矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

日本は、予防医学の発展途上国です。

2008-09-21 14:05:22 | Weblog
ここ数日診察した患者さんから垣間見る日本の医療の深刻な問題点が浮き彫りにされています。いまはじまったことではないですが、ここ数年間、ずっと同じような状況に遭遇し、がっかりしています。(奮起して、医療従事者教育、学生教育、患者教育に取り組んでもいるわけですが)

日本の医療現場の最重要課題のひとつといえます。それは、重要な予防医学の標準的な診療がほとんど普及していないこと、患者教育の不十分さ、です。

若い20代の女性で、知的レベルや教育レベルに問題のない普通の学生が
東南アジアの国に視察研修旅行に行きました。当然、その地域は、マラリアの予防薬、各種予防接種(A・B型肝炎、破傷風・ジフテリア、MMR、腸チフスなど)を行って渡航するのが先進国では「常識」です。
ところが、この学生は、こういった知識はまったくなく、そのまま「素のまま」
渡航していました。なぜ、こういったことがあとを絶たないのでしょうか?
市民公開講座などを、もっともっと普及させる必要があります。
旅行会社も率先して、リスクを伝える必要があるでしょうね。

別の患者さんは、60代の女性で、複雑な既往歴が多数あり、心内膜炎のために、数年前にMitral valve(心臓弁のひとつ)の置換術を受けた方です。今回、診察にあたって質問したところ、「なにもせずにそのまま」歯科治療を受けた、と申告しました。「抗生物質を呑むようにいわれませんでしたか?」と聞いても、まったく
そのような教育は受けておらず。。。日本の医療現場では、いったい、なにを患者に話しているのか????と疑問に思わざるを得ません。

この患者さんは心臓弁以外にも、両側の脚に人工関節を挿入されている方でした。
このようなハイリスクの患者に、患者教育が徹底されていないのは、非常に深刻な問題です。しかも意識もはっきりしており、自分で理解できる程度の方だからです。

この方は、残念ながら、菌血症が判明し、上記の3つの重要な人工物はすべて感染
(少なくとも保菌)してしまった、ことも判明しました。このような患者さんにとっての大きな不利益になる前に、もっともっと患者教育が必要です。

患者教育の前に、学生、医師教育も必要です。
医学部で、もっと「実践的な臨床的な知識」を確実に教育するシステムが必要です。卒業してからでは、「遅すぎる!」というのが私の持論です。





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1 コメント

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全く同感です。 (doc)
2008-09-24 12:32:19
私は関西の研修病院で一応指導医の立場にあるものです。

スタンダードプリコーション、抗菌剤の適正使用、前確率を考えないむやみな検査、などなど、繰り返し指導しても、多くのスタッフや指導医にあたる人たちが模範を示していない現状では、いつも『問題だ』と言っているこちらの方が少数派で、異端のように思われてしまうように感じています。

少なくとも、エビデンスの確立した領域について全ての指導医が基本事項に忠実に、患者さんの利益・不利益を考えた医療を行う必要があるのですが、『当たり前』が当たり前になっていないのですね。

学会など医療界の指導的立場にある方々の責任は重いと言わざるを得ません。また、言うだけで実践で示さない人々も同罪です。

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