第2に漫画との比較である。「時生とドラえもんの共通点」など漫画との比較が多い。ここには謎本が漫画研究から出発したことの影響が感じられる。
特に参考文献に『ドラえもん』1〜45巻が挙げられているように、藤子・F・不二雄作品には詳しい。のび太の不幸な運命を変えるためにドラえもんが未来から来たという説明を歴史改変のパラドックスの観点から「納得できかねる話」とする(118ページ)。同じ出版社の世田谷ドラえもん研究会『ドラえもんの秘密』と同じ主張になっている点が興味深い。
第3に文章表現である。本書は「であるが……」「だろうか?」など断定を避ける文章の終わり方が圧倒的に多い。これは一般の論文では避けなければならない表現だが、謎本では有益である。謎本では作品の矛盾点の指摘や著者の独自の解釈が盛り込まれる。それは謎本の読者である作品ファンからは重箱の隅をつつく行為や牽強付会に受け止められ、反発される危険がある。このため、本書が結論を押し付けるような書き方をしていない点は好感が持てる。(林田力)
http://www.book.janjan.jp/0910/0910252198/1.php
http://tokyufubai.jugem.jp/?eid=1067
http://hayariki.seesaa.net/article/131903544.html
本書の研究の白眉は「『白夜行』と『幻夜』超考察」である。『幻夜』は『白夜行』の続編なのか、両作品の主人公・雪穂と美冬は同一人物なのかという謎に迫る。私には理屈以前に続編であって欲しいという願望がある。『白夜行』の雪穂と亮司には同じ痛みを知る者同士の心が通じ合うものがあった。これに対して『幻夜』は欲望を追及する美冬と、それに振り回され続けた雅也の悲劇ばかりで読後感が悪い。続編であれば雪穂の過去と重ね合わせることで、少しは美冬に感情移入できるような気がする。
これに対して、本書はトラウマを否定した美冬の言葉を重視する(195ページ)。美冬は「幼い時に傷つくことがあって、それが私を操っているというわけ?そんな安っぽいストーリーは勘弁してちょうだい」と言う。その上で本書は『白夜行』がトラウマというキーワードで論じられることは東野氏にとって不本意であると指摘する。
雪穂と美冬が同一人物であるとすれば、美冬という人間を理解しやすくなる。しかし、そのような安直な理解を東野氏は意図していない可能性を本書から気付かされた。『白夜行』の先入観なしで、『幻夜』を読んでみたくなった。(林田力)
http://www.book.janjan.jp/0910/0910252198/1.php
http://tokyufubai.blog28.fc2.com/blog-entry-926.html
http://hayariki.seesaa.net/article/131953033.html
特に参考文献に『ドラえもん』1〜45巻が挙げられているように、藤子・F・不二雄作品には詳しい。のび太の不幸な運命を変えるためにドラえもんが未来から来たという説明を歴史改変のパラドックスの観点から「納得できかねる話」とする(118ページ)。同じ出版社の世田谷ドラえもん研究会『ドラえもんの秘密』と同じ主張になっている点が興味深い。
第3に文章表現である。本書は「であるが……」「だろうか?」など断定を避ける文章の終わり方が圧倒的に多い。これは一般の論文では避けなければならない表現だが、謎本では有益である。謎本では作品の矛盾点の指摘や著者の独自の解釈が盛り込まれる。それは謎本の読者である作品ファンからは重箱の隅をつつく行為や牽強付会に受け止められ、反発される危険がある。このため、本書が結論を押し付けるような書き方をしていない点は好感が持てる。(林田力)
http://www.book.janjan.jp/0910/0910252198/1.php
http://tokyufubai.jugem.jp/?eid=1067
http://hayariki.seesaa.net/article/131903544.html
本書の研究の白眉は「『白夜行』と『幻夜』超考察」である。『幻夜』は『白夜行』の続編なのか、両作品の主人公・雪穂と美冬は同一人物なのかという謎に迫る。私には理屈以前に続編であって欲しいという願望がある。『白夜行』の雪穂と亮司には同じ痛みを知る者同士の心が通じ合うものがあった。これに対して『幻夜』は欲望を追及する美冬と、それに振り回され続けた雅也の悲劇ばかりで読後感が悪い。続編であれば雪穂の過去と重ね合わせることで、少しは美冬に感情移入できるような気がする。
これに対して、本書はトラウマを否定した美冬の言葉を重視する(195ページ)。美冬は「幼い時に傷つくことがあって、それが私を操っているというわけ?そんな安っぽいストーリーは勘弁してちょうだい」と言う。その上で本書は『白夜行』がトラウマというキーワードで論じられることは東野氏にとって不本意であると指摘する。
雪穂と美冬が同一人物であるとすれば、美冬という人間を理解しやすくなる。しかし、そのような安直な理解を東野氏は意図していない可能性を本書から気付かされた。『白夜行』の先入観なしで、『幻夜』を読んでみたくなった。(林田力)
http://www.book.janjan.jp/0910/0910252198/1.php
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