*完全ネタバレ
先々週の土曜日、TVで「海猿」を観てそのあまりの完成度の高さに驚いた。
人間が惹かれる「物語」になくてはならない要素が全てきっちりと盛り込まれていた。
(1)主人公(及び他の登場人物)は物語が終わったとき精神的に成長していなければならない。
(2)懸案になっていた問題は解決されなければならない。
(3)(2)によって魂の浄化がなされなければならない。
海猿の表の主人公が仙崎大輔なら裏の主人公は源太郎である。
この話は仙崎たち潜水士の卵の成長物語であると同時に、源の辛い過去からの決別の話でもある。
映画の冒頭で流れるショッキングな映像。
助けを求めて沈没船のドアの隙間から差し出された手を振り解いて海面へと上がっていく潜水士。
これが一体いつ誰が体験したことなのかは明らかにはされない。
過去の話なのか未来の話なのかすら判らない。
これが教官・源の体験した辛い過去だということが観客に明かされるのは、映画も終盤に入ったころである。
そのとき観客は仙崎と共に気付くのだ。
「水深40mで二人の人間が取り残された。エアの残は30、片道一人分だけ。どうする?」
と訓練生たちに何度も繰り返される意地悪な問いは、実は源が今まで何度も何度も心で血を流しながら自らに問い続けてきたものであったろう・・・と。
この問いに対して仙崎は「何とかしてバディーと二人で助かる方法を考える」と言い、優等生の三島は「一人だけでも助かるのが賢明」と答える。
さぁ、その二人に神はどんな試練を用意したか?
「もしお前がへマをしたら、遠慮なく置いていく」と言い放った、冷酷な三島の方が事故によって岩に足を挟まれ動けなくなってしまう。
おまけに三島のエアのボンベは破損。
仙崎のエアを二人で分け合うしかない。
絶体絶命の二人のもとへ仲間たちが助けにやってくる。
潜水士の卵を救難場所に派遣した源は査問委員会に掛けられる。
源をかばう訓練生たち。
「なるほど、これがお前の育てた潜水士か」
と言って五十嵐が初めて微笑む。
この五十嵐という上官は、今まで源がバディーを見捨てたことを決して許さなかった男である。
仙崎たち訓練生は、過去の辛い事故((2)懸案になっていた問題)から、源と五十嵐の二人を精神的に救うのである((3)魂の浄化)。
源がバディーを失ったという重い現実は変えられない。
しかし、訓練生たちがここまで精神的肉体的に素晴らしい成長を遂げたこと((1)登場人物は成長しなくてはならない)、そして、「バディーと二人何とかして助かる」という難事をやり遂げた仙崎と三島によって、源の(そして五十嵐の)心の傷は癒され、魂は浄化されるのである。
う~ん、なんて見事なんだろう。
あまりにも真っ当なそのストーリーに心底感動した。
単館ロードショウでよくある、雰囲気だけの起承転結すらないつまらない映画が、娯楽アクション大作より高尚だと思ってる俗物は多い。
だけど、違うよ。
本当に素晴らしい映画ってのはこういう映画を言うんだ。
先々週の土曜日、TVで「海猿」を観てそのあまりの完成度の高さに驚いた。
人間が惹かれる「物語」になくてはならない要素が全てきっちりと盛り込まれていた。
(1)主人公(及び他の登場人物)は物語が終わったとき精神的に成長していなければならない。
(2)懸案になっていた問題は解決されなければならない。
(3)(2)によって魂の浄化がなされなければならない。
海猿の表の主人公が仙崎大輔なら裏の主人公は源太郎である。
この話は仙崎たち潜水士の卵の成長物語であると同時に、源の辛い過去からの決別の話でもある。
映画の冒頭で流れるショッキングな映像。
助けを求めて沈没船のドアの隙間から差し出された手を振り解いて海面へと上がっていく潜水士。
これが一体いつ誰が体験したことなのかは明らかにはされない。
過去の話なのか未来の話なのかすら判らない。
これが教官・源の体験した辛い過去だということが観客に明かされるのは、映画も終盤に入ったころである。
そのとき観客は仙崎と共に気付くのだ。
「水深40mで二人の人間が取り残された。エアの残は30、片道一人分だけ。どうする?」
と訓練生たちに何度も繰り返される意地悪な問いは、実は源が今まで何度も何度も心で血を流しながら自らに問い続けてきたものであったろう・・・と。
この問いに対して仙崎は「何とかしてバディーと二人で助かる方法を考える」と言い、優等生の三島は「一人だけでも助かるのが賢明」と答える。
さぁ、その二人に神はどんな試練を用意したか?
「もしお前がへマをしたら、遠慮なく置いていく」と言い放った、冷酷な三島の方が事故によって岩に足を挟まれ動けなくなってしまう。
おまけに三島のエアのボンベは破損。
仙崎のエアを二人で分け合うしかない。
絶体絶命の二人のもとへ仲間たちが助けにやってくる。
潜水士の卵を救難場所に派遣した源は査問委員会に掛けられる。
源をかばう訓練生たち。
「なるほど、これがお前の育てた潜水士か」
と言って五十嵐が初めて微笑む。
この五十嵐という上官は、今まで源がバディーを見捨てたことを決して許さなかった男である。
仙崎たち訓練生は、過去の辛い事故((2)懸案になっていた問題)から、源と五十嵐の二人を精神的に救うのである((3)魂の浄化)。
源がバディーを失ったという重い現実は変えられない。
しかし、訓練生たちがここまで精神的肉体的に素晴らしい成長を遂げたこと((1)登場人物は成長しなくてはならない)、そして、「バディーと二人何とかして助かる」という難事をやり遂げた仙崎と三島によって、源の(そして五十嵐の)心の傷は癒され、魂は浄化されるのである。
う~ん、なんて見事なんだろう。
あまりにも真っ当なそのストーリーに心底感動した。
単館ロードショウでよくある、雰囲気だけの起承転結すらないつまらない映画が、娯楽アクション大作より高尚だと思ってる俗物は多い。
だけど、違うよ。
本当に素晴らしい映画ってのはこういう映画を言うんだ。
TBありがとうございます。
こんなに情熱的に語る偏屈王さんは『三丁目の夕日』以来でしょうか(笑)
原作も好きだし、TVでやった一作目も良かったので『LIMIT OF LOVE 海猿』観たいとはおもってるのですけど、主演男優にアレルギーがあって踏み切れません(笑)
ちょっと興味あってみてなかった作品で、
偏屈のネタバレでとっても見たくなりました
劇場には行かないまでもレンタルが出たら借りよう。
ははは、長文失礼致しました(笑)。
やはり「海猿」は原作が優れているんでしょうね。
私も今度読んでみたいと思います。
>主演男優にアレルギーがあって踏み切れません(笑)
うーん、これはいかんともしがたいですねぇ・・・。
興味がおありでしたら、レンタルで是非。
ダイビングを実際教えていました。
大事故に繋がる一歩手前のことで、忘れられないことが数件ありますよ。
台風通過後のコンディションで潜って、透明度の悪さのために体験客を見失ってしまったり…。
水底の流れのために、大きく予定コースを外れてしまい、収容ボートまで辿り着けずに、連れのダイバーたちを危険に晒したり…など。
そんなことを思い出させる、いい映画ですね。
>ダイビングを実際教えていました。
それは素敵ですね。
印象的なハンドルネームも納得です。
その昔、グァム島でダイビングをしたことがあります。
観光客がお遊びでするダイビングでも、指でする安全サインの出し方等を結構厳しく教えられて、「ああ、海は危険と隣り合わせなんだな~」と実感させられました。
南海のブルーの魚や、ブルーのヒトデの美しさには感動しましたが、どうも私は「耳抜き」が下手でして・・・。
結局、ダイビング体験は人生でそれ一度きりとなってます・・・。