平方録

身辺をつれずれに

「奇跡のリンゴ」にゃ比べるべくもありませんが…

2017-04-19 06:34:19 | 随筆
バラを無農薬で育てることの難しさを昨日書いたのだが、フト思い出したことがある。
バラと同じように肥料をたくさん食い、病害虫から木を守るのに農薬を大量に使うのが常識とされるリンゴ栽培の無農薬・無肥料栽培に成功した津軽のリンゴ農家・木村秋則さんのことである。

と言ったって、会って話をしたわけでもないし、いわんや知り合いでも何でもないのだ。本屋の棚にあった1冊の本を手に取ったのが木村秋則という人を知ったきっかけである。
その本の表紙には「奇跡のリンゴ」と表題が書かれ、歯の抜けた人のよさそうなおっさんが口を開けて笑っている写真が添えられていた。
2008年に幻冬舎から出版された本で、幻冬舎文庫にも収録されている。

著者はNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」のプロデューサーで、テレビで紹介した後に、一部始終を書き下ろしたもののようである。
残念ながらこの時代は忙しくてテレビを見る暇などなかったから、放映された番組は見ていないが、本を読んで涙がこぼれ、得体のしれない感動に包まれたものである。
当時はその感動が忘れられなくて、というか、もっとこの木村秋則という人のことを知りたくて、この人を扱った本を4、5冊も買って読みあさったほどである。
退職時にあらかたの本は古本屋に売ったり捨てたりしたが、この「奇跡のリンゴ」と関連本はいまだに書棚に収まっているのである。

木村さんは高校を卒業した後、集団就職で川崎のメーカーで働くが1年半で辞めて故郷に戻る。
そこでリンゴ農家の婿養子になりリンゴ栽培を始めるのだが、散布農薬を浴びて目元や皮膚の一部が炎症を起こしたり、奥さんに至っては寝込んでしまうひどさを見かねて一念発起したのが、無農薬栽培に挑むそもそものきっかけである。

言うは易く行うは難し、という言葉はリンゴの無農薬栽培を指した言葉と置き換えてもいいくらいで、その実現への道のりは困難を極める。
11年目にようやく成功するのだが、その間はリンゴ畑に寝転んでじっと害虫の動きを一日中観察してみたり、何かヒントはないかとさまざまな観察に没頭するのである。当然、無収入時代が続く。周囲からは変人奇人扱いされ、迷惑がられても初志を貫こうとする。
周囲からは「かまど消し」と揶揄される。かまどは竈のことで、竈の火が消えてしまったら飯も食えないのだから、その家はつぶれるしかないのだ。

いつまでたっても結果が出ない状況に絶望し、死んでお詫びを、とある夜、岩木山麓の森に入り込んで首を吊ろうとしたが、枝が折れて命拾いし、闇の中で目を凝らすと頭上一杯に葉を茂らせた大きな木を見た途端、ひらめくものがあった。
それはドングリの木で、農薬を使うわけでもなく、肥料を与えるわけでもないのに山奥で生き生きと葉を茂らせ、実をつけている自然の不思議さに、雷に打たれたような衝撃を感じるのである。
どんぐりが生えている山の中の環境と同じようにすれば、きっとうまくいくはずだ。

長々書いてしまったが、事実はもっと複雑で濃密である。言いたかったのは、ボクの家のバラの無農薬栽培の取り組みなど、まだまだチョロイものだということである。
幾つかの花芽がかじられるとはいえ、無農薬に初挑戦した去年は立派に咲いたのである。
木村さんの木には一粒のリンゴも実らない時期が10年も続いたのだ。
今ボクがあきらめてしまうんではいかにも情けない。気が滅入っても、心が折れそうになっても、頑張ってみようという思いで、昨日、本棚から木村さんの本を引っ張り出してきて読み返しているところなのだ。

とどのつまりは修行が足らないってことですな。ヤレヤレだけれど、頑張ろっ、と。



岩の割れ目のろくに水分もないところでも花を咲かせるカタバミのように、自然界は思っているよりしぶとい気がする


15日の土曜日に蒔いたブロッコリースプラウトの発芽は順調なようである

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