キネオラマの月が昇る~偏屈王日記~

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ノーナ・リーヴス西寺郷太が書いた「マイケル・ジャクソン」

2010年11月06日 | 
ノーナ・リーヴスの西寺郷太が書いた、講談社現代新書「マイケル・ジャクソン」を読む。

巨人の原監督風に言えば「マイケル愛」にあふれた一冊。
第四章を読んで、やはり、少年虐待疑惑は、超絶金持ちで有名人のマイケルを陥れるための狂言だったとの確証を持った。

「長いお別れ」 レイモンド・チャンドラー より

2010年11月02日 | 
「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼はいった。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」

     「長いお別れ」 レイモンド・チャンドラー 清水俊二 訳
      ハヤカワ・ミステリ文庫 P.30


清水俊二の翻訳は素晴らしい。
乾いていながら品がある。
この先何百年経とうとも、チャンドラー作品で清水以上の日本語訳は出てこないだろう。



「そうか、君は課長になったのか。」 佐々木常夫

2010年10月26日 | 
うつ病の妻と自閉症の長男を抱え、病人の世話と家事をこなすために、自分だけでなく部下も全員、会社を定時に帰れるように工夫しながら、仕事でも大きな成果を挙げ続けた伝説の課長、佐々木常夫氏。
その三作目の著書「そうか、君は課長になったのか。」を立ち読み。
タイトルはもちろん城山三郎氏の本のタイトルのもじり。
さらっとしか読めてないんだが、すごい人だなぁ、と感動した。

「部下を守るため社内政治に勝つには」などという章があるのが、非常にリアルで生々しい。
どんなに誠心誠意導いても、どうしても使えない部下は、別の暇な部署への異動を申し出よ、などという一文もあった。
奇麗事だけじゃないのが、逆に信頼できる。

課長ほど面白いポジションはない 佐々木 常夫氏(東レ経営研究所社長)

私が思うに、あまりにも皆隠し過ぎなんですよ。みんなが私みたいに正直に裸にならないでしょ。そのために、みんな苦労したり疲れたりしているんですよ。そんなに無理しなくていいんだから。「そうか、君は課長になったのか。」で書きましたけど、つらかったら泣けばいい。部下の前だろうとなんだろうと。気取ること無いんだって。苦しかったら悩みを訴えればいいし、楽しかったら笑えばいい。もっと素直にいたほうが疲れないで人生を送れると思っているんですよ。

上記のインタビューで、部下の前で泣きたかったら泣けばいい、と仰ってるのを読んで、「ああ、この人はつくづく強い人なんだな」、と驚かされる。
見栄を張ることなく自分の弱さを平気でさらけ出せる人というのは、本当に強い人だ。


改めて精読したいと思っている。

天才は天才を知る

2010年10月14日 | 
「同時代ゲーム」

テレビ東京の世界を変える100人の日本人という番組で、筒井康隆が書評をしていたのだが、それが滅法面白かった。
実は私も2~3回しか見たことがないのだが。
筒井のレビューに熱が入って特に面白くて読みたいと思ったのが、大江健三郎の「同時代ゲーム」。

「同時代ゲーム」
語り手である主人公はメキシコ旅行を経て、自分の父親の神話や、歴史を書きだす仕事を受け継ごうと決意した。四国の山奥に建設された村=国家=小宇宙で、語り手と語り手の家族は幸せに暮らしていたのだった。しかし、大日本帝国が二重戸籍は罷りならんとして軍隊を派遣し、併合しようとやってきた。その村で、村人たちはどういう暮らしをしていたのか?そして大日本帝国に、どう戦いを挑んだか?さらに語り手の家族は村から離れてどんな生活を送っていたのか?

村=国家=小宇宙を絶対的に支配しているという「壊す人」、村=国家=小宇宙の神話や歴史を研究していた「父」こと神主、2人組みの天体力学の専門家、「アポ爺」と「ペリ爺」語り手の弟で村の若者である「ツユトメサン」百歳近くにもなるのに、性的な魅力を持ち続ける「オシコメ」二重戸籍を正して大日本帝国に村=国家=小宇宙を取り込む為に派遣された「無名大尉」。
魚屋の「コーニーチャン」 女旅芸人の「カーネーチャン」など、ユニークな登場人物とともに、自殺した双子の妹に対する語り手からの手紙という形式で綴られていく。

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評論家の小林秀雄がたった2ページで投げ出してしまったほど難解な作品だが、筒井康隆は絶賛。

「失敗作であることを除けば最高傑作!」
という、とんでもなくキャッチーなコピーをこの作品に献上している。

普通の人間には難解と思える作品も、筒井にはとんでもなく楽しい「キャラクター小説」と映ったそうな。
天才は天才を知るということか。

あらすじだけ見ると、左翼臭がすごいけどね。
小説を楽しんでも、私が彼の思想に染まることはないだろう。


「ビックカメラ 日本一活気ある会社の社長が社員に毎日話していること」

2010年10月08日 | 
「ビックカメラ 日本一活気ある会社の社長が社員に毎日話していること」
中島孝志 三笠書房

ビックカメラの新井社長はものすごいアイディアとバイタリティの塊みたいな人でした。
高校時代のバイト(写真の引き伸ばしと焼き増し)からもうその商売人としての才能は顕著で、「なるほど、生まれついての企業家ってこういう人を言うんだろうな」と感心しました。

ちなみに昔からずーっと気になってたんですが、ビッグ(Big)カメラじゃなくてビック(Bic)カメラなんですよね。
ビックとはバリ島の言葉で「すごい!」「偉大だ!」「大きい!」という意味。
昔、社長がバリ島を旅行していたときこの言葉を知って、いつか社名にと考えていたそうです。

98歳のおばあちゃんの詩集 「くじけないで」 柴田トヨ著

2010年10月06日 | 
98歳詩集、大ヒット4万部
【書評】『くじけないで』柴田トヨ著

日曜日、JUNK堂書店に行ったら平積みになっていた、98歳(出版当時)のおばあちゃんが書いた詩集。
立ち読みしていて泣きそうになりました。

とても素直で優しい言葉で書かれていますが、心にすーっと染み渡ります。
丸一世紀近く生きてきた方の言葉というのは重みがあります。
来年100歳の人に「くじけないで」と言われちゃったら、もう「はい!」って頑張るしかないですよね(笑)。

トヨさんが朝日新聞の読者じゃなくて産経新聞の読者だというのも嬉しいですね。



 「 くじけないで 」    

            柴田トヨ 

ねえ、不幸だなんて
溜息をつかないで


陽射しやそよ風は
えこひいきしない

夢は
平等に見られるのよ

私 辛いことが
あったけれど
生きていてよかった

あなたもくじけずに

                  
               

「あのブランドの失敗に学べ」 マット・ヘイグ

2010年09月27日 | 
「あのブランドの失敗に学べ」
マット・ヘイグ著 田中洋/森口美由紀訳 ダイヤモンド社

コカコーラ、ソニー、フォード、マクドナルドetc。
世界に冠たる大企業、有名ブランドがやらかしちまった失敗の数々。

そこから見事な復活を遂げた企業もあれば、そのまま消滅していったブランドもあり・・・。
いやー、みんな結構失敗してるんだな、と目から鱗の落ちる思いでした。
一度も失敗しないなんて不可能。
それよりも大失敗した時にそれをどう打開するか、どれだけ早く体勢を立て直して立ち上がるかが大事なんだなと身にしみました。
非常に面白く、勉強になる本です。

世の中には本当に立派な人がいる

2010年09月22日 | 
「バス水没事故 幸せをくれた10時間」 中島明子 朝日新聞出版

2004年、台風23号による道路の冠水で、観光バスの屋根の上に取り残された37人の乗客の写真や映像をご記憶でしょうか?
この本は、あの事故の生還者の1人の元看護師さんが書かれたものです。

世の中には信じられないくらい魂の高潔な人がいるな、と驚嘆させられました。
ここに出てくる人たちは、私たちと同じ慎ましい庶民で、有名人でも大企業の経営者でもないし、六本木ヒルズにも住んでない、ポルシェにも乗ってないけど、でも本当に素晴らしい人達だと思いました。

この本の作者の中島さんも、一晩中街路樹にしがみついて、バスが流されていくのを防いだIさんとTさんも、K師長も、もうほとんど神や仏に近いほど利他精神の塊です。
なんというか心が洗われるとは、こういう状態を言うのだな、と思いました。
私の真っ黒な心も、思わず読書後は少し白くなってしまいました(笑)。

腐ったテレビメディアはこういう方の話をこそ、放映したらいいのに。
どんなに多くの人が勇気付けられるだろう。
犯罪者や悲惨で残酷な事件は事細かに報道するくせに、何故こういう話は報道しないのか?

エマーソンの言葉

2010年09月06日 | 
世界は絵のように描かれたものでも、飾られたものでもありません。
しかし、最初から美しい存在なのです。
また、神がすべての美をつくったのではありません。
しかし美は、宇宙全体の創造主なのです。
               エマーソン

「ぼくの帽子」 西条八十 

2010年07月29日 | 
   「ぼくの帽子」 西条八十


母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。

母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。

母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。


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好きな詩は数々あれど、朗読したとき最も音の響きが美しいと思われる日本語詩。
強い映像喚起力がある。

「スペルミスはその人の指紋である」 スティーブン・キング

2010年07月24日 | 
「スペルミスはその人の指紋である」

スティーブン・キングの「しなやかな銃弾のバラード」という短編に出てくる一文。
記憶のみで書いてるので詳しい文言は違うかもしれないがご容赦を。
キングのイカした比喩、十傑にはいるくらい見事な比喩だと思う。
つまりスペルミスにも癖というか個性があって、それはその人の指紋と同じくらいその個人を特定できうる。

・・・・ということをつれあいに熱く語ったが、残念ながらつれあいにはあまりグッと来なかったようだ。