
二人の心は、悲しい気持ちでいっぱいだった。
それと言うのも、幼い二人は父母にも甘えられず互いに助け合って懸命に生きてきたのに、どう言う訳か、村の人達や村の子供達は二人に冷たかった。
「いじめ」だった。
この日も、かわいそうに二人はいじめられて、逃げるようにいつものこの丘に来たのだった。
「太郎兄ちゃん、あのお日さまの沈む国に、お父さんやお母さんが住んでいるの?」
小さなハナがかわいい声で聞いた。
この小さなハナは、丘にある父母の墓に花を欠かした事はなかった。
「ううーん・・・」
小さな太郎は、言葉につまり、必死にこぼれ落ちそうな涙をこらえていた。
大勢の村の子供達にいじめられて、そのくやしさがこみ上げていたのである。
太郎とハナは、初めて聞く小さな太郎とハナの声に心の底まで揺さぶられた。
子供達の気持ちが、声を通じて痛いほど伝わってきた。
何とかして上げたいと言う思いが、どんどん沸き上がってきた。
しかし、どうしょうもない!何もできない、ただ見守るだけしかない!、と思うとやり切れなかった。
「ハナ!俺はもうこんな悲しい思いはたくさんだ。ハナ、さっさとここを去ろう」
太郎は声にならない声で言った
ハナは返事をしなかった。
ふと見るとハナはまだ目にいっぱい涙をためて、小さなハナをジーッと見つめていた。
なぜか、そのハナの顔が、やや若くなっているように太郎には思えた。
しばらくして、太郎はハナに、もう一度ここを去る事を言おうとした。
すると、ハナは顔を上げて、
「大丈夫!この子達はこんな運命に負けはしないわ。小さいけれどきっと自分達の運命を切り開いていくわよ」
と動こうとしなかった。
その時、突然、背後に気配がした。
「おやおや、お前達は、またここにいたのかね?」
爺さんらしいよく透る低い声がした。
びっくりした四人が、思わず振り返ると、そこには白髪の老人が立っていた。
その老人は、仙人のようにまっ白のヒゲを生やしていて、古木の杖をついていた。
おそらく村の長老だろうか、その目はやさしく小さなハナと太郎に向けられていた。
ところが、驚いた事に、その老人の眼差しが、突然、見えるはずがないハナと太郎にも向けられた。
「えっ?」

(つづく)

ハイハイハイハーイ、かわいそうな小さいハナと太郎の二人、イジメなんかに負けずガンバレー!
はい、では、まだ夜は寒いので、どうぞ皆さん方、風邪などお召しになりませんように、バイバイバーイ!
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