おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

秋上がり ひやおろし

2016-09-30 | Weblog
日暮れが早くなって、夜がすとんと街を包み込む。

お寺が幾つもある界隈の通りに、その店はあった。

看板は控えめで、見過ごして通り過ぎるぐらいに目立たない店構えだ。

扉を開けると、左手に座敷、右手にカウンター席が広がっていた。 

地酒と地のものの魚介を使った料理を夫婦で出す。

先客1人が座敷にいた。わたしを呑みに誘った男だ。

よう、1年ぶり! 元気そうだね。互いに声を掛け合った。

2人で座敷に座って雑談をしていると、きれいどころ2人が店に入って来た。

顔を見合わせた途端、互いに今宵の呑み会の参加者だと直感しあう。

遅れて来ることになる男が声を掛けた女性たちだった。

男2人と女2人は初対面とは思えないように打ち解け笑顔を見せておしゃべりを始めた。

遅れて来る男を後回しにして、わたしたちは早々と乾杯をし、グラスビールを仰ぐ。

女の1人は美容クリニックの受付をし、もう1人は医師のカルテ作成の補助をしていると自己紹介した。

2人の女性を誘った男は知り合いの医者だった。当人は両手に花で入店する予定だったが、好事魔多し、思惑通りに行かないのがこの世のならいというものだ。花束だけがわたしたちの座敷に早々と届くことになった次第。

結構盛り上がっている頃合いに医者がやって来た。たくさんのおしゃべりと笑い声で和んだ雰囲気に嫌でも気付いたはずだ。愉快がいっぱいの空間が出来上がっていた。

座敷の卓には枡の中に入ったグラスに常温の清酒が注がれている。溢れた清酒が枡の中に溜まっている。呑み心地の良さに引き込まれて、男も女も何杯も所望する。

透明で艶があり、まろやかな命の水が臓腑に滲みていく。肴は世の中の表と裏の話だ。

カルテ作成補助の女性はオールディーズの歌い手として舞台にかつて立ったことがあった。上京して歌の世界に挑戦したという経験の持ち主だった。テレビ局のリポーターをやっていたことから、初対面のわたしたちとも旧交を温めるかのように接することができた。

ほろ酔っているような、ほろ酔っていないような中でおしゃべりの群れが座敷で行き交う。

忍びよる秋と、朗らかな女たち、そして旨い清酒。

話題は尽きず、愉快な時はあっという間に流れていく。

1次会で終わったかって? 

終わるはずがないさ。

2次会で喉に覚えありのオールディーズを聴かなくっちゃ。

いや、ともに歌うのさ。














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