平方録

身辺をつれずれに

太平洋経由芦ノ湖行きポンポン船

2016-12-28 06:54:25 | 随筆
まるでごみ溜めのようになっていた机の上をきれいに片付けたり、書斎を大掃除していたらローソクで走らせる昔懐かしいブリキのポンポン船が出て来た。

浅草で見つけ、ただただ懐かしくて買って来たものの、本棚の一角に数年間放置したままだったのだ。
小学生の時に遊んだ記憶があるが、もう60年も前のことになってしまった。
ロングロングアゴーなのだ。

で、こういう時はちょっと以前だったら大掃除をほったらかして、すぐに遊び始めたものだが、風呂に入る時に持って行って走らせてみようという気になったのだ。
だから、大掃除の手が止まることもなく、書斎はきれいに片付いたのである。
おまけに机の上に上って、天井のレールに取り付けられた3連のライトの掃除までやってしまった。ライトの位置や首振りの角度を自由に調節できる仕組みのスポットライト風のものである。

ただ、やり方が悪かったと見えて、何と3つとも電球が切れてしまった。
もっとも、かれこれ20年近くもいじったこともないし、電球を替えた記憶もない。振動でフィラメントが切れてしまったのではないかと思っている。したがって死亡原因は老衰と思われるのだ。
ともあれ、一斉に討ち死にされてしまっては、いささか当惑せざるをえない。
書斎は北西の隅にあって、西側の窓に触れるようにナンキンハゼの葉が生い茂ってくれるので夏は涼しくてとても快適なのだが、暖房がないので冬は最悪である。

60ワットのクリプトン球3つである。都合よく買い置きなどないのだ。しかも、書斎の大掃除の前にリビングの食卓の上の電灯の傘を掃除したついでに、間も無くやってくる姫のために電球を新しいものに交換したばかりである。
その使い古しを配置転換し、1個だけ残っていた新品とで急場をしのいだが、如何せんせん暗いのだ。照度を変えられる仕組みが付いているのだが、最大にしても暗いのである。
ま、冬場は寒いし、暗くなって書斎にこもるなどということはあり得ないので、暗いお古でも我慢することにしたが、余計なことをしてしまったのかもしれない。

さて、風呂である。ポンポン船である。
60年前は洗面器に浮かべて遊んだような記憶がかすかに残っているが、今回は太平洋に浮かべるようなものである。
大いに疾駆してくれる…、波を蹴立てて…。そう期待したのである。
ストローで中のたらいに水を送り、ろうそくに火をつければというところで、濡れないようにと風呂場のドアの外に置いておいたライターを手にとって、身体を湯船に沈め、いざ点火、のはずだったのだが…
ポチャン! 何とライターを湯の中に落っことしてしまった。まさか、ライター君も一風呂浴びたかったとは⁉︎

掌中の珠を愛でようとしたまさにその矢先、両手に持った珠がスルリと逃げて行く。その瞬間の驚き。続いて湧き上がってくる悔しさ、悲しさ、絶望感…。そして虚しさ…。ボクの人生ってこういうんだったんだ…

当然だが火はつかない。妻は買い物に出かけてしまって留守である。代わりのライターを持って来てもらうこともできない。
湯船から出て裸のまま取りに行くなんぞの選択肢は、寒くてまっぴらごめんである。
仕方なく風呂から上がった後、洗面所のシンクに水を張って浮かべたのだ。
これじゃあまるで太平洋経由芦ノ湖行きである。

何ともドジでさえない結果になってしまったが、ポンポン船の方は威勢よく、しかしポンポンという音ではなく、蒸気がたぎるシュシュッという音を立てて健気にグルグル走り回ってくれたのである。





芦ノ湖を行くポンポン船
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