おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

われわれはどこから来たのか LASCAUX 2

2017-07-15 | Weblog
われわれはどこへ行くのか。よく問われる、未来についての課題である。わが道を往くトランプ政権が誕生し、中国共産党が政治・経済・軍事大国を目指している世界の行く末や、安部1強政権下の日本の進路、はたまた、人それぞれの人生、例えば新しく家庭を創るとか、あるいは築いた家庭が破綻するとか、世界と個人の行く末はいろんなことがあろう。これらの課題はトランプ政権、中国共産党、それぞれの人がどう意図して決めるかで少し先の未来が現実として見えてくる。これから先の課題の裏面とも言えるのが、われわれはどこから来たのかである。

米国や中国共産党の成り立ちと歴史をわたしたちは知っている。個人で言えば、いつ生まれて、どういう履歴で今日があるのかを記憶している。人ひとりの半生、全人生の時間は長いようで短い。われわれ自身の由来と歴史は実に底が浅い。役所に保管してある戸籍で遡ることができる範囲、もしくは菩提寺の過去帳に記載されている範囲、または家系図なるものに記載されている範囲、せいぜいこれくらいが、日本人であるわれわれが知りうる由来である。いやあ~、青森の三内丸山遺跡にいたのが、うちの祖先でしてねえ。生粋の縄文人なんですよ。あははは。こんな風に自らの由緒来歴を言える人は、今の日本には多分いないだろう。もしいたとしたら、その人は虚言癖がある方ではなかろうか。

われわれはどこから来たのか。時間をどんどん巻き戻してみよう。世界が氷に覆われていた頃、日本列島と中国大陸の沿岸からの距離は海が氷ついていたせいで今以上に近かったらしい。なんらかの方法で大陸から先住となる人たちがやってきた。ここで人類史を語るには、わたしの知識、知見はあまりにも乏しく、お粗末である。ここは、ラスコー展の監修者である海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長の講演やラスコー展のカタログを参考に頭の中を簡潔に整理してみよう。世界各地にいる現代人はすべて、ホモ・サピエンス(賢い人の意)という1つの種に属している。ホモ・サピエンスはアフリカで進化し、5万年前以降に世界中に広がった。出アフリカである。トルコから西へ向かった集団はクロマニョン人と呼ばれる住民となり、アジアへはヒマラヤの南と北の2ルートを通って東へ向かい、東アジアへ到達した。その中から対馬・沖縄・北海道の3方から時期を違えて異なった集団が日本列島へ渡った。以上が現時点での有力な仮説である。お分かりかな。クロマニョン人とわれわれ日本人、わたしもあなたも、出アフリカに起源を持つ仲間の人類なのである。だから、ヨーロッパ人にハイ、ブラザー! と堂々と声を掛けていい。中国人にはにっこり笑ってニーハオ! と彼らに負けないぐらいの大声で言い放っていい。

クロマニョン人を知ることは、われわれ自身を知ることに通じるのである。彼らが出現する以前の古代型人類集団と違うところは、ラスコーの壁画に見られるように芸術的な創造力が豊かなことだ。貝殻や動物の歯、象牙を使ったビーズやペンダント、骨や角に刻まれた紋様、動物の骨から針を作ることによる裁縫技術、石や角を加工して作った多様な狩猟具などを生み出した。しかも、その狩猟具に装飾として馬の絵を刻み込んだりしている! まさに表現としての芸術を誕生させたとも言える。彼らは頭の骨の形やDNAもわれわれと同じホモ・サピエンスに属している。というのが現代の定説となっているという。クロマニョン人が壁画を描いたころと同じ時期の日本列島やアジア各地域では、彼らほどの芸術的な活動の痕跡が見つからないのはなぜなのか。この疑問への海部センター長の答えはこうである。日本の風土は酸性の傾向があるため、遺跡に骨や角、象牙などが残りにくく、発掘で創造的な遺物として見つけることが困難なためだという。分かっていることより、分からないことの方が多い人類史であり考古学の世界である。今後の研究や発見に期待するとして、それでは、そろそろラスコー展に入場してみようじゃないか。


動物の骨などを加工して作ったペンダントやブレスレットを身に付け、毛皮をまとい、狩猟具を手にしたクロマニョン人の年配男性。顔付きは頭骨から復元したものだ。気難しそうだが、ハイ、ブラザー、お久しぶり! 勇気を出して声を掛け、駆け寄ってハグしてみよう。その前に言葉が通じるかが心配だが。





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