今回のThe New iPadを仕事やプライベートで使ってみると、要素としては完成系に近いのだろなぁと感じています。これは本当に凄い商品です。前モデルの約2倍売れているようですが、全く不思議ではありません。メーカー関係者、メーカープロモーション関係者は絶対に1か月は自分で使ってみるべき商品です。そして、以前私がブログで書いた「深層価値」の大切さをもう一度考えて欲しいと思っています。
なお、今のiPadが完璧かというと私はまだそうは思っていません。それは、一部の方が言われているように重いからです。
これは使えば使うほど痛感します。映画を見ていても、本を読んでも、ブラウズしていても重い。手で持つと直ぐにそれは感じますし、ソファーでお腹の上に載せてもしばらくするとお腹が痛くなってきて重いことを痛感します。シャープさんのIGZOパネルが搭載されていたら、きっと今回のiPadもiPad2と同等の重さ・厚さが実現できたのではないか?と思うとユーザーとしてはかなり残念です。
しかし、次のiPad(実際はまずは次のiPhoneからでしょうが)にはIGZOパネルが搭載されることはほぼ確実だと言われているようです。そうなればiPadは重さと言う課題も解決されますから、完成系から完璧にぐっと近づきます。こうなると今のモデルの更に2倍(前モデルの4倍)売れるような商品になるのではないでしょうか。
こうした商品にデジタルで勝つのは本当に困難でしょう。ここでのヒントはやはりアナログなのではないか?と最近また思っています。一社だけ強い世界は成長が低下すると思うので、日本の各社にも本当に頑張って欲しいです。
新iPad発表と同時に日本語版Siriの公開があった影響だと思いますが、私の周りではSiriで面白ネタを求めて色々と試している方が多数います。また、ネット上でもSiriを試す人が続出しているようです。そういう私もiPadの高精細化、Apple TVのFull HD対応化に負けない位、いや実際にはもっとSiriに注目をしています。
言語を音で認識するという仕組み上、Siriは騒音の影響を受けることを免れません。そのSiriを静寂環境(室内)で使うApple TVからではなく、騒音環境(室外)で使うことが多いiPhoneから搭載したのは、精度向上と音声メタデータ収集のためだと私は考えます。その目的だと考えると、大量に出回っていて、マイクが付いていて、位置情報や音声情報を収集できるiPhoneは最適だからです。
また、Siriは本格Appple TV用のUI開発に向けた布石だとも考えています。Siriという技術を開発した会社の名前に由来する人名を残したのも、感情移入をしやすくさせるだけでなく、家庭内・居間で使うケースを考えると納得*がいくからです。
この取り組みは今後のアップルの競争力を今よりも更に向上させる大きな布石だと私は思います。アップルがマウスやタッチパネルでそうしたように、UIを今の常識から変えてしまうかもしれないほどの変革を起こす、そんな布石だと。
現在Siriは、(データ量の問題もあるでしょうが)使うたびにオンライン上にあるアップルのサーバーにアクセスしているようです。この結果、アップルは自社の音声認識力を大幅に向上出来るだけでなく、人が何時、どこで、どんな指示を出す傾向があるのか、ある商品・サービス・指示を実際に人は何と呼んでいるのかをという「音声のメタデータ」を持つことが出来るのです。
こうしたメタデータを持つと、商品・サービスの使い勝手を圧倒的に良くすることが出来ます。データ量が爆発的に増えた現在では、メタデータを制する者が使い勝手を制するからです。
その好例が、アップルがiPod(iTunes)でCDDBというCDのメタデータサービスを使って、「CDをiTunesで聴くとアルバム名・楽曲名・歌手名が自動的に付与されて、そのデータ毎、取り込めてiPodに転送できる」ようにしたケースです。このケースを実体験された方は、これはかなり凄い事だとお分かり頂けると思います。
そして競合から見れば恐ろしいことにCDDBはアップルのデータではありませんでしたが、今回は全てアップルのデータになるのです。更に、競合もこれだけ多数のiPhoneを使ったデータ収集を行われると追いつくのは困難でしょう。ネット上のデータであればgoogleは大量に保有していますが、上記の様な音声データを(Google音声検索はあるものの)アップルほど持てるかは疑問です。
他社が手にしていない圧倒的な量と質のメタデータをアップルは手に入れる…。Siriの精度が上がってきた時、それは今でも優位にあるアップルの商品の使い勝手は今よりももっと良くなる時であると同時に、SFの世界がまた一つ現実になる時ではないでしょうか?
最後に蛇足ですが、Siriの精度を自分で設定できるようになったら、Siriを使った言語学習なんていうのも出てきそうですね。これはアップルが提供するのか、アプリ会社が提供するのかは分かりませんが。
そうなると、「Siriの言語学習機能で失職した外国語学校の先生がSiriに次にどうしようか相談する。」何て安っぽい風刺が出回りそうだなぁ…。
*例えば、誰かとの会話の途中で、「Siri。○○を再生して」と「Siri」という比較的珍しい名前を頭に付けていることで、それは会話や独り言ではなく、Siriに対する指示であることをApple TVが認識できるでしょう。iPhoneのように、Apple TVでもマイクに向かって話せでは、リモコンを手にとって操作した方が速くなってしまいます。
前回は「日本メーカーの弱点は深層価値、物語価値に対する取り組み不足である」という話をさせて頂きました。今回は、具体的事例を交えながら深層価値・物語価値への取り組み例と取り組まないリスク、実施に向けての簡単なアドバイスをご紹介したいと思います。
【深層価値・物語価値への取り組み例】
深層価値向上については、パナソニック社が「くらし研究所LivLa」で商品の使い勝手を向上のための継続的研究をされているのが好例だと思います。こうした努力を黒物家電分野でももっともっと追究することは出来るはずです。
例えば、最近一気に市場が拡大しているスマートフォンやタブレット端末。これらの商品ではタッチパネルが人と機械のインターフェースとして極めて重要な役割を担っているため、この精度が低いと使い勝手に致命的な影響を与えます。そうであるにも関わらず、タッチパネルの精度に対する取り組みが遅れている日本メーカーは多く、アップル社の同様の商品と比べて低い商品が多数あるのが実情です。
次にハードと連携するサービスもそうです。「サービス毎にIDが違う、パスワードを入れ直さないといけない。サービス間で情報を連携していないため同じことを何度も聞かれる…」こうした事例は多数あります。これでは商品を購入したお客様が「快適」な体験を出来るわけがありません。
また、依然としてサービスやアプリと比較的距離があるカメラなどでも深層価値は改善できます。例えば、起動が遅かったり、フォーカスが遅かったり、次の写真を撮るまでに待たされたりすれば、その使用体験は決して心地よい物にはなりませんから、画質等の機能を高度化させるだけでなく、使い勝手を大きく向上させることは可能です。
これらの深層価値領域を今まで日本メーカーが取り組んできたように、過剰品質と言われるレベルまで徹底した改善を継続的に行えば良いのです。
【取り組みへの課題と取り組まないリスク】
確かにこうした領域は画質・音質と違って感じ方の個人差が大きいため追求することが従来よりも難しいですし、サービス連携という領域も入るとなれば取り組む範囲が劇的に拡大して進展させることが困難になるでしょう。そして、何よりもその価値を購入検討の方々に伝えるのが難しいのも事実ですから、販売部門などから反発がでる可能性があると思います。
弊社では「深層価値・物語価値への取り組み」を実際に支援させて頂いていますので、社内外調整の難しさや、店頭やマス広告でこうした深層価値を伝えることの難しさは良くわかっています。販売部門の反発も当然の反応だと思います。
しかし、反発があるから、難しいからといって深層価値を放置すると、スマートフォンのように深層価値の向上を実現している競合商品がある環境下では、表層価値の高さから商品を購入されたお客様が、使用され始めてからその深層価値の低さに驚き、落胆して、次の購入をためらうようになります。
更にこうした悪評は今の時代直ぐに広がります。その結果、悪い体験をした方は当然として、その周辺の方々まで、深層価値が高く評判が良い競合商品に流れたり、新商品の表層価値が突出して高くなるまで購入を控えられたりするようになります。
これを克服するために、引き続き従来通りの手段を取ると、認知限界を超えるまで更なる表層価値アップを図り、認知限界を超えて価格競争におちいって、利益が全く取れなくなる可能性すらあるのです。

【実施に向けて】
深層価値、物語価値向上への取り組みが重要であることは、以上の説明で分かっていただけたと思います。直ぐにでも各社、各分野で取り組みを強化して頂きたいところですが、前述のようなプロモーションや販売の現場への落とし込みに大きな課題があるため決して容易ではないでしょう。
そのため、表層価値の分野でまだまだ認知限界を超えていない領域が既に残されてない商品・サービスについてだけに絞って、深層価値、物語価値の大幅向上にリソースを投下することをお勧めします。そして、社内の反発を抑える意味でも、その実行には必要に応じて外部の戦略コンサル等のリソースの活用を検討されるのが良いと思います。
なお、こうした深層価値、物語価値向上や、向上させたそれらの価値の購入検討の方への伝達を実現するためには商品企画、プロモーション、販売などと言ったマーケティング全域を理解してすすめる必要があります。また、当然ですが、該当する商品・サービス自体とその業界構造に対する深い理解が不可欠です。
商品企画、PR、宣伝、ソーシャルメディアツールなどそれぞれのプロがバラバラに対応していては手に負えません。外部のリソースを活用される際は、自社、及び自社製品・サービスに関するマーケティング全般(4P)に知見がある会社を選ぶか、これらの知識と機能を持った会社を編成したチームを作られることをお勧めします。
前回ご説明した通り、「過剰」に高機能を追求すること自体は正しい行為だと私は思っています。それは日本メーカーの強みでもあり、そうした人材、仕組み、文化を持っていることを生かすべきだとも思うからです。
一方で、日本メーカーが「大多数の方の認知限界」を超えるレベルにまで機能を向上させて、今や差別化が難しいという課題に直面しているのも事実です。そうした中で、日本メーカーはどうすれば良いかについて私の意見を今回は書きます。
まず始めに「認知限界を超えた分野」での機能の高度化は手を休めるべきです。そして、「認知限界を超えていない分野」での機能の高度化を追求するのです。こう書くと「当たり前じゃないか!そこがないから悩んでいるのだ!」という話になると思うのですが、そうした人は実はとても大切な点を見落としています。
日本メーカーが過剰に機能の高度化を追求してきた・いるのは、「売りやすい」つまりは「マス広告で訴求しやすい・説明しやすい分野」中心なのです。そして、それ以外の重要な分野への取り組みが不足しているのです。
しかし、商品の価値と言うのは「表層価値」だけではありません。商品には使ってみて始めてわかる価値や頭で理解して感じる価値があります。これを説明するために、商品・サービス全体としての価値を弊社が表にまとめたものが下記です。
この表にある「表層価値」というところが「15秒で分かる」「マス広告で訴求しやすい・説明しやすい分野」で、スペック表に載るような何万画素やFull HDといったようなものを指します。
次に深層価値は経験で通じて感じる価値で、使い始めて分かる、使い勝手の良さ、楽しさ、便利さ等を指します。具体例で言えば、アップル社の製品です。同社のiPodやiPhoneはこの点がとても優れているため、使っていてストレスが少なく、快適に感じて、次もまたアップル社の製品を買いたいと思わせる価値を持つことに成功されていると思います。
最後に物語価値は頭・知識で味わう価値で、自分が購入するものがどう素晴らしいのかを納得させてくれる物語を指します。具体例で言えば、高級料理店で料理を出してくれる際にウェイターの方が行ってくださる産地や生産情報です。通販生活などはこの点を上手く使って商品の価値を上げて販売することに成功されていると思います。
日本メーカーは私が知る限りこれらの深層価値、物語価値に対する取り組みが不足しています。そして、これら二つの領域、深層価値、物語価値に対して日本メーカーが持つ過剰機能追求の力を持ち込むべきだと考えるのです。
次回は深層価値・物語価値への取り組み例と取り組まないリスク、実施に向けての簡単なアドバイスをご紹介したいと思います。
*:初稿では品質としていましたが、ご指摘を頂き「機能」にお詫びして訂正いたします。
途上国市場で日本メーカーの商品が高スペック・高価格で苦戦していることや、3D TV等の新機能訴求の不振を受けて、日本メーカーの収益が悪化している大きな理由として、日本メーカーの過剰機能追求、訴求が言われるようになっているように見えます。
この主張は一面では正しいと私も思います。多くの技術者の努力によって大多数のお客様の認知限界を超えた分野でも未だに多額の投資を行っている例も実際にあるからです。
しかし、過剰機能=メーカーとして取り組むべきではないという主張には賛成できません。事実、過去に過剰であると言われた機能の中には、現在多くの人が不可欠であると思うものが沢山あるからです。そうした好例が、Full HDであり、200万画素以上のデジカメであり、古くはパーソナルコンピューターです。
今、SDの画質にテレビが戻っても問題ないと思う人はどれだけいるでしょうか?200万画素のセンサーが搭載されたデジカメで満足する人はどれだけいるでしょうか?パーソナルコンピューターが無くても問題ない人はどれだけいるでしょうか?
お客様は現在存在しない機能がもたらす暮らしを想像することは出来ませんから、それら価値を判断できません。そのため価値を判断できない物は過剰機能であり無価値だと判断されてしまいます。いわゆるマーケットアウトで生まれた商品に革命がない最大の理由です。これでは大きな差別化は不可能です。
それでは今までの通りの取組で良いのか?と言えば、私はそれも違うと思います。「認知の限界を超えた」機能を追求しても決して差別化にはならないからです。そうした中で、どういった点に注力していけば良いのかについて次回は書きたいと思います。
*:初稿では品質としていましたが、ご指摘を頂き「機能」にお詫びして訂正いたします。











