hidamaro's

しがない物書きの生活と意見

ピアノ事件その5

2017-06-19 12:44:57 | 思い出

さすがにその後しばらく音楽室のピアノ練習は中断せざるを得なくなった。

ある日のこと、私が体調不良を理由に体育の授業をサボった(運動音痴の私はよくウソをついてサボっていたのだ)時、

体育教師に、「その時間、自習をし、(その証として)後でノートを提出しろ」と言われた。

私はとりあえず、図書室へ行ってオペラの歴史を調べ、それをノートに要約して、休み時間に職員室に持っていった。

体育教師はノートをチェックすると、

「A先生、これ、見てくださいよ」

と、近くを通りかかった音楽の女性教師(頭のイカれたTではない)に語りかけた。

体育教師が差し出したノートのページをじっと見ていたAは、

「まあ!……」

と小声で言った。 

私の顔を見た彼女の目がみるみる潤み始めた。

(え?)

私は戸惑ったが、すぐに分かった。

飛び降り事件の経緯も知っている音楽教師の彼女は

私が体育の授業をさぼってまでこっそり音楽の勉強をしていたために、体育教師に呼び出しを食らって叱られているのだと勘違いしたようだ。 そして、(こんなに音楽を愛してくれている生徒がいる!)と感動してしまったらしい(こういう大人の勘違いというのを、その後、この件に関して私はもう一度経験したが、それについては「その6」でお話ししよう)。

数日後、私はこの女性音楽教師に呼び出され、職員室に行った。

彼女は自分の仕事机の一番上の引き出しを開け、銀色をしたピアノの蓋の鍵を示して告げた。

「ピアノの鍵はここにあります。 これからは放課後、いつでも自由に持っていって構わないわよ。 練習が終わったら、ここに戻しておいてね」

私が狂喜したのは言うまでもない。

こうして我々は晴れて天下御免で学校のグランドピアノを使うことができるようになったのだ(その6に続く)。

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