先負 つちのえ ね 七赤 元日
大晦日から新年への変わり目に除夜の鐘を遠くに聞きながら床に入る。
ああ、あのお寺の住職は女性だったなあ。
そう思いながら鐘の音に聞き入る。
住職が突いているのだろうか。それとも檀家ら地域住民なのだろうか。
そのうちまどろんだ。
何か夢を見ていた。未明に1度ぼんやりとしながら目覚めた。
その時は夢の内容をはっきり覚えていた。知り合いが何人か出て来ていた。
再び寝入る。2度寝である。目覚めたら夢の内容がすっ飛んでいた。
夢の喪失である。思いだそうとしても思いだせない。諦める。
室内を明るく強い日差しが照らしていた。
レースのカーテン越しの光だった。あまりの明るさに晴天であることが分かった。
初日の出はとっくに過ぎた時間だった。カーテンをちらりと開けて外を見る。
絵のように、あるいは嘘のように晴れた天気と風景が広がっていた。
初手洗い、初洗顔、初白湯呑み、初窓開け、初廊下歩き。
すべてに初が付く日となる。
初朝の散歩に出る。初春という言葉がぴったりの日和。
目に入る、あらゆる物が朝の光に照らされて輝いている。生き生きとしている。
今、ここに在ることの謳歌が聞こえる。
コーギーのブリーダーの家の前を通る。
フェンスに囲まれた庭にいた6匹のコーギーがわたしの姿を見つけて視線を集中させる。
12の瞳に対して唇でチュッという音を出して投げキスを返す。
きょとんとして見つめたり、ワンという声をあげたり、遊ぼうよという顔付きなど個性ありあり。
散歩道の途中にある毘沙門堂と7体の道祖神、大楠と大銀杏が互いに寄り添う夫婦巨木にそれぞれ合掌して日々之好日に謝意の思いを表す。
蜜柑園でたわわに実っていた蜜柑は出荷のために全て取り入れされて、葉だけが生い茂るようにして濃い緑の風景を創り出していた。
農家の広い庭先でたくさんの子供たちがバドミントンに興じていた。正月で親戚の子どもたちが参集したのだろう。トン、トン、トンのバドミントン! 言葉遊びしながら歓声を上げていた。
いろんな野良猫が通い婚をして次々に子猫が誕生する民家の前を通る。親猫や子猫10数匹が春の日差しを思わせる陽気に寝転んだり、日向ぼっこをしてくつろいでいた。
わたしに雄叫びの声を上げる柴犬パチ公も飼い主に散歩に連れられたのか、犬小屋がある倉庫には不在だった。その代わり、倉庫の前で男女の子どもたち3人が大き目のビーチボールを蹴ってサッカーをしていた。
子どもたちが、元日にのどかに遊んでいる光景に触れて思う。
いい時間だ。正月に遊んで過ごした子ども時代が蘇る。
凧揚げ、独楽回し、羽子板からバドミントンにサッカーと内容は変遷したが、遊びを愉しむ心情は不変だ。
犬は尻尾をふりふり飼い主と散歩をし、猫は毛づくろいに精を出す。庭先には子どもたちの声が響く。
いい日和で、いい年の明けだ。戻れば食卓にはおせち料理と雑煮が待っている。皿や箸など配膳の役目がある。家主としての年頭挨拶、いただきますの唱和、屠蘇代わりの赤ワインでの乾杯、ぽんぽんぽんと手料理に舌鼓、「遊べ! 食べろ! ガールフレンドをつくれ!」と表に大書したお年玉の配布など、男のやるべきことは新年早々、多種多彩なのである。
大晦日から新年への変わり目に除夜の鐘を遠くに聞きながら床に入る。
ああ、あのお寺の住職は女性だったなあ。
そう思いながら鐘の音に聞き入る。
住職が突いているのだろうか。それとも檀家ら地域住民なのだろうか。
そのうちまどろんだ。
何か夢を見ていた。未明に1度ぼんやりとしながら目覚めた。
その時は夢の内容をはっきり覚えていた。知り合いが何人か出て来ていた。
再び寝入る。2度寝である。目覚めたら夢の内容がすっ飛んでいた。
夢の喪失である。思いだそうとしても思いだせない。諦める。
室内を明るく強い日差しが照らしていた。
レースのカーテン越しの光だった。あまりの明るさに晴天であることが分かった。
初日の出はとっくに過ぎた時間だった。カーテンをちらりと開けて外を見る。
絵のように、あるいは嘘のように晴れた天気と風景が広がっていた。
初手洗い、初洗顔、初白湯呑み、初窓開け、初廊下歩き。
すべてに初が付く日となる。
初朝の散歩に出る。初春という言葉がぴったりの日和。
目に入る、あらゆる物が朝の光に照らされて輝いている。生き生きとしている。
今、ここに在ることの謳歌が聞こえる。
コーギーのブリーダーの家の前を通る。
フェンスに囲まれた庭にいた6匹のコーギーがわたしの姿を見つけて視線を集中させる。
12の瞳に対して唇でチュッという音を出して投げキスを返す。
きょとんとして見つめたり、ワンという声をあげたり、遊ぼうよという顔付きなど個性ありあり。
散歩道の途中にある毘沙門堂と7体の道祖神、大楠と大銀杏が互いに寄り添う夫婦巨木にそれぞれ合掌して日々之好日に謝意の思いを表す。
蜜柑園でたわわに実っていた蜜柑は出荷のために全て取り入れされて、葉だけが生い茂るようにして濃い緑の風景を創り出していた。
農家の広い庭先でたくさんの子供たちがバドミントンに興じていた。正月で親戚の子どもたちが参集したのだろう。トン、トン、トンのバドミントン! 言葉遊びしながら歓声を上げていた。
いろんな野良猫が通い婚をして次々に子猫が誕生する民家の前を通る。親猫や子猫10数匹が春の日差しを思わせる陽気に寝転んだり、日向ぼっこをしてくつろいでいた。
わたしに雄叫びの声を上げる柴犬パチ公も飼い主に散歩に連れられたのか、犬小屋がある倉庫には不在だった。その代わり、倉庫の前で男女の子どもたち3人が大き目のビーチボールを蹴ってサッカーをしていた。
子どもたちが、元日にのどかに遊んでいる光景に触れて思う。
いい時間だ。正月に遊んで過ごした子ども時代が蘇る。
凧揚げ、独楽回し、羽子板からバドミントンにサッカーと内容は変遷したが、遊びを愉しむ心情は不変だ。
犬は尻尾をふりふり飼い主と散歩をし、猫は毛づくろいに精を出す。庭先には子どもたちの声が響く。
いい日和で、いい年の明けだ。戻れば食卓にはおせち料理と雑煮が待っている。皿や箸など配膳の役目がある。家主としての年頭挨拶、いただきますの唱和、屠蘇代わりの赤ワインでの乾杯、ぽんぽんぽんと手料理に舌鼓、「遊べ! 食べろ! ガールフレンドをつくれ!」と表に大書したお年玉の配布など、男のやるべきことは新年早々、多種多彩なのである。