
◆南禅寺
京都の東山にある南禅寺は、鎌倉時代の正応4年(1291年)、亀山上皇が離宮を大明国師に与えて禅寺に改めたのがその起源。日本の文化史上重要な役割を果した禅僧が歴代住持として住山し、五山文学の中心地として栄えた。
広之と美和子は遅い昼食を済ませて店を出た後、この寺の三門へ。この門は歌舞伎「山門五三桐」で石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」と大見得を切る舞台となったことで有名だ。その2層からなる高さ22mの壮大な楼門や門前に建つ石燈篭には、いつ来てもその大きさに圧倒される。
晩秋の紅葉を楽しみながら、二人は赤煉瓦のアーチで有名な水路閣まで歩いた。ここは疏水と呼ばれ、琵琶湖から京都市内に向けて引かれた水路の一部で、このアーチは古代ローマの水道橋がモデル。明治以来のレンガ造りの建物が一種独特のエキゾチックなムードを醸し出している。最近ではTVドラマの撮影によく使われていて、観光の目玉になっている感がある。 確かにこのあたりはやけに人が多く、アーチをバックに写真を撮るカップルも多かった。
「さすがに人が多いなあ、来るんじゃなかったかなあ」「そんなことないわ、地元なのに観光客になったみたいで楽しいわ」「そうですか、そう言ってもらえると嬉しいけど、でもなんか、若い頃を思い出しますね」「そうね、確かに・・・」
「美和子さんは、どうしてあのゴッホ展へ行かれたんですか?」「藤田さんから教えてもらったの、彼は私がやっている華道教室の生徒さんなの」「へえー、藤田がねえ、とても生花なんかやるタイプじゃないんだけどなあ」「藤田さん、なかなか筋がいいんですよ、それでお花について話をしていたら、たまたまゴッホのアーモンドの花が出てきたの」「なかなか洒落たきっかけですね、僕も生花やろうかな、教室は何処にあるんですか?」「河原町の御池、ホテルオークラの近くです」
そう話ながら、二人はじゅうたんを敷き詰めたように枯葉が積もった参道へ戻り並んで歩いた。美和子は気分もいいし、このまま“哲学の道”を通って銀閣寺まで足を伸ばしたいなと思ったが、出会ったばかりだし、あえてそれを口に出さなかった。
「今日はいい日だったなあ、美和子さんと知り合えたし、ゴッホを見たし、散紅葉も楽しんだし、なんかすごく幸せな気分」「私も楽しかったわ、湯豆腐をごちそうになったし」「あれ、それだけですか」といいながら二人の顔に笑みがこぼれた。
「良かったら近いうちに、高台寺へ紅葉のライトアップでも見に行きませんか?」「・・・」「いや、無理にとは言いませんけど、なんか夜の紅葉も見たいなあと」「ちょっと考えさせてくださいね、予定を見てみないと・・・」「そうですよね、突然だし、メール下さいね、待ってます」と言って、広之は美和子のアドレスを聞いて、自分の携帯からメールを送信した。
◆貸切屋外ジャグジー
メリケンオリエンタルホテルで神戸の夜景を楽しんだ後、植田は帰り支度をしていた。貴美子は化粧をしている。つけたばかりのブルガリの香水がほのかに漂う。亭主が今日は出張なので、今から帰れば間に合うと、いつになくのんびりしていた。
「ねえ、忙しいんでしょ?」「まあね、でも“忙中閑あり”って言うだろ、僕は忙しいけりゃ忙しい程、私生活が充実するタイプだから」「私生活って女遊びってことだよね?」「茶化すなよ」「あはは、だって私以外の女ともいろいろ遊んでるように見えるもん」
女は鋭いと植田は思った。確かに最近信じられないぐらい女まわりが良かった。遊び半分で声を掛けても、大概うまくいく。しいて言えば、制約はお金ぐらい。ただ貴美子と知り合ってからは、だんだんと他の女と遊ぶことが減ってきていた。
「ねえ、良かったら今度亭主が出張の時に、泊まりで岡山に遊びに行かない?」「岡山?なんで」「雑誌を見てたらね、オシャレな貸切露天風呂が付いてる、素敵なリゾートホテルを見つけたのよ」「でも貸切露天風呂なんて、最近どこでもよくあるじゃない」「それがね、ちょっとゴージャズ、部屋のベランダにジャグジーなのよ、分かる?」「ええっ、ジャグジー?それは聞いたことないなあ」
植田はちょっとテンションが上がっていた。話を聞きながら広いジャグジーで貴美子がきゃーきゃーはしゃいでいる姿を連想していた。こういう連想をさせると、そのリアリティにおいて右に出る者はいないと自分でも妙な自信を持っている。
「都合のいい日が分かったらメールくれる?こっちも段取りがあるから」「わかったわ」と言いながら、二人は部屋を出た。
京都の東山にある南禅寺は、鎌倉時代の正応4年(1291年)、亀山上皇が離宮を大明国師に与えて禅寺に改めたのがその起源。日本の文化史上重要な役割を果した禅僧が歴代住持として住山し、五山文学の中心地として栄えた。
広之と美和子は遅い昼食を済ませて店を出た後、この寺の三門へ。この門は歌舞伎「山門五三桐」で石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」と大見得を切る舞台となったことで有名だ。その2層からなる高さ22mの壮大な楼門や門前に建つ石燈篭には、いつ来てもその大きさに圧倒される。
晩秋の紅葉を楽しみながら、二人は赤煉瓦のアーチで有名な水路閣まで歩いた。ここは疏水と呼ばれ、琵琶湖から京都市内に向けて引かれた水路の一部で、このアーチは古代ローマの水道橋がモデル。明治以来のレンガ造りの建物が一種独特のエキゾチックなムードを醸し出している。最近ではTVドラマの撮影によく使われていて、観光の目玉になっている感がある。 確かにこのあたりはやけに人が多く、アーチをバックに写真を撮るカップルも多かった。
「さすがに人が多いなあ、来るんじゃなかったかなあ」「そんなことないわ、地元なのに観光客になったみたいで楽しいわ」「そうですか、そう言ってもらえると嬉しいけど、でもなんか、若い頃を思い出しますね」「そうね、確かに・・・」
「美和子さんは、どうしてあのゴッホ展へ行かれたんですか?」「藤田さんから教えてもらったの、彼は私がやっている華道教室の生徒さんなの」「へえー、藤田がねえ、とても生花なんかやるタイプじゃないんだけどなあ」「藤田さん、なかなか筋がいいんですよ、それでお花について話をしていたら、たまたまゴッホのアーモンドの花が出てきたの」「なかなか洒落たきっかけですね、僕も生花やろうかな、教室は何処にあるんですか?」「河原町の御池、ホテルオークラの近くです」
そう話ながら、二人はじゅうたんを敷き詰めたように枯葉が積もった参道へ戻り並んで歩いた。美和子は気分もいいし、このまま“哲学の道”を通って銀閣寺まで足を伸ばしたいなと思ったが、出会ったばかりだし、あえてそれを口に出さなかった。
「今日はいい日だったなあ、美和子さんと知り合えたし、ゴッホを見たし、散紅葉も楽しんだし、なんかすごく幸せな気分」「私も楽しかったわ、湯豆腐をごちそうになったし」「あれ、それだけですか」といいながら二人の顔に笑みがこぼれた。
「良かったら近いうちに、高台寺へ紅葉のライトアップでも見に行きませんか?」「・・・」「いや、無理にとは言いませんけど、なんか夜の紅葉も見たいなあと」「ちょっと考えさせてくださいね、予定を見てみないと・・・」「そうですよね、突然だし、メール下さいね、待ってます」と言って、広之は美和子のアドレスを聞いて、自分の携帯からメールを送信した。
![]() | ![]() |
◆貸切屋外ジャグジー
メリケンオリエンタルホテルで神戸の夜景を楽しんだ後、植田は帰り支度をしていた。貴美子は化粧をしている。つけたばかりのブルガリの香水がほのかに漂う。亭主が今日は出張なので、今から帰れば間に合うと、いつになくのんびりしていた。
「ねえ、忙しいんでしょ?」「まあね、でも“忙中閑あり”って言うだろ、僕は忙しいけりゃ忙しい程、私生活が充実するタイプだから」「私生活って女遊びってことだよね?」「茶化すなよ」「あはは、だって私以外の女ともいろいろ遊んでるように見えるもん」
女は鋭いと植田は思った。確かに最近信じられないぐらい女まわりが良かった。遊び半分で声を掛けても、大概うまくいく。しいて言えば、制約はお金ぐらい。ただ貴美子と知り合ってからは、だんだんと他の女と遊ぶことが減ってきていた。
「ねえ、良かったら今度亭主が出張の時に、泊まりで岡山に遊びに行かない?」「岡山?なんで」「雑誌を見てたらね、オシャレな貸切露天風呂が付いてる、素敵なリゾートホテルを見つけたのよ」「でも貸切露天風呂なんて、最近どこでもよくあるじゃない」「それがね、ちょっとゴージャズ、部屋のベランダにジャグジーなのよ、分かる?」「ええっ、ジャグジー?それは聞いたことないなあ」
植田はちょっとテンションが上がっていた。話を聞きながら広いジャグジーで貴美子がきゃーきゃーはしゃいでいる姿を連想していた。こういう連想をさせると、そのリアリティにおいて右に出る者はいないと自分でも妙な自信を持っている。
「都合のいい日が分かったらメールくれる?こっちも段取りがあるから」「わかったわ」と言いながら、二人は部屋を出た。













京都、行きたいな。
>こういう連想をさせると、そのリアリティにおいて右に出る者はいないと自分でも妙な自信を持っている。
これって、つい自分のこと書いちゃったよ、じゃないですか?
あはは勘ですけど。
「違うよ」って言われても、こっそり「きっとそうだ」って思ってます。こっそり。
写真を改めて見ると、つくづくそう感じます。
うーん、そうですか、そう感じちゃいました?
登場人物に場面場面でいろいろ感情移入するからなあ。
「違いますよ」なんて抵抗できないようですね。(笑)
純情なので(自分でゆう?笑)、読んでて顔が赤くなってしまいました。
ハンコックさんって本当に!経験豊富ですねー。(としか言いようがありません。)
でも、とても素敵な思い出をお持ちのよう。
文面から伝わってきますよ。(*^。^*)
きみ駒さんの、きゃーきゃーが可愛い。
なんて思い出に浸ってどうするんだろう、僕は。
別に経験豊富じゃないですよ、ちょっとだけ。(笑)
この部分を書いた時は3月末だから、そうでもなかったけど、
今の時期になると、やはりぐっときますね。
ワルツさんの記事で想い出しました。ありがとう。