∞ヘロン「水野氏ルーツ採訪記」

  ―― 水野氏史研究ノート ――

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R-4>【研究余滴】古文書の文法「已上」について

2012-12-05 18:29:37 | R-4>水野氏諸他参考資料
 だいぶ以前に、投稿したした「『金切裂指物使番』にみえる『水野久右衛門尉』」に関連した“水野久右衛門尉”の人物像については、その後も研究を続けてはいるものの、誠に恥ずかしながら遅々として捗って居ないのが現状です。
 さりながら、この“水野久右衛門尉”と、昨年“第1回 水野氏史研究会主催講演会”で講演しました「鋳物師 水野太郎左衛門――その氏族と作品――」に関する古文書の中に、共通した文法で記された文言があり、それぞれの資料作成の際にいろいろと調べてはみたものの、残念ながらその書法のもつ意味合いが判らず終いのままでした。

 その書法とは、袖(文書の初め、右端の余白)に、「已上」(=以上)と記された文言があるものです。([正則発給文書のイメージ画像]を参照)
「以上」とは、通常文書の“末尾”に記して「終わり」の意を表す文言でありますが、問題とするこれらの文書には、“冒頭”に大きく「已上」と記されているのです。

 最近ある研究会に参加した際、某先生にお伺いしたところ、愛知大学教授山田邦明先生がお詳しいとお教えいただきました。早速参加されていた山田先生にその旨お尋ねいたしましたところ、誠に簡潔で明解なご教示をいただきましたので、漸く長年の謎を解くことが出来ました。その後も諸先生にいろいろご教示を賜りました。ここに記して感謝の意を表します。

 以下に簡単ではありますが「已上」について判明した内容を記します。

●已上・以上
 以て上がる。
  以て=くぎり・限界を示す。「これを―終了」出典:「デジタル大辞泉」
  上がり=物事の終わり。出典:「デジタル大辞泉」
∴ これをもって終わりとする。

●「書止(かきとめ)」は、「以上」「端書無之」などで締める
(1)追而書(おってがき)とは、尚々書(なおなおがき)とも呼ばれ、中世の書状によく見られた書式で、書状本文の内容とは関係のない事柄を書状の端か、礼紙(らいし=書状の文言を書いた紙に重ねて添える白紙)などの別紙に書き添えること。現在の追伸に近い。書出が「追而申」(おってもうす)または「尚々」から始まることからこの名称が付いた。書止は「以上」「端書無之」(はしがきこれなし)などで締める。(出典:wikipedia「追而書」をもとに編集)

(2)追而書については、戦国時代後半から江戸時代初期にかけて、本文の重要な事柄を更に強調するため同様の内容を再度記すことが常であった。従って追而書を記さない場合には、この文書には「追而書・尚々書は書かれていない証」として「書止」の「已上」が用いられた。(山田邦明氏談話)


◆「已上」三例
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田中吉政書状(折紙)
 (包紙ウハ書) 
 「 関白様御時   (ママ)  
      田中兵部少輔殿 」

  已上
鐵屋職事、如先規可鑄之、御次目之、御書、重而申上可遣之條、可有其心得、
今度於清須、上様御釜、無由断出来候様ニ、可為専用候、謹言、
天正十八      田中兵部大輔
    十一月八日    吉政(花押)
   鐵屋
    太郎左衛門殿
--------------------------------------------------------------------------------
慶長三年一一月 福島正則より諸役免許の判物 (水野太郎左衛門資料七)
 (包紙) 
 「羽柴清須侍従様
        御墨印」

    以上
 鉄屋大工職事任先判旨申付候、幷家屋敷ニ付、門次之諸役令免許之状、件如、
慶長三年     羽柴清須侍従
    十一月十三日 正則(花押)
      清須鉄屋大工かしら
       太郎左衛門とのへ 
--------------------------------------------------------------------------------
久留島家文書
 福島正則宛行状 折紙
「福嶋左右衛門太夫様ゟ/水野内記 江/御書壱通/於鍋様御物成書附入/三十番」

以上

安芸之國加茂郡
之内を以六百拾八石
三斗河尻村同國
あんほく郡之内を以
弐百石とけ村
都合八百拾八石三斗
者如前々其方へ
令進入候全所務
可有之候仍如件

    羽少将
慶長拾五年
 十二月七日  正則(花押)

 水野内記殿
--------------------------------------------------------------------------------
[正則発給文書のイメージ画像]



◆「端書無之」の二例
西谷山 西照寺文書
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     端 書 無 之
 就今度其方帰参 木佛 以下虫喰 言上候処被成 御免候間難有可為到安置候
御礼之儀者追而  御染筆、可被成候条可為得其意候猶其節此一紙可差出候不宣
                          下間刑部卿法橋
                             頼源花押
            正徳四年甲牛六月三日
               越中国射水郡西田村   西照寺 祐慶
--------------------------------------------------------------------------------
     端 書 無 之 
 就今度其方帰参 御開山様御影太子七高僧御影御裏申替願之通遂言上候処此節
御用多故御裏 御判形ニ而先被成 御免候間難有被存候御裏之儀者追而 御染筆
可被成下候不宣                     
                         下間刑部卿法橋
                                   頼源花押
            正徳四年甲牛五月十二日               
越中国射水郡西田村   西照寺 祐慶
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