おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

オールドインペリアルにて

2008-11-29 | Weblog
遅い夕食を終えて、われわれは中2階へ移動した。ホテル内を紹介したパンフレットをクロークに預けると、緑色のプラスチック札を女性が差し出した。通りに面したガラス窓越しに雨が降っているのが分かる。街灯が結構な雨脚を浮かび上がらせている。


「2人だけど」。ボーイがカウンターへ案内してくれた。中央から右寄りの席。正確には右端から4番目にわたし、5番目に連れ合い。右端は男、その左隣は女、その左隣すなわちわたしの右隣は男が座っていた。口調と顔つきで30代後半くらいか。

連れ合いの左隣は空席でボーイとバーテンダーがグラスをやり取りする空間となっている。空席の左側は60を超えたとみられる男2人。うち1人は化粧室で並列した男だった。左手で携帯電話を耳に当て、右手でナニを支え、顔を仰ぎ気味にして小用を足していた。でかい声が響いた。「そりゃ誕生プレゼントをあげんとあかんな。しっかり用意しとってや。わっははは」。器用な男のようだ。

フランク・ロイド・ライト設計の名残を漂わす酒場。それがオールドインペリアルバーだ。ウイスキーがメーンのようだが、カクテルもある。ここに入った目的はただ一つ。フローズンダイキリを飲みに来たのだ。

品書きにダイキリがある。まずは第一関門突破。当然あるよなという思いを込めて尋ねる。「フローズンダイキリはできる?」

カウンター内には3人のバーテンダーがいた。いずれも30代前半ぐらいだろうか。目の前の1人が即答した。「できますよ」。肩の力が抜けた自然体の応対に安心する。よし第二関門突破。

ここからがこだわりだ。「へミングウェイのフローズンダイキリが飲みたいんだが」。さあ、なんと答える。「へミングウェイ?」。一瞬間を置きつつも果敢に即答した。「レシピが分からないので、へミングウェイとは違うフローズンダイキリになると思いますが」。受けの素早さに「それでいい」。連れ合いも同じものを注文した。

カクテルグラスが2つ並び、ストローで1口目をゆっくりと吸い上げる。淡泊な味わい。よく言えば淡麗。例えれば細見で髭のないへミグウェイか。どっかとしたマッチョな味わいを期待していたが、それは言うまい。あの味わいはこの酒場の雰囲気には似つかわないのかもしれない。皇居も近いことだし、荒ぶる味を求めては場違いというものだ。


上品なフローズンダイキリを1杯も頂いたことだし、さてと上質な時間から退散することにしよう。





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