おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

口語訳 猫の哲学 監修 近所の三毛猫 ただし野良

2017-05-05 | Weblog
小さい頃から犬や猫と親しんできた。実際、家庭での愛玩動物の1位と2位を占める犬猫を飼ってきた。長年の観察と思索を継続してきた結果、猫がどんな哲学を持って生きているのかを思い知るに至った。苦節することがまったくない半世紀にわたる学究の成果を書き留めておこう。猫の哲学とはなんぞや? それは猫が何を考えて行動しているか、ということである。では、行動の大本となる精神、理念、大義といったものがあるのだろうか。こうしたことを考えること自体、人間ならではの思考の陥穽にわたしたちははまり込んでしまう。猫の思いを考えてはいけないのである。ただ相対して、目と目を合わせ、笑うことのない顔付きから発せられる声と姿態、すなわち意思と自己表現に傾聴し瞠目するしかない。

猫の哲学、それは4つの意思で創られている。簡にして要を得ている。シンプル・イズ・ベストである。

哲学その1:寝る!

猫の語源とも言われるほど、猫は寝てばかりいる。家猫ならば、朝目覚めて食事、用足し、毛づくろいを済ませ、取り立ててすることがなければ、ごろりと横になるか、安心の姿態とされる箱座り(エジプトのスフィンクスみたいな座り方)して寝入っている。野良猫の場合は日向ぼっこしながらのお寝んね時間となっている。なぜ朝から寝入るのか? 低血糖なのか。そんな猫がいるかもしれないが、実は朝から特にしなくてはいけないことがないからである。学校に行くこともない。会社に出ることもない。テレビやラジオ、インターネットを愉しむこともない。ドライブに行くこともない。図書館で料理の本を借りることもない。もちろん新聞も読まないし、政治、経済、文化の話題など思うこともない。宇宙のことなど関心の外だし、桜が咲いたからって花見だと騒ぐこともない。こうした生活態度から、閑居して寝るのが1番となる。

哲学その2:めし! 

食べるとは、外部からエネルギーを取り入れて生存のための機能を稼働させるための行為である。これは猫も犬も人間も昆虫も、そして多分ガン細胞も同じである。寝てばかりいる猫が目覚めて起きる最大の目的は食べるためである。飼い猫ならば器で食事をする。器が空ならば、主人に向かっておねだりの声を上げるだろう。野良猫の場合は慈悲深い人間の誰かにもらうか(餌は天下の回り物である)、自ら狩りをするしかない。先だって、その狩りの現場を目撃した。わたしの家の庭には複数の猫たちが入れ替わりながら無断で立ち入り、悠然と闊歩して横切って出て行く。居間で読書していた際、野良猫が歩いてくるのがガラス窓越しに見えた。見ていると、猫はツツジの木陰に箱座りしたかと思うと、目を丸くして何やら前方を凝視する姿勢になった。頭を低くして、ほふく前進の態勢に変わった。獲物を狙っている顔付きである。その猫をじっと見つめ観察するわたし。猫がじりじりと平身低頭して進んで行く。何を狙っているのか。猫に気付かれないように居間の中を移動して猫の視線の先を追う。よく分からない。どうも草むらの中に何かいるのだろう。猫はどんどん、にじり寄っていく。そして、草むらの何かが動いたように見えた瞬間、飛びかかった。何かを口にくわえている。猫の後頭部しか見えないが、頭の輪郭から何かがはみ出ている。カエルの足である。もう、そんな季節かあ。呑気に思う間もなく、猫はむしゃむしゃと食べていく。カエルの足が消えた。弱肉強食の世界。獲物を腹に収めた猫はどうするのか。悠然として庭の奥に向かう。たどりついたのは蹲がある場所だった。そこに駆け上がり、中の水を舌ですくい取ってうまそうに呑んでいる。ひと息ついた後は隣家の庭へ移動していった。猫にとっては今日是好日だったようだ。

高度経済成長期の日本の男の帰宅後の台詞、「風呂! めし! 寝る!」というのがあったが、猫は風呂抜きの「めし! 寝る!」である。湿度が高く汗をかきやすい風土ならではの風呂!であるが、猫は汗をかかないので風呂!はなしである。もっとも、それ以前に猫は水に濡れるのが大嫌いなのである。風呂やシャワーは厳禁なのだ。

哲学その3:イイネ!

フェイスブックの世界である。猫が起きているときにやっていることがあったら、それはイイネ!となる。紙袋に頭から突っ込んで入ること。訳もなく廊下を走ったり、2階に続く階段を駆け上がること。美人がやってきたら、でんぐり返って腹を見せて遊んでよ~と猫撫で声を出すこと。まるっきり効き目がない猫パンチ、猫キックを繰り出すこと(パンチとキックをお見舞いされたら相当に効いている振りをすること。近所の人が驚くぐらいの大声を上げて痛がり、これ見よがしに顔を思いっきりしかめるのが良い)。猫じゃらしとじゃれあうのもイイネ!だ。まあ、最大最良のイイネ!は寝ることと、めしなのだがね。

哲学その4:イヤだ!

まさにイイネ!の反対。イイネ!以外は全てイヤだ!なのだ。甲高い声を出す子どもはイヤだ! 猫がそのその気でないときに触られたり、抱っこされるのもイヤだ! マンネリ化した餌のメニューもイヤだ! 動物病院に行くために狭いゲージボックスに入れられるのもイヤだ! 雷もイヤだ! 主人そっちのけでどこかに隠れてしまう。これは天上から得体のしれない獰猛な生き物が唸り声を上げていて恐怖におののくらしい。

猫は自らの末期のときをどう思っているのだろうか。まずイイネ!はない。では、イヤだ!だろうか。大方、人間だったら生きたい!と思って延命治療を望んだり、闘病に励むのだろう。果たして猫は? それは従容として受け入れる。最後のひと息を吐き出して、この世から静かに去っていく。

猫の哲学の奥義はほんの4つ。寝る! めし! イイネ! イヤだ! これが猫の生きざま、行動原理の全てである。これで猫の全ての姿態や鳴き声を理解できるだろう。

監修した近所の野良の三毛猫:当たらずとも遠からずだな。ほんとは、そんなに単純じゃないんだがね。 




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