謎の変奏曲 9/23

2017-09-25 00:53:00 | 舞台感想
「謎の変奏曲」 9/23(土)夜の部 at世田谷パブリックシアター


面白かった!こういう緻密に作られた戯曲大好き。

初演のズノルコ役がアラン・ドロンと知って激しく納得。
そうよ、ズノルコが自分にとっての愛を語るあの長台詞にはある種の現役感が大事だよ。
逆に橋爪さんには今までこの手の役のイメージなかったから新鮮だった。
偏屈に振る舞うことで弱点を隠そうとするかわいい男という感じがやっぱりうまい。

まだ公演は続くけど、ストーリーに触れなければ感想も書けないので以下ネタバレします。
(未見の方は読んではいけない。多少のネタバレなら許容って人も今回は絶対に後悔する)

<あらすじ ─公式サイトより─>
 ノルウェー沖の孤島で、一人暮らしをしているノーベル賞作家アベル・ズノルコの許へ、
 地方新聞の記者と名乗るエリック・ラルセンという男がやってくる。
 ズノルコの最新作、恋愛小説「心に秘めた愛」についての取材のためだ。
 ラルセンは、屈折したズノルコに手を焼きながらもインタビューにとりかかる。

 ある男と女の往復書簡に実在のモデルは存在するのか?
 なぜ突然ぷっつりと、この手紙のやりとりは終わってしまったのか?
 記者嫌いのズノルコが特別にラルセンの取材に応じた理由とは?
 ズノルコにとっての愛とは?
 すべてが謎であった。

 まさに白夜が終わり、夜の季節に移り変わろうとするその日の午後、
 こうしたラルセンの意味ありげな質問は続き、二人をめぐる衝撃的な真実が
 次第に明かされていくのであった。


最初に断っておくと、私の感想はあくまで私個人の感想でしかないので。気にしないで。

私は、ラルセンがどういう人物かは、人によってさまざまな捉え方があっていいと思います。
ゲイかもしれない、バイかもしれない、いわゆるジェンダーに縛られないだけかもしれない。
愛するエレーヌを通してズノルコという男に触れて、特別な感情が生まれたのかもしれない。
エレーヌに対して感じた愛情と同じ種類の気持ちをズノルコに対して感じたのかもしれない。
もしくは、最もシンプルに、友情かも。どれもありだなと思う。
森さんがどんな演出をしたのか分からないけど、観客一人一人の受け止め方は自由だし。

個人的には、ラルセンは、おそらくは男性が好きだと思います。
ただ、エレーヌは性別を超えた親友であり、ズノルコは性別を超えた共感が出発点かなと。
エレーヌの「(肉体関係は)なくて大丈夫」という言葉とか、激昂した瞬間の言葉遣いとか、
ラルセンの内面を感じさせる場面はいくつかあったけど、中でも顕著だなと感じたのは
ズノルコが語る15年前のエレーヌとの赤裸々な思い出を聴きながら、ラルセンの顔には
夫なら出すはずの「嫉妬」や「憎悪」がなかった。ただ黙って思い出を共有している表情。
第一幕では、そこが一番ラルセンの真実が出ていた気がする。

ラルセンとエレーヌが夫婦であること、エレーヌが既にいないことは何となく予感がしたけど
ラルセンが10年間も手紙を書いてたという告白には、ズノルコと同じぐらい驚いてみた(笑)
でも、この戯曲の魅力は、謎が明かされたときの驚きのその先に面白さがあるところだと思う。
一つ明かされる度に、それまでのラルセンの言動が蘇って「あ!だからあのとき!」っていう。
どうして愛について質問したのか、どうして書簡を出版した理由をしつこく知りたがったのか。

ラルセンがエレーヌとして出した一通目にはおそらく病気が治ったという嘘が書かれていて、
それに対してズノルコから、そのことを喜ぶ手紙が来たんじゃないかと想像してるんだけど。
手紙をやりとりしている限り“エレーヌ”は生きている。それが心の支えだったのかなって。
次第にラルセン自身がズノルコに惹かれて、エレーヌが“手紙の中のエレーヌ”を生きたように
ラルセンのほうも“エレーヌとして書いている手紙の中の自分”として生きたんじゃないかなと。
だから、出版が「エレーヌを殺した」ことになるのね。

ズノルコから唐突に会いに来てほしいと手紙が来ても、返事ができなくて困ったろうし
ある日突然、二人だけの秘密の手紙が公開されれば、そりゃ慌てて飛んでくるわ(笑)

ズノルコはかなり独善的な愛に生きてる。
体は一つになれても心は二つのままだということに勝手に絶望して、文通の世界に逃げた。
でも、そんな彼が自分の病気をきっかけにエレーヌの温もりに縋ろうとする姿は人間的で
ラルセンも彼のそういう弱さに安心したのかもしれない。

エレーヌという女性を挟んで二人の男が生きている、という図式。まさにそういう立ち位置。
ここまでくると、ズノルコを溺れさせ、ラルセンを魅了した、エレーヌという女性がすごい。
どんな女性だったんだろう。

「脅しといてやるか」という意味の1回目の銃声、「まだ帰るな」という意味の2回目の銃声、
そして「戻ってこい」という意味の3回目の銃声。
最後の銃声から数秒後の、大きな足音とあの嬉しそうな顔!(笑)

芳雄氏のラルセンは仔犬のような印象。
普通、ミステリーにおいて切り札を相手より多く持っている側は、もっと得体の知れない
不気味さがあるものだろうけど(実際、演出によってラルセンをそう描くこともできそう)
芳雄氏がやると、どことなく親しみが先行するというか。
第二幕で完全に主導権を握っているのに、ズノルコに対して優しさをもって接してる。
さらに、実は音楽教師でしたっていう部分に何の違和感もないっていうのがまた・・・
記者にも見えて、かつ音楽教師としての説得力もある。こういう人材はなかなかいないよ。

ラストの台詞「あとで手紙に書くよ」にはやられた!!あれには参った!!
暗転と同時にわっと拍手したくなる気持ちよさ。

橋爪さんのズノルコがまた、いかにもああいう言葉を言いそうなんだよ。
それは2時間半、ワンシチュエーションで作り上げた橋爪ズノルコの会心の一撃だと思う。

あのあと二人がどうなったかは分からない。
ひとまずお墓参りぐらいは行ったかも。
一緒に暮らしたりはしなさそうだけど、少なくとも手紙のやりとりは再開したかもしれない。

ラルセンが味わった“愛する人を生きたまま失う”悲しみを、再び味わってほしくはないなあ。
ズノルコの癌が消えたままなことを祈りたい。

ウェルメイド。ほんとに。


【キャスト】
アベル・ズノルコ:橋爪 功
エリック・ラルセン:井上芳雄

【スタッフ】
作:エリック=エマニュエル・シュミット
演出:森 新太郎
翻訳:岩切正一郎
美術:伊藤雅子
照明:佐藤 啓
音響:藤田赤目
衣裳:ゴウダアツコ
ヘアメイク:宮内宏明
演出助手:城田美樹
舞台監督:村田旬作
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ビリー・エリオット 9/18

2017-09-22 01:10:52 | 舞台感想
ミュージカル「ビリー・エリオット」 9/18(祝)夜の部 at赤坂ACTシアター


空席があるなんてもったいない・・・こんなに良い作品なのに。

開演時間とかチケット価格とか、主催マターでは解決できない部分が多いんだろうけど
時間かけてお稽古して、劇団でもないのに長い公演期間を実現させているという意味でも
エポックメイキングな舞台であることは間違いないと思います。

ただ、親子で来る観客を想定している割に、冒頭の映像の字幕は子どもには難しかったり、
イギリスなら笑いが起きても日本ではピンと来ないだろうなーなセリフが多かったり。。。
この作品を日本に持ってきてくれて感謝しかないけど、多少のズレは否めないというか。

日本版を上演するときに、日本側の意見がどれだけ通るかでだいぶ違うのかもしれない。
スタッフが本国から来ている場合には、その人たちの“考え方”も影響しそうだし。
同じ海外の演出家でもデヴィッド・ルヴォーさんやトム・サザーランドさんみたいに
日本で上演するならこうしようかなという視点があれば全然変わってくるんだろうなあ。

いや、舞台自体は感動しましたけどね。ほんとに。素晴らしかった。

初めて観た前田ビリー。
見た目がきれいな上にバレエもアクロバットもできるなんて、将来が楽しみすぎる。
間の取り方や鍵になるセリフの言い方なんかはもうちょっとかなと思う部分もあるけど
父親や兄とのやりとりが自然で、きちんと“家族”として見せてくれるのがいいなと。

そして、目立つ役ではないものの、トールボーイの笹川くんも自然体でよかったです。

大人チームは前回と同じメンバー。歌穂さんのウィルキンソン先生、やっぱり好きだわ。
熱い鋼太郎パパも、熱い藤岡トニーも、キュートな季衣おばあちゃんも、みんな好き。
(実は益岡パパも観たかったんだけど、抽選で当たったのが鋼太郎さんの回だったから)
アンサンブルは少し疲れが見えている人もいるかな。当たり前か。シングル連投だもん。

この日は棚ぼたでアフタートークもついてて。
鋼太郎さんと歌穂さんの回だったので、すごく楽しみに終演後座ってたんですけども。
司会のTBSのアナウンサーさんが・・・どうにも・・・

アフタートークって役者さんの本番後の妙なテンションを眺めるのが楽しいんであって
司会が無理に感動しました!感動しました!っていう空気を作る必要はないと思うの。
感動はしてるし、あなたの気持ちは分かったから、二人に自由に話させてあげて?ってね。
オーディションやお稽古の様子、公演回数が80を超えました!な話題も別にいいんだけど
鋼太郎さんがお気に入りの場面として、ビリーが「先生にも幸運を」と言う場面を挙げて、
先生にはこの先いいことなんて待ってないのに、そういうセリフがあるのが好きだって(笑)
それに対して歌穂さんが、もしかしてビリーはそのことを薄々感じているんじゃないか、
さらに鋼太郎さんが、いやいや、あれは無意識で言ってるね、みたいなやりとりがあって。
アフタートークで聴きたいのってこういう話なんだよー。
そしたら無情にも“お時間なのでこの辺で”になっちゃって・・・
鋼太郎さんと歌穂さんの芝居トーク、もっと突っ込んだ話を聴きたかった・・・

ちなみに歌穂さんのお気に入りは、ラストにビリーが一人きりで佇んでいるところだそう。
袖から見ながら、各ビリーの成長ぶりに涙が出そうになるんですって。優しいエピソード。

鋼太郎さん曰く“俺は宣伝マンじゃないから、また来てくださいとかは言わないけど
ミュージカル嫌いを公言する俺が本当に素晴らしいと思ってやってます。
だから、よかったら、また”とのこと(笑)

うん、本当のロングランだったら、きっともう何回か観に行ってたと思う。

ホリプロはこのあとにメリー・ポピンズが控えてる。
新作の買い付けに関しては、四季、東宝、梅芸、ホリの四強時代ってことでしょうかね。
いつか日本オリジナルの作品を輸出する時代が来たら、どこが主導権を握ってるのかな。
そんな時代が来るのか知らないけど。。。


【キャスト】
ビリー:前田晴翔
お父さん:吉田鋼太郎
ウィルキンソン先生:島田歌穂
おばあちゃん:根岸季衣
トニー:藤岡正明

ジョージ:小林正寛
オールダー・ビリー:栗山 廉

森山大輔/家塚敦子/大塚たかし/加賀谷真聡/北村 毅
佐々木 誠/高橋卓士/辰巳智秋/橋本好弘/羽鳥翔太
原 慎一郎/丸山泰右/横沢健司/木村晶子/小島亜莉沙
竹内晶美/三木麻衣子/秋山綾香/井上花菜/出口稚子

マイケル:持田唯颯
デビー:香好
トールボーイ:笹川幹太
スモールボーイ:桜井 宙
バレエガールズ:小野 梓/久保井まい子/近貞月乃/並木月渚/堀越友里愛
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したコメ 前夜祭

2017-09-19 00:05:20 | 映画感想
下町コメディー映画祭2017 シネマ歌舞伎「め組の喧嘩」 at浅草公会堂


平成中村座をシネマ歌舞伎にしたものを浅草で観る?しかも「め組の喧嘩」?面白そう!
もはや勢いだけで行って参りました。したコメ2017前夜祭。

先に貼っときますね。
この上映を記念して心意気で御神輿を出しちゃった浅草の青年会。総勢100名(笑)

御神輿を出すために平日の夜に100名集まるってどんだけ(笑)
上映後のトークショーで
いとうせいこうさん「いま表で御神輿を出してくれてるらしくて」
中村勘九郎さん「浅草の人ってバカですねーwwww」
観光連盟会長・冨士さん「浅草の人間ってバカなんです(余裕」

浅草の御神輿は3種類?あるらしくて、そのうちの一つである仲見世商店街の御神輿は
正面に風神雷神、後ろに仁王像、てっぺんには浅草寺の観音様をお守りする雉が飾られて
仲見世そのものをイメージした造りになっているのが特徴なんだそう。おしゃれ。

映画も面白かったー!

勘三郎さんの辰五郎がかっこよすぎて2時間弱あっという間でした。
梅玉さんの喜三郎、扇雀さんのお仲、勘九郎さんの藤松に錦之助さんの亀右衛門もよかった。
又八くんは誰だったんだろう。かわいすぎる!座る度に着物の裾をまくり上げるのは反則だ!
あと、敵役・四ツ車の芝翫さん(当時は橋之助さん)も着ぐるみ力士なのにかっこよくてね。
私あれだな。どうやら芝翫さんのことも好きなんだな。12月の京都、行くしかないやつだな。

トークでも笑い話として出てたけど、力士陣は正直、力士というにはご高齢な面々で(笑)
ギリギリ芝翫さんと亀蔵さんでもってるようなところはあるんだけど、まあまあ、そこは。
かなり体力勝負な動きを見せなきゃいけないから、そりゃ若い役者は鳶の役に回るよね。
纏を持ったまま足だけで梯子を登るの凄くない?勘九郎さんは運動神経の実写化なのかな?

平成中村座でめ組を出した経緯とか、細かいトークの内容はこちらで。

ただ、私なんかはとにかくこの作品を映像で観られることに感謝しかないんですけど、
ラストの演出には賛否両論だったみたいで・・・そういうものなんですかね。
確かにエンドクレジットでは会場中がすすり泣きでしたけども。。。
幸せな笑顔が見られて、個人的には涙の中に温かさを感じる、そんな終わり方でした。

まるで中村座の中にいるみたいに大向うや拍手が沸き起こる熱い会場。
映画館でもそんなふうに見られるといいなあ。全国公開は11月だそうです。

「いいんだな?───やっつけろ!!」

気持ちいいよね。この喧嘩、スカッとする。

公式サイト
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お誕生日ありがとうございました

2017-09-13 23:02:06 | だって私は涼風真世が好き
9月11日は涼風真世様のお誕生日

早速プレゼントが届きましたありがとうございます。 ※逆だろってね

LBのチケットが到着
予想もしなかった子役の加入という新情報に驚きつつ、再演の変更点が気になる日々。

そして、次なる作品「マディソン郡の橋」のPVおよびスチール撮影が本日行われたそうで。

え、PV? (゜∀゜*

出演者さんがSNSにアップした外観をもとに特定班出動。

撮影場所のハウススタジオはこちらのようです。→maison de blanc〔メゾン・ド・ブラン〕

信濃町にこんなかわいらしい一角があったんだ。

フランチェスカの家をイメージしたPVになるんですかね♪

公開が楽しみ楽しみ。
Comments (2)
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文楽 玉藻前曦袂 9/5

2017-09-11 01:27:30 | 舞台感想
文楽公演「玉藻前曦袂」 9/5(火) at国立劇場小劇場


観に行ってよかった!人形浄瑠璃というものを心から楽しみました。

前回別の作品を観たときは、人形がセリフを言ったらいいのになあと思ってたのね。※それ歌舞伎
でも今回、太夫の語りと演奏を間近に聴きながら人形の表情を観てたら、すごく面白かったのです。
席位置もよかったんだと思う。ありがとう朝焼けさん。

桐竹勘十郎さんがすごすぎた・・・
玉藻前と狐の面が変わると動きそのものが変わるし、ラストの七化けが本当に鮮やか。
狐の人形(金色ピカピカ+尾がかわいい)や面のからくりみたいな外連味もポイントではあるけど
やっぱり人形遣いと浄瑠璃の力のぶつかり合いが文楽の醍醐味なんだわと改めて。

全五段のうち三段目からの上演だったので、前半のクライマックスは「道春館の段」。
もうさ、出てくる女性がみんな不幸でさ。(初花ちゃんも次の段で狐に喰われちゃうし)
姉か妹、どちらの首を打つか双六で決めさせましょう。
白装束で覚悟を決めた姉妹が互いに相手を勝たせようとする───ってこの脚本マジか。
まあね、現代では考えられない展開が歌舞伎や文楽の楽しさですから。いいんですけど。
金藤次が娘の首に語りかける場面の太夫さんの熱演が凄まじくて傘が必要なぐらいでした。

四段目、いよいよ妖狐登場。最初(プクプクしたぬいぐるみだな)と思ってすみません。
姫⇔狐の面の早替えがすごい。どういう仕組みなんだろう・・・

五段目はちょっとコミカル、からの亀菊ちゃん斬殺。←女性の不幸が止まらない
妖狐まさかのフライング。

そして、待ってましたの化粧殺生石。
本来はフィナーレの総踊りみたいな位置づけなんですかね。石にされた狐の霊が楽しそうの図。
開演前に筋書を読んだら、勘十郎さんのお話として“ここは楽しんで見てほしい”とあったので
純粋に七化けの妙技を楽しませていただきました。汗だくの勘十郎さんに、大熱演の咲甫太夫。
まるで人形が生きてるみたいだった。月並みな感想だけど、本当にそんな感じなの。

最後は玉藻前の拵えに狐の面で決まって、客席は大拍手!
何でカテコやらないの?ぐらいの興奮に包まれてました。

16時開演で終わったのが21時過ぎ。座ってるだけなのに結構ぐったり。
だけど勘十郎さんは昼は別の出し物もされてるんだよね。舞台人の体力って異次元・・・

全日程完売も納得。

化粧殺生石は東京では43年ぶりの上演だったそうで!貴重な体験ができました。

公演特設ページ

【出演者】
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秀山祭 九月大歌舞伎 9/2

2017-09-11 00:02:22 | 舞台感想
「秀山祭 九月大歌舞伎」 9/2(土)夜の部 at歌舞伎座


前夜に急遽思い立ってもチケットが取れるシステムが本当にありがたい。
吉右衛門さんの樋口を観にお出かけしてきました。

納涼もよかったけど、古典をベテランで観ると「あー歌舞伎に来たぜー」ってなる体質。

歌六さんの権四郎から目が離せなかった。
樋口の素性を知って自分も侍の父だからと、槌松の遺品を捨てようとするところとか
樋口に止められて涙を流すところとか、権四郎の人としての深さが伝わってきてじーん。。。
樋口の思いを汲んで“槌松”の助命をした権四郎、事情を察しつつも見逃してくれる重忠、
二人に感謝して縄につく樋口、駒若丸との別れの場面でホロッときちゃいましたよね。
「ひーぐーちー、さーらーばー」の高い声が切ない。(この役、和史くんで観たかった)

中盤のお筆、およし、権四郎の場面は、もう一つこちらの心が追いつかず。
3階の後ろのほうで観ちゃったからかな・・・もっと芝居に入り込みたかった。

やっしっしー、しし やっしっしーは遠見の演出。樋口ちっちゃくなっちゃった!
遠近法をどんと舞台に載せる大胆さも歌舞伎の魅力ですよね。これ考えた人すごいな。
歴代のミニ樋口&船頭はいろんな方が務めたみたいだけど、今回は児童劇団のお子たち?
次に行ったとき筋書買ってこよーっと。

そして、ともかくも、吉右衛門さんがかっこいいのでした。はー、昼の部も楽しみ。

で、二幕目が歌舞伎座では初めて掛かる「再桜遇清水」。

これ・・・もう・・・すごかった(笑)

松貫四さんの中の人の発想が素晴らしくワンダーランド!

全方位的な萌えが散りばめられてて、私の心の声はほぼ全編で「ウヒョー」でした。←
萌えというか、もはや興奮材料ですよね。
でもさ、それを書くと私は変態ですって言ってるようなものだからさ。まあ書くけど。

単語で並べると、美坊主、姫と美男子、口移し、破戒、お小姓、衆道、帯解き、怨霊。
これがまるっと入っている奇特な作品、それが「再桜遇清水」です。

正直、あらすじはもっと整理できると思うし(特に前半ちょっと緩慢な印象なので)
清玄(せいげん)さんをそこまでいじめる!?っていう部分が気になりはするものの、
新作として普通に面白かったし、染五郞さんの化粧も含めた早替わりはびっくりだし、
清廉なお坊さんが破戒僧→怨霊になるまで堕ちる話って楽しいよね。

衆道を嘆くお小姓たちとか桜姫への口移しとか、私ニヤニヤしてたと思う。※危険客
まさか自分がこんな中学生みたいな反応をいまだにするなんて軽くショック(笑)

私は劇場には一人で行く派ですが、この作品は終演後に誰かと話したかった。
できれば変態度が同じぐらいの人と「あーそれ分かる!大会」したかった。

清玄(せいげん)の染五郞さん、桜姫の雀右衛門さん、清玄(きよはる)の錦之助さん、
気の毒なお小姓さんたちもよかったです。
欲を言えば、悪役と、意外と罪深い山路が、冒頭でもう少し話を盛り上げてくれると
そのあとの展開もすーっといくんではないのかなと思ったり。
あと、薄縁のコケコッコパワーは、イヤホンガイド無しでは絶対に分からなかったと思う。
そこは今後の個人的な課題かなと。ああいうのをセリフだけで理解できるようになりたい。

逆櫓と再桜遇清水。
こんな組み合わせがあっていいのか。

今月は昼の部だけのつもりが・・・ふと思い立った自分を褒めたい。

古典と新作。吉右衛門さんの才能にひれ伏す秀山祭。


【配役】
「ひらかな盛衰記 逆櫓」
船頭松右衛門実は樋口次郎兼光:吉右衛門
漁師権四郎:歌六
お筆:雀右衛門
船頭明神丸富蔵:又五郎
同 灘吉九郎作:錦之助
同 日吉丸又六:松江
松右衛門女房およし:東蔵
畠山重忠:左團次

松貫四・作/中村吉右衛門・監修/戸部和久・補綴
「再桜遇清水 -桜にまよふ破戒清玄-」
清水法師清玄/奴浪平:染五郎
桜姫:雀右衛門
奴磯平:歌昇
奴灘平:種之助
妙寿:米吉
妙喜:児太郎
大藤内成景:吉之丞
石塚団兵衛:橘三郎
按摩多門:宗之助
荏柄平太胤長:桂三
千葉之助清玄:錦之助
山路:魁春
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八月納涼歌舞伎 8/14・26

2017-09-06 07:29:03 | 舞台感想
八月納涼歌舞伎 8/14(月)・26(土) at歌舞伎座


14日に第三部を、26日に第二部・第三部をはしごしてきました。

「桜の森の満開の下」。これがあの───という感慨。
遊眠社は世代的に間に合わなかったし、映像ですら見たことがなかったので。人生初桜の森。

夜長姫と耳男の物語が、なんか、よく分からないんだけど、美しくて切なくて、胸がいっぱい。
よく分からないんですよ。はっきりとは掴めないんだけど、ふたりのラストにはじーんとくる。
よく分からないんですけどね。←

壬申の乱と絡めた膨大な言葉遊びで展開の軸を見失いそうになるのが野田作品だなーという感じ。
大海人皇子の国づくりと鬼のつながりから夜長姫の最期まで止まることなく流れていくので
1回目はひたすら追いつくのに必死でした。息切れしかけてラストにわっと浄化されるというか。
あの感覚は独特。きれいで、悲しかった。

七之助さんは代表作になるよね。残酷で、恐ろしくて、でも常に目で追ってしまう愛らしさ。

サヨナラの挨拶をして それから殺して下さるものよ
  私もサヨナラの挨拶をして 胸を突き刺していただいたのに


この言葉が本当に切なくて。
耳男が再び鬼と会話しながら、ぽつんと座って待つ姿に、なんか、もう、胸が詰まった。

耳男は勘三郎さんが演じてたかもしれない。
だけど、勘九郞さんと七之助さんの兄弟がやることで、耳男と夜長姫が魂の片割れ的に見えて
恐ろしくても憎くても、否応なく惹かれてしまう様が自然。
納涼で兄弟が野田版の新たな代表作を出した。それが本当に特別な巡り合わせに思える。。。

オオアマの染五郞さん、マナコの猿弥さんもよかった!
あと、ハンニャの巳之助さん、エナコ及びヘンナコの芝のぶさんも。
染五郞さんはさすがに鼓が上手だなあ(笑) 壁ドンとか缶蹴りとか、一番笑ったかも。
猿弥さんの運動量がすごい(笑) 新感線に普通にいそう。

ギャグが若干肌寒かったのと、音楽が謎だったけど(何で「私のお父さん」なの?)
シネマ歌舞伎が公開されたら絶対行く!

そして第二部は「修禅寺物語」。
初めての歌舞伎以来20数年ぶりに観たけど・・・面白かった。幕切れがかっこいい。
納涼ならではの座組ですよね。夜叉王は彌十郞さんの普段のイメージとは少し違うけど
死にゆく娘に、顔を写させろ!と言うときの目に鬼が宿る感じでぞくぞくしました。
無駄なものがない作品ですよね。本公演でも観てみたいなあ。

続いて「歌舞伎座捕物帖」。
やじきた第二弾。去年よりも好き。歌舞伎役者と古典って鉄板だわ。
静御前の姿でガンギレする巳之助さんに、85歳で赤姫な竹三郎さん、あとカマキリ(違
義太夫までこなす門之助さんに笑三郎さん。四の切の扮装だとますます尊い隼人さん。
全員なんという全力(笑) 最終的に殺人犯とかどうでもよかったわ。←
猿之助さんの狐忠信もちら見できたし。お得感すごい。

二部と三部を観て思ったのは、若い方々のポテンシャルの高さが素晴らしいなと。
日頃どれだけ感性や技術を磨いているかが納涼ではっきり表れるんだと思うんですよ。
染五郞さんや猿之助さんはこれからどんどん歌舞伎界を引っ張っていくだろうし、
巳之助さんはお父様とはまた違う魅力があるし、児太郎さんはお父様の良い部分を継いでるし
何より勘九郞さんと七之助さんがますます楽しみ。みんな、どこまでいくんだろう。。。

勘三郎さんや三津五郎さんがいたらって、いまだに思うけど。
お二人を好きな気持ちと、若手の方々を応援したい気持ちは、同じところにある。

納涼っていいなと純粋に思える8月でした。

そう、期間限定のおでん茶飯弁当が激うまだったことも併せてご報告しておきます。
また販売してくれないかな。


【配役】
■第二部
初世坂東好太郎三十七回忌/二世坂東吉弥十三回忌 追善狂言
「修禅寺物語」
夜叉王:彌十郎
姉娘桂:猿之助
源頼家:勘九郎
春彦:巳之助
妹娘楓:新悟
下田五郎:萬太郎
金窪兵衛:片岡亀蔵
修禅寺の僧:秀調

「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」
喜多八:猿之助
弥次郎兵衛:染五郎
大道具伊兵衛:勘九郎
女医羽笠:七之助
座元釜桐座衛門:中車
天照大神又は町娘お笑:笑也
瀬之川伊之助:巳之助
中山新五郎:新悟
玩具の左七:廣太郎
芳沢綾人:隼人
女房お蝶:児太郎
舞台番虎吉:虎之介
伊之助妹お園:千之助
伊月梵太郎:金太郎
五代政之助:團子
瀬之川亀松:鶴松
芳沢小歌:弘太郎
瀬之川如燕:寿猿
芳沢菖之助:宗之助
芳沢琴五衛門:錦吾
若竹緑左衛門:笑三郎
同心古原仁三郎:猿弥
同心戸板雅楽之助:片岡亀蔵
鷲鼻少掾:門之助
関為三郎:竹三郎

■第三部
「野田版 桜の森の満開の下」
耳男:勘九郎
オオアマ:染五郎
夜長姫:七之助
早寝姫:梅枝
ハンニャ:巳之助
ビッコの女:児太郎
アナマロ:新悟
山賊:虎之介
山賊:弘太郎
エナコ:芝のぶ
マネマロ:梅花
青名人:吉之丞
マナコ:猿弥
赤名人:片岡亀蔵
エンマ:彌十郎
ヒダの王:扇雀
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シネマ歌舞伎「喜撰/棒しばり」

2017-09-06 00:38:49 | 映画感想
シネマ歌舞伎「喜撰/棒しばり」


社会人になって初めて夏休みというものを申請。おかげで5回行けました(達成感)

もともとは三津五郎さんを偲んでということで2016年に上映されたものだけど、
歌舞伎座が納涼をやってる時期に、このお二人の踊りを観られるのはとても嬉しい。

踊りのことは全く詳しくないんですよ。
詳しくないんだけど、結局は三津五郎さんと勘三郎さんが好きだから二人の踊りも好き。
劇場で観てたときだって、ずっとそんな目線だった気がする。

「棒しばり」はとにかく楽しい!
太郎冠者も次郎冠者も大名も、中の人がみんな楽しそう(笑)
三津五郎さんと勘三郎さんの踊りの技術や表現力が素晴らしいのはもちろんだけど、
彌十郞さんも含めて幼馴染みだからこそ生まれる阿吽の呼吸が観る人を幸せにするんだと思う。
観てる間、顔がニマニマしちゃうんですよね・・・
大名が帰ってきて、いつの間にか3人でニコニコ踊っちゃうところの幸福感たるや。

松竹の社員さんが上映前に作品解説をしてくれるという企画にも参加してきたんですけど
これが結構面白くて。手作り感溢れるパワポ的なスライドが好感度高かった。←
それぞれの作品の初演の話や豆知識、役者さんのエピソードなどなど。

二人の「棒しばり」が面白いのは“技術が伯仲していて、なおかつ個性が異なる”から
という話には本当にそのとおりだよねーと。二人ともうまくて、それぞれの魅力がある。
愛嬌に溢れる次郎冠者と、確かさが光る太郎冠者。
初演を務めたのがご先祖様ということもあるけど、お二人もまるで当て書きみたい。

あと、これだけは言いたい。
「やんや やんや」が大好物です(笑) 萌えの極み。かわいいが過ぎる。

そして「喜撰」については、清元の歌詞の由来とか、お梶の着物のお話などなど。
時蔵さんのお梶の着物は家紋が入ったデザインなんだけど、三世時蔵丈の写真と並べると
着物も同じだし、それ以上にシルエットが本当にそっくりで、なんか、いいもの見たぞ感。

それから、三津五郎さんの葬儀で棺の中に納められた花錫杖のこと・・・
これは確か演劇界の追悼特集号に載ってて印象に残ってた。
歌舞伎座で「喜撰」を務めたとき、自分が死んだらこの花錫杖をお棺の中に入れてほしいと
お弟子さんに頼んだというエピソード。その頃はまさかその日がこんなに早く来るなんて
誰も思ってなかったんだろうなあ・・・もちろんご本人だって・・・
きっと天国でも喜撰を踊ってらっしゃると思う。

「喜撰」は華やかさが好きです。清元と長唄のダブル体制が豪華だし。
坊主を踊るときは上半身は男、下半身は女だそうで、確かに動きがとっても柔らかい。
でも、お梶の柔らかさともまた違うんだよね。不思議。

解説の方曰く、平安の歌人が江戸の町に現れること自体、ありえない設定なんだけど
そういうところも全部ひっくるめて楽しんで見てくださいとのこと。
現代の感覚だと平安も江戸も「昔」っていうひとくくりだけど、もともと演出的には
お坊さんがタイムスリップしてきたよ的な面白さもあったということなのね。

で、時蔵さんへのLOVEが止まりません。きーれーいーだーーーーー♪
足がね、足の指がね、女なの!これ結構な衝撃でした。
手とか目線とか口元とかは舞台でも見えるけど、足先までこんなに嫋やかだなんて!
シネマ歌舞伎だからこそ見えた部分よ。松竹、マジでありがとう。
(“たおやか”って漢字だと“嫋”って書くのか。初めて知った)

いいところで「ご両人!」の大向うまで掛かっちゃって。プロ観客。

所化たち、若手精鋭勢揃いの図。わらわら出てくるところ和むわー。
この浄念坊さんもいつかは「喜撰」を踊るのかな。まだ想像つかない。

三津五郎さんはほぼ踊りっぱなしなのに、むしろ余裕すら漂うのが本当にすごいなと。
体の見せ方から小道具の扱いまで舞台上のすべてを把握している感じっていうのかな、
喜撰の世界が劇場全体に広がって、観客がすーっとその場に誘い込まれるような感覚。
収録されたのは新しい歌舞伎座のこけら落とし公演。
こうして集大成的作品を残せたのはよかったですよね。
でも60代、70代の喜撰も観たかった。。。

このときのインタビューを改めて読むと、今でも胸がざわざわする・・・

松竹に掛け合って納涼歌舞伎をスタートさせたお二人。
その舞台を8月に見られる。粋ですね。

公式サイト


【配役】
「棒しばり」
次郎冠者:中村勘三郎
太郎冠者:坂東三津五郎
曽根松兵衛:坂東彌十郎

「喜撰」
喜撰法師:坂東三津五郎
祇園のお梶:中村時蔵
所化栃面坊:坂東秀調
同 阿面坊:坂東亀三郎
同 解面坊:坂東亀寿
同 戒面坊:尾上松也
同 雲念坊:中村梅枝
同 慈念坊:中村歌昇
同 観念坊:中村萬太郎
同 浄念坊:坂東巳之助
同 真念坊:中村壱太郎
同 無念坊:坂東新悟
同 楽念坊:尾上右近
同 東念坊:大谷廣太郎
同 西念坊:中村種之助
同 光念坊:中村米吉
同 寂念坊:大谷廣松
同 市念坊:中村児太郎
同 青龍坊:中村鷹之資
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