韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(34)
自分が見失ったものだから、ジョムスンは必死になってフィソンを捜した。しかし、なかなか見つからない。
ふだん、クムスンや義母に何かと愚痴や文句を垂れるスンジャも顔色変えてフィソンを探した。
フィソンを捜して走り回るクマに電話が入る。
クムスンからだ。
互いに場所の確認を行って捜索を続ける。
フィソンを捜しあぐね、途方に暮れているジョムスンにスンジャたちも合流する。
「お義母さん、座っててください。倒れてしまいますよ」
スンジャはジョムスンの身体を気遣う。
そこにクムスンも制服姿で駆けつける。
「おばあちゃん、どこでフィソンとはぐれたの?」
「それが~」
ジョムスンは失意と申し訳なさできちんと説明できない。
「商売してたら消えたんだって」
スンジャが説明した。
クムスンは動揺していた。珍しく祖母を責めた。
「どこでよ、おばあちゃん? まだ寒いのにどうして連れて出たのよ」
ジョムスンはしょげ返る。
原因に一枚かんだスンジャも後ろめたさでクマと目を見合わせる。
「その場所はどこなのよ?」
スンジャが答える。
「決ってるでしょ。駅の出入り口よ」
「フィソンがいなくてどれくらい経ってるの?」
「…」
うなだれているジョムスンに代わってクマが答える。
「2時間くらいよ」
「そんなに?」
悲観的になるクムスンにスンジャは言う。
「あなたの気持ちは分かるけど、見つけるのが先決よ」
「どこを捜したの」
「この近くにはいないわ」
「ともかく警察にも届け、周りに協力も願い手分けして捜しましょ」
「嫁ぎ先への連絡はもう少し待って。すぐにも見つかるかもしれないから」
ジョムスンの言葉にクムスンは頭を振る。
「何言ってるの。みんなで早く捜さないと大変なことになるわ」
クムスンはピルトに連絡を入れ、自分は警察に駆け込んだ。
テワンがいないことをぼやき、シワンには早退するよう言付けてピルトもフィソンを捜しに繰り出した。
電話を受けたシワンは退社する時、ソンランと顔を合わせたが、彼女をちらと見ただけで通り過ぎた。自分が無視されたように感じ、ソンランはため息をついた。
警察で迷子の捜索願いを出し、クムスンは再びフィソンを捜しに繰り出した。
「フィソン! どこにいるの!」
みんなは血眼になってフィソンを捜す。しかし、フィソンは見つからない。
キジョンはクムスンの家の近くに車を止め、クムスン母子の帰りを待っていた。だが、まだ姿を見せない。。
キジョンは会うのを諦めて車を発進させた。
街中を走ってきたキジョンは、道路端で泣き喚いている子供を目にした。ご婦人が歩み寄り何かしきりに話しかけているようだが、子供は辺りに目をやりながら泣き止む様子を見せない。
泣きしきる子供の顔を見ているうち、キジョンは閃くものを覚えた。目の前の子と目の裏に焼き付けている子の印象が重なってきたからだった。
キジョンは車をおりた。子供のところに歩み寄った。
「すみません。迷子ですか?」
「そうみたいなんです」
ご婦人たちは頷く。
「困ったわ」
声を枯らしてフィソンを捜しまわるクムスンの携帯が鳴った。
ピルトからだった。
「いえ、まだです」
捜しまわっている地域の確認を行い、互いに捜索を続ける。
誰もまだフィソンを捜すことができないでいる。
悲観的になりながらクムスンは涙交じりで叫ぶ。
「フィソン、お願いだから出てきてちょうだい! 今、どこにいるのか声を聞かせて!」
この時、電話が鳴った。
警察からだった。
「迷子の届けを出したナ・クムスンさんですよね」
「はい、私です」
「今ですね。ある方が迷子を連れてきてくれています。それで確認ですが」
「はい。着ているのは水色のつなぎで、靴は青色です。・・・ありがとうございます。すぐ駆けつけますから」
クムスンは何度も頭を下げ続ける。
家族たちに連絡してクムスンは派出所に向かった。
キジョンはフィソンにずっと付き添っている。
担当署員はキジョンに言った。
「忙しいようでしたらどうぞお帰りください。私どもの方で後のことは引き受けますので」
「いいえ、親御さんにお会いします」
キジョンはきっぱり答える。
フィソンを腕に抱き、福々しい思いもあるようである。
「隣町で見つけたのにこの派出所に来られるとは」
キジョンは苦笑いする。ご家族を知っているからとは答えられない。
「おかげで助かりました。記録するため、お名前とご連絡先をお教えください」
「私の名前は」
答えるのを中断し、キジョンは懐から名刺を取り出した。署員に渡しているところにピルトが駆け込んできた。
「フィソン!」
「おじいちゃん」
ピルトはフィソンを抱き上げる。抱き上げたところにクムスンも駆け込んでくる。
息子を抱き上げたとたん、クムスンの目からは涙がボロボロ流れ出る。
「フィソン、よかった・・・怖かったでしょう・・・母さんが悪かったわ」
クムスン母子を見つめるキジョンの胸中は複雑だった。
ピルトはキジョンに対した。
「うちの孫を・・・」
キジョンは頷いた。
「街中で泣いていたので迷子ではないかと思いまして」
「ほんと、感謝の言葉も見つかりません」
クムスンも頭を下げる。何度も下げる。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「見つかったのは隣町なんですが」
署員が説明を入れる。
「運よく、ここに連れてきてくださいました」
「そうですか。助かりました」ピルトは頭を下げた。「落ち着いたら、お礼をしたいのですがご連絡先などを教えてください」
「それでしたらこれをどうぞ」
署員が名刺を差し出した。
「先ほどお預かりした先生の名刺です」
「”医学博士”お医者さんですか?」
「はい。専門外ですが――幸いショックは受けていないようです」
派出所を出た後、ピルトは名刺を渡すと言って中に戻っていった。
そこにジョムスンたちが姿を見せた。
フィソンが無事見つかった喜びを双方で分かち合うところだったが、急いでピルトが出てきた。タクシーで早く家に帰ろう、早く早く、とせかしたため、クムスンはフィソンを抱いたまま、義父に従う他なかった。クムスンはジョムスンたちを気にしながら離れていった。
シワンとジョンシムが話をしているところにクムスンたちが帰ってきた。クムスンはフィソンを抱き、ニコニコ顔だ。
フィソンの無事にシワンもジョンシムも嬉しそうだ。
家族のフィソンを思う気持ちに触れ、クムスンは家族の幸せをかみしめた。
フィソンを迷子にし、方々捜しまわったジョムスンは、家に帰りつくなり寝込んでしまった。フィソンが無事見つかってホッとしたせいもあるし、気が張って無理し、疲れ果てたせいもある。
テワンはカフェルームで店主に声をかけられた。店にやってきた女子高生がテワンに声をかけ、一緒に写真を撮らせてくれ、と交渉しているところを見ていたのである。
「君、うちのカフェでバイトする気はない?」
テワンは胡散臭そうに店主を見た。
「ありませんよ。身体は命なので酷使できません」
「いや、コーヒーを注いだりしながら、ただ店内を歩き回ってるだけでいいですよ」
「歩き回るだけでいいのですか?」
「そうです」
「客寄せパンダってことですか?」
店主は笑った。
「言葉の響きがよくないな。フロアマネージャってことだ」
「フロアマネージャですか。俺は高いですよ。いくらくれます?」
「フィソン」
「うん」
「心臓が止まるかと思ったわ。もう一人でいなくなってはダメよ」
「うん」
「今度、こんなことになったら、ママもいなくなるからね」
「うん」
「といっても、あなたに分かるわけないか・・・フィソン」
「うん」
「ママが裕福じゃなくてごめんね。ずっと一緒についててあげられないし、何もしてあげられなくて悪いと思ってるわ」
クムスンはフィソンを強く抱きしめた。
「でも・・・今は働かなきゃダメなの。フィソンが大きくなる前に一人前にならなきゃいけないの。わかるでしょ」
「うん」
「フィソン~、愛してるわ。ママは宇宙と同じくらい大きな心で、あなたを愛してるわ。私の命より大事よ。愛してるよ」
「うん」
フィソンを寝かしつけ、クムスンは義父母のところにやってくる。
ジョンシムは言った。
「おばあさんはどうしてあの子を外へ連れ出したのかしら」
「ずっとはたらけなかったからかと」
「ダメでしょ。まだ寒いんだから、風邪を引いたりするでしょ。どうしてか理解に苦しむわ」
「でもお義母さん――祖母は私をおぶって市場で働いていました」
「迷子になってもかまわないってこと?」
「いえ、私だって驚きましたよ。でも見つかりましたから」
ジョンシムは横を向いてしまった。
「では、行ってきます」
クムスンは立ち上がろうとする。
「どこへ行くの?」
「美容院に戻ります。断りもせず、飛び出してきたままなので」
「何いうの。フィソンを置いてでていくわけ? 今、何時だと思ってるの」
「閉店の時間ですけど、シャンプーを教わる日なんです。早めに帰りますから」
「待ちなさい! 何言ってるの?」
「…」
「外見は何ともなくても、ショックを受けて震えてるはずよ」
「その通りだ。どうしても行かなきゃダメか? 目を覚ました時、いてやった方がいいと思うけど」
「すみません。つらいのですが、行かなきゃなりません。やっとつかんだチャンスなんです」
「呆れた人ね」
「すみません。フィソンをお願いします。なるべく早く戻りますから」
クムスンは席を立った。
「分かった」とピルト。「理由があるなら急いで行ってこい」
キジョンは電話で連絡を受け、ヨンオクの透析を見に行った。
「頑張ってるな」
「どこにいたの? みんなが音信普通だと言ってたけど」
「用事があったんだ。今日は大丈夫か?」
「あとでウンジンを叱ってやって。ウンジュにひどい態度なの」
「ウンジュの態度を見習ったんだろ」
「あなた」
「わかった、わかった。いうとおりにするからもう黙ってろ」
息が荒くなり、ヨンオクは目をつぶった。
「どうした? 気分がよくないか?」
「あなた~、私、わたし…」
ヨンオクは気を失いだす。
「おい、大丈夫か、しっかりしろ。しっかりするんだ」
キジョンは看護師を呼んだ。
看護師が急いで駆けつけ、担当医もやってくる。
「大丈夫だ。任せてくれ。点滴の準備をして。ゆっくりだ」
顔面蒼白のキジョンに向かっていう。
「大したことはない。落ち着くんだ」
オ・ミジャはウンジュに言った。
「帰るなら送っていくわ」
「今日は約束があるんです」
「そうなの。じゃあ、お疲れ様」
行こうとするオ・ミジャに告げる。
「ジェヒさんとの約束です」
「!」
「黙ってるつもりでしたが、後ろめたくて」
「当直で忙しいと言ってたんだけど?」
「私が無理に頼んだんです」
「わかったわ。でも、昨日は手術で睡眠時間が2時間だったの。だから、早く帰らせてあげてよ」
「分かりました」
赤いスポーツカーが店の前に横付けされる。
ジェヒは携帯を取り出した。
「着いたぞ。出てこい」
電話を短くすませ、ジェヒは店内を見回した。
無意識にクムスンの姿を捜している。彼女の姿はないようだ。
彼女の姿はない替わりに言葉が浮かぶ。
――お待ちの間にシャンプーを。★私が頭皮のツボをマッサージします。★嫌ですか。★では、マッサージだけでもやらせてください。
ジェヒは思い出し笑いした。
どうしたのか、と思ってもう一度店内を見回す。やっぱりいない。
ウンジュが出てくる。
ウンジュはどこをみているのだろう、と思いながら笑みを浮かべる。
歩いて助手席に乗り込む。
「ジェヒさん、昨日は帰宅できず、2時間しか寝てないって?」
「そうだ。それでも約束を守ってる。感謝してくれなきゃな」
「もちろん、感激してるわよ。出発よ。まずデパートへ」
「デパート? 何しにゆくんだ?」
「う~ん、行けば分かるわ」
「買い物なんか、興味ないぞ。時間もないし」
「分かってます。だから、急いで」
苦笑し、ジェヒはシートベルトを引いた。
この時、懸命に走るクムスンがバックミラーに飛び込んできた。
クムスンは車の横をすり抜け、店へ駆け込んで行った。
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