ウィルバー・ロス商務長官が、日本の高額新薬の薬価引き下げに反対~自動車よりも製薬のほうが米国のメリット大

米国の医薬品ビジネス

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ウィルバー・ロス商務長官が、日本の高額新薬の薬価引き下げに反対~自動車よりも製薬のほうが米国のメリット大

3日前の2017年4月18日、ペンス副大統領とウィルバー・ロス商務長官が来日して日米経済対話が行われましたが、その際、ロス商務長官が塩崎厚生労働大臣に面会し、高額な新薬価格を安易に引き下げないよう要求した、と日経新聞が報じました。

今回の日米経済対話の事前交渉では「製薬分野の要求が特に激しかった」(交渉関係者)、さらに、「ロス氏周辺は自動車などより製薬のほうが米国にメリットが大きいと考えている」(国際金融筋)との見方もある、とも報じています。

日米経済対話での米側要求は、自動車・農業・製薬の3分野が重点となることが明確になりました。

ワクチンは、健康な、すべての人々がターゲットで、多国籍製薬メジャーにとって大きなビジネスチャンスです。子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)や肺炎球菌ワクチンに代表されるように、多国籍製薬メジャーは、日本で定期接種化すなわち公費負担とさせて、多額の利益を上げようと企むのです。

また、桁が違う高額な新薬ビジネスの標的も日本です。新薬のメーカーは、日本で高額薬価を維持し、日本の皆保険制度を利用して日本マネーを搾り取る算段なのです。

トランプ大統領は、米国民に対しては薬価を下げると公約していますが、日本国民には高額な薬価を押し付けようとするのでしょうか。であるとすれば、トランプ大統領の言う「自由で公正な貿易」とは、米国民のためだけの他国の国民を犠牲にする「不公正・アンフェアな政策」ということになります。

さて、これらのワクチンビジネス、高額新薬ビジネスを考える際、その背景に「日米年次改革要望書」の存在があったことを、無視することはできません。

日米年次改革要望書の合意事項に、初めて「ワクチン」が登場するのが、2007年6月6日の「日米間の『規制改革及び競争政策イニシアティブ』に関する日米両首脳への第6回報告書」です。

「ワクチン:2007年3月、厚生労働省は、国内で必要とされるワクチンの開発と供給を促進するため、ワクチン産業ビジョンを発表し、同ビジョン及びそのアクションプランをフォローアップするワクチン産業ビジョン推進委員会を設置したところである。当委員会の委員には、日本及び外国産業界の代表が含まれている。厚生労働省は、同委員会において米国業界を含む関係者との見解の交換を進めながら、公衆衛生上必要なワクチンの開発の支援に継続的に取り組む。厚生労働省は、ワクチンの規制について、米国業界を含む業界と意見交換を行う。」とあります。

この米国からの要求にこたえる形で、厚生労働省の指導によって、国内臨床試験が終了していないのに、優先審査として、2007年9月に子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)サーバリックス(GSK社)が、2007年11月にガーダシル(MSD社・米国メルク社)が、承認申請されました。この時の「日米両首脳」とは、安倍総理とブッシュ大統領です。

2008年7月5日の「日米間の『規制改革及び競争政策イニシアティブ』に関する日米両首脳への第7回報告書」には、
「ワクチン審査の改善と推進:厚生労働省はワクチンのガイドラインを作成し、ワクチン使用を推進するため、勉強会を設置した。日本国政府は米国業界を含む業界と、ワクチン審査の改善について引き続き意見交換する。」とあります。

米国業界を含む業界と、ワクチン審査の改善について引き続き意見交換することを、外交交渉で約束する厚生労働省の対応は、異常と言うしかありませんが、結局、2009年9月29日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会・薬事分科会で、複数の委員の反対・慎重論などの異論を制して、分科会長によって「異議なし議決」が強行され、HPVワクチン「サーバリックス」(GSK社)を日本で承認することが決まりました。さらに、2010年10月11日からは、HPVワクチンの公費助成がスタートしました。米国政府と多国籍製薬メジャーとが一体となって、日本政府に強力に要求した結果です。


「日米年次改革要望書」は2009年に鳩山内閣によって廃止されましたが、代わって「日米経済調和対話」として菅内閣の時、復活しました。

2011年2月の「日米経済調和対話」の米国側関心事項「ワクチン」の項目には、「『日米ワクチン政策意見交換会』を開催し、2010年に採用されたHib、肺炎球菌、HPVワクチンについての措置を拡充する」とあり、その要求通り、同年5月30日、MSD社(米国メルク社)の「ガーダシル」の承認議決が行われました。


2012年1月の「日米経済調和対話協議記録・概要」の「ワクチン」の項目には、「日本国政府は予防接種制度の改正を進めているが、厚生労働省は、Hib、肺炎球菌、HPVワクチンを定期接種の対象に含めることについて十分考慮しつつ、2010年以降実施し、これら3つのワクチンへのアクセスを改善した緊急促進事業を踏まえ、対応」とあります。

その結果、米国の要求通り、2013年3月29日「改正予防接種法」が成立し、Hib、小児用肺炎球菌、HPVワクチンが定期接種となりました。私の反対もむなしく(全国会議員722名中、反対は私1人)、HPVワクチンは定期接種となってしまったのです。2014年10月には、高齢者に対しても肺炎球菌ワクチンが定期接種となりました。米国の要求通り、事は着々と進んだのです。


日米経済調和対話で毎年行うことが決まった「日米ワクチン政策意見交換会」の一環として、2014年6月18日、「PhRMA米国研究製薬工業協会」が大きく関与する形で、HPVワクチン推進の記者説明会が東京で行われました。ブルース・ゲリン氏(米国保健社会福祉省保健次官補 兼 国家ワクチンプログラムオフィス所長)と、メリンダ・ウォートン氏(米国公衆衛生局大佐 CDC国立予防接種・呼吸器疾患センター所長)が、日本で勧奨中止の状態が続く子宮頸がんワクチンについて、推進を強く呼びかけました。

米国政府と多国籍製薬メジャーとは、人事交流が盛んで、利益相反の関係です。彼らは自分たちの利益のために、日本の少女たちが犠牲になっても平気です。たとえ、重篤な副反応発現率が、インフルエンザワクチンのサーバリックスが52倍、ガーダシルが24倍であっても、また、重篤な副反応の治療方法を見出せなくても、副反応被害者らが集団訴訟を提訴しても、訴訟慣れしている多国籍製薬メジャーは、全く動揺しません。


HPV、Hib、肺炎球菌、ロタウイルスといった、近年の外資ワクチンは、健康維持のためというよりも、多国籍製薬メジャーの利益のために誕生したワクチンと言っても過言ではありません。今やワクチンは人間の安全保障の問題としてとらえる必要があると思います。

米国政府は、製薬メジャーと一体となって、TPPではなく、ダイレクトに日米二国間交渉で、ワクチンビジネス、高額新薬ビジネスを日本にしかけてくるのです。

2017年4月18日に、来日したロス商務長官が塩崎厚生労働大臣に面会し、安易に新薬の薬価を引き下げるべきでないと要望した直接のきっかけは、オプジーボの50%薬価引き下げと薬価改定を毎年行うとした日本政府の方針転換です。これには、高額新薬が日本の医療保険制度を脅かしかねないという背景があります。

平成25年度の薬剤費(保険薬:医療機関・保険薬局の合計)8.85兆円(医療費全体の22.1%)、
中央社会保険医療協議会資料によると、H27年度の国民医療費は41.5兆円(前年度比1.5兆円増)です。
超高齢社会を迎え、それらの世代をターゲットとする医療ビジネスが全面展開される中、日本の医療費は膨らむ一方です。

問題となったのが、「夢の新薬?!」と言われた超高額薬価!!の「オプジーボ」(一般名:ニボルマム)点滴静注剤。抗悪性腫瘍剤、ヒト型抗ヒトPD-1モノクロナール抗体、免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬と、様々な表現がされますが、保険適用となる疾患は、根治切除不能な悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、です。

遺伝子組換え技術により、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造するオプジーボの薬価は、昨年11月、議論されていた当時、
●オプジーボ 20mg:15万  200円
●オプジーボ100mg:72万9849円
でした。

オプジーボを使用した治療は、いったい、いくらぐらいかかるのか。
肺がん・体重60kgの場合、
薬剤費は、薬価換算で、1回あたり約133万円、1ケ月あたり約300万円、1年あたり約3500万円です。

●進行非小細胞肺がんへの適用拡大で新規使用患者数15,000人(メーカー推定)となれば、
例)15,000人×3500万円=5250億円の薬剤費増

●日本赤十字社医療センター化学療法科・國頭(くにとう)英夫医師によれば、               
「仮に、対象となる肺がん患者の半分の5万人が、1年間オプジーボを使えば、総額1兆7,500億円のコスト増」となり、まさに、日本の医療保険制度を圧迫する、ということになるのです。

ところで、オプジーボは、どれくらいの効果があるのでしょうか?
●生存期間を、既存の薬剤「タキソテール」と比較した試験では、
扁平上皮がん9.2ケ月vs6.0ケ月 
非扁平上皮がん12.2ケ月vs9.4ケ月
ということですから、延命効果は約3ケ月ということになります。


オプジーボの薬価が高額となったのは、国際誕生が日本だったということがあげられます。日本で初めて承認するため、他国との比較ができなく、当初の保険適用が「悪性黒色腫にのみ」だったことが、高額薬価の大きな要因です。
その後の他国と比較で、100mg・1バイアルあたり、日本は約73万円、米国は約29.6万円、英国は約14.4万円と、明らかに、日本が突出して高額であったことがわかります。
そこで、安倍総理を議長とする経済財政諮問会議で、オプジーボの薬価引き下げが議論されることとなり、H28年11月16日、中医協で、H29年2月より薬価を50 %引き下げることが決定しました。

最初の薬価は、適切だったのでしょうか。日本の医療費を脅かすとなれば、「夢の新薬」も、本末転倒?!ということになりかねません。

このオプジーボの「薬価50%引き下げについて」、「オプジーボ」共同開発のブリストルマイヤーズスクイブら多国籍製薬メジャーが、薬価引き下げに対して、2016年11月21日、緊急声明を発表しました。

日米経済調和対話の日米ワクチン政策意見交換会の事実上の仕切り役「PhRMA(米国研究製薬工業協会)」(BMSも加盟)と、EFPIA(欧州製薬団体連合会)との共同声明です。薬価50%引き下げの5日後の声明で、非常に素早い対応です。

現在、PhRMAの在日執行委員会委員長は、日本イーライリリー代表執行役社長パトリック・ジョンソン氏です。イーライリリーについては、昨年夏、乾癬治療の新薬「トルツ」(ヒト化抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤)の高額薬価が問題になり、結果的に24万5873円(80mg1mL1筒)の薬価が14万6244円に、「約10万円」引き下げられています。

声明では、
「日本における最近の薬価に関する動向がイノベーションを評価する方向から外れてきていると感じており、日本の医薬品をめぐる制度に安定性と予見可能性を取り戻すために、私ども業界団体も日本政府と共同して取り組むことを提案します」
と、大胆に内政干渉をしています。

まさに、年次改革要望書以降続く、製薬ビジネスにおける米国の日本への圧力そのものです。

オプジーボの薬価引き下げに続いて、日本政府は、実勢価格と薬価との乖離幅が大きい医薬品について、薬価改定の頻度を増やす方針を打ち出しました。それまでの二年に一回の改定から「毎年改定」に方針転換する、つまり、毎年薬価を引き下げることにしたわけです。

これに対して、すぐさま米国が反応しました。米国は日本以上に、製薬業界と政府が一体となっていますが、WSJ誌によると、
●米国政府は、見直しを求める書簡を、菅義偉官房長官に送付。
米国のプリツカー商務長官は12月2日付の書簡で、いかに「失望している」か、を説明。
「医療関連製品のインセンティブ構造だけでなく、市場の予測
可能性と透明性に対する深刻な懸念を引き起こす」と伝えた。

●全米商工会議所は、同様の内容の書簡を、安倍晋三首相にも送付。

●米国研究製薬工業協会・広報担当者・マーク・グレイソン氏
「プリツカー商務長官とトム・ドナヒュー全米商工会議所会頭の書簡は、日本の患者にとって良好なイノベーション環境がいかに重要かを強調するものだ」と述べた。

●プリツカー商務長官は書簡でオプジーボの名前を挙げなかったが、「医薬品の保険償還価格を引き下げるためのその場しのぎの制度変更」に落胆していると伝えた。

このように、米国は、日本の総理と官房長官に対して、露骨に「これでは儲からない」と、書簡を送っているのです。トランプ政権のロス商務長官は、オバマ政権の商務長官の方針を、そのまま引き継いでいる、ということになります。

TPPで日本の皆保険制度は崩壊するという意見もありましたが、実は、多国籍製薬メジャーにとって、日本の皆保険制度ほど魅力的な市場はないのです。

ワクチンビジネスと高額新薬ビジネスが、日本と世界を席けんしているのです。
ワクチンは、健康な、すべての人々がターゲットで、多国籍製薬メジャーにとって、ワクチンは大きなビジネスチャンスです。子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)や肺炎球菌ワクチンに代表されるように、多国籍製薬メジャーは、ワクチンを開発し、日本で定期接種化すなわち公費負担とさせ、健康な人々に接種し、多額の利益を上げようと企むのです。

実際にワクチン接種を担う開業医にとっても、ワクチンは「飯の種」となっています。ある内科の開業医が、子宮頸がんワクチンは「飯の種」、これがなければクリニックの経営が成り立たない、と発言するテレビ番組を見たことがあります。

そして、桁が違う高額な新薬の標的も日本です。高額新薬のメーカーは、日本の皆保険制度を利用して日本マネーを搾り取る算段です。

America Firstのトランプ大統領は、米国内では薬価引き下げを行い、その分、製薬業界には日本で稼がせようとしているのです。

分子標的薬やがん免疫薬などに代表される高額な新薬は、費用対効果の評価が不可欠です。今回のロス商務長官の要求を丸のみするようでは話になりません。

オプジーボは、既存薬「タキソテール」(タキソイド系抗悪性腫瘍剤/1994国際誕生、2009薬価収載67,304円(80mg)・ジェネリック43,164円)と比較すると、扁平上皮癌で約3ケ月の延命効果(全生存期間)です。オプジーボのような高額の医薬品は、ジェネリックが承認された段階で保険適用とし、健康保険制度を圧迫しないような仕組みが必要ではないかと、私は思います。

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