パレード 5/27

2017-07-14 01:22:35 | 舞台感想
ミュージカル「パレード」 5/27(土)夜の部 at東京芸術劇場プレイハウス


久々にずしっときた。終演後もしばらく心の整理がつかないぐらいの重さ。

1910年代のアトランタで実際に起きたレオ・フランクの事件を描いた作品。
正確にはメアリー・フェイガンの悲しい事件と、そのもう一人の被害者の話。
事件の概要を知ったうえで観ていたけど、それでも展開に胸が苦しくなる・・・

終戦パレードに沸く町の中を、疎外感たっぷりの表情で歩いている冒頭のレオ。
白人少女殺しの濡れ衣を着せられたまま抵抗する術もなく吊るされる終盤のレオ。
彼が一度も南部という土地から受け入れられることがなかったのが悲しい。

だからこそ、死刑を免れて収容された刑務所で味わうささやかな幸せが沁みる。
看守との何気ない会話、妻とのピクニック。安心しきったレオの顔。。。

パレードの歓声、黒人たちの終わりのない労働、渓流の景色、ピクニックの安息、
そしてラスト、白人至上主義者たちによって踏みつけられる・・・何か大事なもの。
舞台を埋め尽くす色とりどりの紙吹雪がこの作品の一番の立役者だったかもしれない。

戦いに赴く南部兵の誇りと、敗戦後の挫折。
白人、ユダヤ人、黒人の三つ巴の不信感。
メディアの軽薄さと、煽られた(白人)民衆の威力。権力を持つ者の怖さ。
こういったことの描き方がうまくて、事件のあらましを知っていても引き込まれた。

中でも印象的だったのが、レオが死を突き付けられたときに言った
「何度も言っているとおり、僕は無実だ!」というひとこと。
1回しか観ていないので勘違いかもしれないけど、この瞬間までレオが自分に対して
「無実だ」という言葉を使うのを聞いたことがなかったような気がして・・・
メアリーとの最後の会話も、明かされるのは最後の最後じゃないですか。
真犯人が別にいることを分かってた私でも、無実を訴えるレオに、なぜかはっとさせられた。

この作品、BWで上演した翌年にはツアー公演でアトランタにも行ってるんですよね。
このことが一番の驚きかも・・・アトランタの人々はこれを観てどう思ったんだろう。

日本の観客が観るのと、北部に住むユダヤ人が観るのと、南部に住む白人が観るのと
そのほかのいろんなケースをすべて含めて、受け取るものが違うんじゃないかって。
それも天と地ほども違うんじゃないかという気がする。

この作品を観て、「日本には人種差別がないけどアメリカでは──」みたいなことを
言う人がいたのを見かけたけど、私は個人的にものすごく身近に感じて怖かった。
日本に人種差別がないなんて幻想だって、みんなどこかで分かってるんだと思ってた。
人種というと語弊があるかもしれないけど、もしも同じような卑劣な事件が起きて、
容疑者として拘束されたのが“自分とは違う人”だったら。
その裁判員に呼ばれたとき(無意識の)偏見をいれずに判断できるのか。

罪を認めれば命だけは助けると言われても潔白を貫くレオは、強い人にも見えるし
あるいは諦めからそうすることしかできなかったのか、あまりに無力で心が痛くなる。
パレード(民衆の熱狂)を毅然と通り抜けるルーシーも強い人に見えるけど、
彼女の存在もまた、あの紙吹雪の中に埋もれてしまうのが伝わってくる。。。

過去にこんなことが起きたんだよ悲しいでしょ、という飾られたドラマではなくて、
過去にこんなことが起きたのに、なぜあなた方は何も変わってないんですか?と
突き付けられるような終わり方。

カテコで周りが立ち上がる中、もうそれどころじゃないぐらい疲れ切ってました。
単純に、感動した!とか、泣けた!とか、幕が降りたらはいおしまいな気持ちには
到底なりえない作品。

演出面で気になったのは、黒人役を掛け持ちしていた人が、顔だけ黒く塗って、
首や手を塗らないのは何か意図があるのかなってこと。(まさか時短ではないよね)
それと、役に対して見た目が若すぎる人が何人かいたことですかね。
実年齢では決して無理のある配役ではないんだろうけど、こういう物語のときは
ちょっとしたことが大きな違和感につながるものだなーって。

石丸さんは、四季退団後に観た作品の中では今回が一番しっくりきたかも。
生真面目で、必要な暗さもあって、逆境の中で強さを見せる役が本当に合う人。

堀内さんは久々のミュージカルで、一本調子な声の出し方が若干気になったけど、
人を苛つかせる面と、和ませる面を、同じところから出せるのが面白いなと。
ルーシーって別に物語の中で性格が変わるわけではないので、特にレオから見て
いろいろな面のある奥さんだと思うんですよね。そこがブレなかったのはよかった。

舞台上の役者さんから、これだけ「この作品に出ていることに誇りを持ってます!」
っていう熱が伝わってくる作品も珍しい気がする。

自分が観終わったあとに感じたものを考えると、みんな観て!とは言えないけど、
もし再演があったら、やっぱりもう一度観に行ってしまうと思う。

「差別」が人の心から消えることは、(私自身は)有り得ないことだと思っていて。

でも、そういう気持ちを、憎んで、乗り越える努力を常にしなきゃいけない。
それが良心を守ることなんだろうと思うんですね。

「パレード」は過去の話なんかじゃない、私の話なんだって感じたことを覚えておきたい。


【キャスト】
石丸幹二:レオ・フランク
堀内敬子:ルシール・フランク
武田真治:ブリット・クレイグ
新納慎也:トム・ワトソン
安崎 求:ニュート・リー
未来優希:ミセス・フェイガン
小野田龍之介:フランキー・エップス
坂元健児:ジム・コンリー
藤木 孝:ローン判事
石川 禅:ヒュー・ドーシー
岡本健一:スレイトン知事
宮川 浩:ルーサー・ロッサー
秋園美緒:サリー・スレイトン
飯野めぐみ:ミニー・マックナイト
莉奈:メアリー・フェイガン

石井雅登/杉山有大/当銀大輔/中山昇/水野貴以/横岡沙季/吉田萌美

【スタッフ】
作:アルフレッド・ウーリー
作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
演出:森 新太郎
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
振付:森山開次
美術:二村周作
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:有村 淳
ヘアメイク:鎌田直樹
ジャンル:
ウェブログ
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