おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

わが友クロマニョン人 LASCAUX 1

2017-07-11 | Weblog
あれは何年前だったろうか。テレビのドキュメンタリー番組でフランス南西部にある世界遺産ラスコーの壁画を紹介していた。洞窟の壁や天井に野牛などの動物が描かれていた。2万年も前の人物たちが作者だった。なんて上手なんだ! 絵の巧みさに驚いた。洞窟に暮らし、食べることと子孫を残すことが人生の全てだと一方的に思い込んでいた2万年前の人たちが、洞窟にわざわざ絵を描き残していた! 稚拙な落書きなんてもんじゃない。鑑賞に耐えうる絵すなわち作品となっていた。感嘆とも言うべき印象が脳裏に深く刻まれた。

ラスコーの壁画の実物を見てみたい。現地を訪れよう。そう思って検索の日々が続いた。結果は落胆だった。人が洞窟内に入ることに伴う壁画の劣化を避けるため、原則非公開となっていた。訪問者の門は閉ざされ、文字通り洞窟の入り口は塞がれていた。わたしのラスコー壁画への思慕は洞窟の入り口付近を漂い、そのうち宙をさまよって、記憶の底の奥深くに閉じ込められてしまった。

なんらかの関心を持ったり、なぜか気に掛かることがあると、それを探究したくなる性分がある。それが風物であれば現地を訪れる。物品であれば見定める。人であれば会いに行く。簡単明瞭な行動原理である。しかしながら、ラスコーの壁画は片思いのまま時が流れた。念ずれば花開くではないが、積年の想いの対象が何の因果か塩梅か、巡り巡って眼の前にひょっこりとやって来ることがある。ラスコーの壁画がそうだった。今春、福岡市博物館を訪れた際、各地の展覧会を予告、紹介するパンフレットコーナーにラスコー展のものを見つけた。2万年前の洞窟壁画、世紀の大発見を体感! パンフの言葉も躍っているが、わたしの心も躍っている。その狩人、クロマニョン人。うん? クロマニョン人? 歴史の教科書で聞いたような名前だな。

パンフの文言に見入る。

2万年の時を越え、洞窟絵画が九博に解き放たれる! 

九博って福岡県太宰府市にある九州国立博物館のこと?


隠された線刻がライトで浮かび上がる神秘の空間

線刻? ライト? 神秘の空間? なんのことなの?


洞窟絵画の最高傑作を間近で体感!

間近で体感って、どうゆうことなの?


芸術のはじまりを知る!

分かったような、分からんようだが、要はラスコー壁画は芸術のはじまりなのか?


クロマニョン人の正体を解き明かす!

正体? 何者なの?


等身大のクロマニョン人に会える!

等身大? ふーん?


マンモスの牙にさわろう!

本当にさわっていいんだね?


ここでしか見ることが出来ない迫力ある太古の傑作!

もう見るしかないよね。


企画担当者も相当気持ちが昂ぶっていたのだろう。感嘆詞の連発である。読み手向けの読みやすさなどを吹き飛ばしてしまうほどに、細かい文字でラスコー展の情報がぎゅうぎゅう詰めに入れ込んである。はっきり言って拡大鏡が必要なほどだ。担当者の度を超した嬉しさと沸騰しきった熱気が伝わってくる。わたしがかつて想いを寄せた壁画の動物たちのカラー写真が説明文を押しのけ圧するように刷り込まれている。この時、わたしは知るよしもなかった。ラスコー壁画の描き手、クロマニョン人がわたしたち現代人と深い関係がある人たちであることを。




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