墓場鬼太郎 #07「人狼と幽霊列車」感想

・墓場鬼太郎 第7話「人狼と幽霊列車」
(脚本/成田良美、演出/芝田浩樹、作画監督/大西陽一)


 本話は、「顔の中の敵」が概ね原作に忠実にアニメ化されていた。これなら、サブタイトルも素直に「顔の中の敵」でよかったのではないだろうか。ミステリアスな感じで、いい題だと思うのだが。


 今回注目していたのは、ニセ鬼太郎の最期と幽霊列車の描写だったが、どちらも「いい感じ」だった。
 ニセ鬼太郎はちゃんとコーヒーであっさり溶けており、鬼太郎も一瞬驚きはするが引きずって悲しんだりはしない。寝子さんの時とはえらい違いだ。水木を見捨てた件といい、今回といい、アニメ版で寝子さんだけは鬼太郎にとって特別な存在として別格扱いにされている事がよくわかる。
 ニセ鬼太郎は可哀想だが、「とけたっ」の一言で片付けられた原作と比べたら、溶ける場面が描かれただけアニメ版の方が扱いはよかったのではないだろうか。
 鬼太郎の態度に関しては、むしろ水神に対する怯えっぷりが念入りに描かれていて、「素で弱い鬼太郎」が新鮮だった。結局、水神は人狼が始末する訳だが、前話の感想で触れた「ゲゲゲ」第2作の「地獄の水」でも鬼太郎がほぼ同じ方法で水神を倒しており、いずれにしても鬼太郎の霊力だけでは敵わない相手なのだろう。

 Bパートは、人狼とねずみ男のコンビが面白く、本話限りなのがもったいなく感じてしまった。
 この二人が「幽霊列車」に乗る展開は、言うまでもなく「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な「ゆうれい電車」の原型。現在放映中の「ゲゲゲ」第5作で「ゆうれい電車 あの世行き」が放映されてから一年も経っていないので、事情を知らない人が観たら、混乱したのではないだろうか。
 「ゲゲゲ」の方の「ゆうれい電車」は「怖いエピソード」だと認識しているのだが、逆に「顔の中の敵」は人狼とねずみ男の恐がり方が面白く、滑稽なエピソードだと思っている。今回のアニメ版も観ていてニヤニヤしてしまった。特に、駅弁を食べるねずみ男と人狼のやりとりが、いい味を出していた。
 終盤で、人狼が列車から飛び降りる場面も、その行動のマヌケさについ笑ってしまった。「打ち所が悪かった」は、あまりにあっさり死んでしまった人狼をフォローしているつもりなのだろうか。水神をあっさり退治した人狼よりも、鬼太郎親子の霊力の方が更に勝っており、単純に強さに不等号が付けられないところがいい。
 結末では、鬼太郎とねずみ男の立場が冒頭から逆転して、ここから先の二人の関係は「ゲゲゲ」で世間に良く知られているものに、より近くなる。


 一連の長編エピソードが完結して、次回は「怪奇一番勝負」。個人的に、鬼太郎の人間に対する理不尽さが一番強く出ていると思うエピソードなので、特に楽しみだ。



補足

 「ゲゲゲ」第2作の「地獄の水」は、鬼太郎シリーズ以外の短編「地獄の水」を原作としている。私は原作を未読なのだが、この「地獄の水」は、さらに貸本で原型となる話があるようだ。
 水神絡みの水木作品の発表年代を調べてみると、「地獄の水(貸本版)」(1958年)→「水神様が町へやってきた」&「顔の中の敵」(1961年)→「地獄の水(雑誌版)」(1966年)→「鬼太郎夜話(ガロ版)」(1967~69年)となる模様。
 なお、アニメ版「地獄の水」ではコーヒーを飲んで溶けるのは警察署長の役目。何度もリライトが繰り返されているにも関わらず、このような場面が「ゲゲゲ」アニメでも残っているのが面白い。

(参考文献:ゲゲゲBOX 70's ブックレット「幸福の書」)
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