『三つ目がとおる』《オリジナル版》大全集と単行本史

 先月、復刊ドットコムより『三つ目がとおる』《オリジナル版》大全集の刊行が開始された。





 これは、今まで単行本として刊行されてきたものとは違い、『週刊少年マガジン』掲載時の状態を、一部セリフ(自主規制しているもの)を除いて再現したものであり、個人的にも以前から待ち望んできた本だ。
 今回、刊行された第1巻は週刊連載になる前の読み切りシリーズ6話と、週刊連載になったあとの第7回~第16回が収録されている。
 読み切りシリーズに関しては単行本版との差異はあまりないが、週刊連載分については、はやくもかなり構成が異なっており、今後の刊行分にも期待が出来る出だしとなっている。どう違うのかは、ここでは触れないでおく。気になる方は、このオリジナル版を読んでみましょう。

 この『三つ目がとおる』《オリジナル版》大全集は、これまで復刊ドットコムで出されてきた『火の鳥』や『ブッダ』などの《オリジナル版》大全集とは違い、原稿が現存している部分は原稿を使い、残念ながら原稿が失われている部分のみ雑誌から復刻するというコラージュ方式を採用している。これは、別に珍しい方式ではなく、たとえば講談社文庫の『ゲゲゲの鬼太郎』などの雑誌掲載オリジナル版(と銘打っているが、実際にはちょっと違う部分もある)でも採用されているが、サイズの大きい復刊ドットコムのシリーズなので、より効果的にきれいな線が出ている。
 実際に読んでみると、過去に単行本収録されている部分だけでなく、単行本化でカットされた部分も原稿から復元したとおぼしききれいな線になっているコマが多く、なかなかいい感じだ。


 さて、『三つ目がとおる』は、人気作であるので、これまで幾度となく単行本化されている。
 『週刊少年マガジン』連載作品なので、最初の単行本は講談社コミックス(KC)だ。このKCですべてが刊行されれば話は簡単だったのだが、そうはいかなかった。



KC版・全6巻


 KCの刊行は、ほぼ連載順に「怪植物ボルボック編」までが刊行されたが、ボルボック編の第6巻で止まってしまった。
 何故かというと、このタイミングで手塚治虫漫画全集が刊行開始となり、『三つ目がとおる』も第1弾のラインナップに入ったためだ。普通に考えれば、KCと同じ内容で第1巻から出したのだろうが、そこは「(手塚)先生独自の考えに基づく一種の読者サービス」(故・森晴路氏)が発揮されて、なんと第1巻にはKCの続きとなる「イースター島航海編」から収録されたのだ。



全集版・全13巻


 その後、第6巻まで「怪鳥モア編」「古代王子ゴダル編」「地下の都編」と、連載後期のエピソードが収録されたあと、第7巻になってようやくKC版第1巻にあたる三つ目登場のエピソードが収録されて、その後は第12巻まで「グリーブの秘密編」「三つ目族の謎編」「怪植物ボルボック編」と収録されて、短編集となる第13巻で完結したのだった。
 この変則的な収録順によって、「新書判を持っている読者がつづきだと思って全集の七巻から十三巻を買ったら、ほとんどがダブっていた」(故・森晴路氏)という事態になった人もいたそうだ。全集を全巻揃えるような手塚マニアには影響はないかもしれないが、世の中、そう言う人ばかりではないのだ。

 このように、全集で妙な収録順になってしまった『三つ目がとおる』だが、その次に出たKCSP版・全8巻では収録内容は全集版と同一だが、ほぼ発表順の収録に改められている。それでも、連載時の最終話である「スマッシュでさよなら」が第7巻に収録され、第8巻が「怪鳥モア編」になっているという問題点はあるが。KCSP版には、全集と同様にあとがきも収録されている。
 その後、ハードカバー版や文庫版も刊行されたが、基本的にこのKCSP版が底本となっている。

 そして、『三つ目がとおる』には、単行本未収録のエピソードも存在した。
 以前にも触れたことがあるが、この未収録話が初めて単行本化されたのは、意外にもコンビニコミックスだった。全14巻が刊行されたKPCのシリーズで、ようやく『三つ目がとおる』は全話収録されたのであった。





 個人的には、未収録分だけが欲しかったので、このKPCは5冊のみ購入した。コンビニコミックスなのでいつも同じ店に入るとは限らず、入手に苦労した記憶がある。もっとも、その後講談社文庫にて未収録話だけを集めた『三つ目がとおる 秘蔵短編集』が刊行されたので、KPCはいらなくなってしまったのだが。

 さらに、手塚治虫文庫全集にも未収録話は入ったほか、小学館より刊行されたGAMANGA BOOKSのシリーズでも、全話が発表順に収録されており、最近は「未収録」はなくなったと言っていいだろう。少々値段は張るが、カラーページも収録されているGAMANGA BOOKSが、単行本版『三つ目がとおる』の決定版と言えるのではないだろうか。私は、持っていないが。


 くどくどと書いてきたが、これまで色々と出た『三つ目がとおる』は、あくまで単行本に収めるために色々と再編集と描き足し・描き換えを施された単行本バージョンであり、連載版である《オリジナル版》大全集は、別物と言える内容となっている。もう一つの『三つ目がとおる』を楽しめると言っていいのだ。『三つ目』ファンとしては、ぜひ読んでおきたい本だ。お値段はかなり高いけど。
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コメント
 
 
 
B5でも老眼でツラい。 (もらいもん)
2017-09-17 10:07:20
こんにちは。

ウチの場合は、元版のKC全6巻、全部入りのKPC全14巻を持っているので、
GAMANGAはスルーしました。
オリジナル版は値段がネックで、かなり悩みましたが購入。

個人的には講談社からA5版二千円で出して欲しかった…(笑)。
 
 
 
Re: B5でも老眼でツラい。 (おおはた)
2017-10-21 18:54:43
 本文中でも紹介しましたが、私が持っているのは、全集版とKC版、それにKPCを5冊と秘蔵短編集で全部です。
 GAMANGAはちょっと気になったのですが、単行本版での収録だったので購入を見合わせました。

 オリジナル版も、確かに値段は大変ですね。
 私も迷ったのですが、とりあえず月の小遣いを3000円カットして購入費用に充てています。
 「イースター島編」と同じくKCDXで出れば、一番よかったですね。
 
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