『映画ドラえもん のび太の 南極カチコチ大冒険』感想

 3月5日に、今年のドラえもん映画『映画ドラえもん のび太の 南極カチコチ大冒険』を観てきたので、今年も例年通りに感想を書いておく。例によって、思いっきり筋やネタを明かしている部分があるので、その点はご注意下さい




 と言うわけで、本題に入る。
 今年の映画は、劇場用オリジナル作品だったわけだが、全体の感想から書いてしまうと、かなりよかった。今までのオリジナル作品の中では『のび太のひみつ道具博物館』が一番よかったが、今作は『ひみつ道具博物館』に並ぶレベルの出来だったと思う。
 しかも、『ひみつ道具博物館』とは、違う方向性で勝負している点で非常に大きな意味がある。『ひみつ道具博物館』は、事件がすべて博物館という閉じた世界の中で起きる作品だったが、今作は南極という大きな世界で起きる世界の危機を描いた物語であり、スケールの大きさという点で見応えがあった。

 今作でよかった点を挙げていくと、まずは「かなり藤子・Fらしさが出ていた」と言う点がある。
 『ひみつ道具博物館』は面白かったのは確かだが、レアメタルの設定をはじめとして、従来の原作や大長編ドラでは存在しなかった新設定をたくさん取り入れており、どちらかというと「ドラえもん百科」的な面白さだった。
 それに対して、今作は物語の芯となるタイムパラドックスの手法をはじめとして、道具の使い方やゲストキャラの設定などが、かなりF作品っぽいのだ。特に、タイムパラドックスをここまで本格的に扱ったのは、映画オリジナルのドラえもん映画では初めてのことであり、大いに評価できる。正直なところ、幼児層にはわかりにくいのではないかと心配すらしてしまった。いや、それは幼児を見下しすぎなのかもしれないが。

 話はそれるが、私は幼児の頃に旧作の『のび太の恐竜』からドラえもん映画を観ているが、ストーリーが難しいと思ったことは一度もない。その理由は、映画だけでなく公開と同時に発売されたカラーコミックスの大長編原作(「映画まんがドラえもん」と表記)を何十回、いや何百回と読み返していたせいなのだろう。映画自体はテレビ放送を入れても2回観たら終わりだったから、私にとっての映画ドラえもん幼児体験は「カラーコミックスの大長編原作」であると言える。
 それに対して、仕方がないのだが今作は映画オリジナル作であり、原作がない。いくら面白い作品でも、気軽に読み返せるマンガ媒体がないと、作品世界に浸れないのではないかと、勝手に心配してしまう。考えすぎかな。

 少し脱線してしまったが、今作のいいところは他にもある。特に印象的だったのは、「ひみつ道具の楽しさ」だ。氷ざいくごてを使う時の氷の動きの面白さ、ここほれワイヤーをこすった時の反応、ピーヒョロロープを犬ぞりの犬にするという意表を突いた使い方など、観ていて「この道具を自分も使ってみたい」と思わされる場面が実に多かった。個人的には、一本で何でも出来るようになっていた氷ざいくごてが特に面白かった。ビョーンと氷が動くのが見せられるのは、アニメーションならではの面白さだろう。

 さらに、今作でよかったのは、盛り上がる場面が一つではなかったため、観ていてだれることがなかったという点もある。
 具体的にいえば、偽ドラえもんとの対決と、ブリザーガとの最終決戦と、2回クライマックスがあったと言える展開であり、両方とも一つの映画のクライマックスとして使える展開であることを考えると、実に贅沢な作りだった。
 そう言えば、あの偽ドラえもん、声を大山のぶ代がやっていればある意味でさらに盛り上がったのではと言っていた人もいたなあ。大山さんが現在やれる状態かどうかは別にして、個人的にはそれはやり過ぎだと思うが。それに、声を富田さんがとか、野沢さんがとか言い出すと『ドラえもん』の場合はきりがないからなあ。


 と、よい点の多かった今作だが、気になった点もないではなかった。そういうところについても、書いておこう。

 まずは、冒険の導入が少し弱く感じた点。「リングを持ち主に返す+幻の先住民(アトランティス人?)を探す」と言う動機付けはあるが、いきなり南極で大冒険するにしては、いささか弱いのではないかと思ってしまった。もう一つ、のび太たちの背中を押す「何か」が欲しかったところだ。

 そして、ゲストキャラの印象も若干薄い。カーラもヒャッコイ博士(作中で名前が出なかったような)も悪いキャラではないのだが、やや類型的なキャラになってしまった感はある。かと言って、あまり博士をエキセントリックにしすぎると『ひみつ道具博物館』のペプラー博士みたいになってしまうだろうから、難しいところではあるのだが。
 パオパオについては、十分可愛らしく描けていたと思う。個人的には、アニメ『ジャングル黒べえ』での水鳥鉄夫氏の演技が印象的なので、最初はおっさん声でないパオパオにはちょっと違和感があったが。
 また、今作にパオパオが登場したことで、コーヤコーヤ星とヒョーガヒョーガ星の関係とか、色々と気になる点が出来てきた。おそらく、お互い生物が行き来している星とかの裏設定がありそうだ。ともかく、パオパオが単なるゲストマスコットキャラにとどまらない活躍をした点は、オールド藤子ファンとしてもうれしいことだった。モフスケ=ユカタンについては、色が変わった理由をちゃんと用意しておいてほしかったかな。「10万年の冬眠で色が変わってしまったのだろう」だけでは、ちょっとなあ。声も変わっているし。

 気になった点を挙げると、こんな所か。まあ、私の中では「よかったところ>気になったところ」なので、作品としては全体的に楽しめたのは間違いない。オリジナル作品と言うことで敬遠している人もいるかもしれないが、『ひみつ道具博物館』を気に入った人であれば、今作は観ても損はない作品だと思うので、ここでお薦めしておく。


 ところで、ちょっと気が早いが、来年の映画ドラえもんについても触れずにはいられない。
 おまけ映像を観た人なら、百人中の百人が来年の映画は『のび太の南海大冒険』のリメイクだと思ったことだろう。もちろん、私もそう思った。そう見せかけての別の何か(オリジナル作品?)と言う展開も全くないとは言い切れないが、『海底鬼岩城』『南海大冒険』『人魚大海戦』と、海を舞台にした作品がこれだけある中で、リメイクではなくまたしても海の冒険をテーマにするとは考えにくい。それに、ドラえもんが海賊風の格好をしていたし。

 来年が『南海大冒険』のリメイクであるという前提で話をすると、「どん底からの出発」である分、ある意味やりやすいかもしれないし、またスタッフの手腕が本当の意味で問われる作品にもなりそうだ。リメイクで面白くなって当然の作品を、どこまで面白く出来るかというのは、腕の見せ所だろう。
 来年の監督はスタッフクレジットから判断して今井一暁氏か。これまでは、テレビシリーズの演出家として活動しており、もちろん映画ドラえもんは初監督だ。はたして、どのような『南海大冒険』を見せてくれるのか、ある意味では非常に楽しみだ。

 と、ここまで書いておいて、来年が『南海大冒険』のリメイクではなかったらどうしよう。その時はその時で、やはり出がらしになった感のある「海の冒険」をどうするか、という点での楽しみはある。いずれにせよ、特報の第一報を待ちますか。
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