抗リウマチ薬「エンブレル注」のその後 3月31日

3月27日の日記に書いたように、リウマチの患者さんにとっては福音との触れ込みの抗リウマチ薬「エンブレル注」、原料に米国産の仔ウシ血清を使用しているためBSEとの関連で発売が延期になったと思ったら、間髪入れずの発売。あまりの「挙動不審」に、いてもたってもいられず、川内博史代議士を通じて早速リサーチを開始した。

エンブレル注は、1月19日に日本でも承認され、予定では3月25日に発売の予定だった。ところが承認後間もない1月27日、海外でエンブレルを使用している患者がクロイツフェルト・ヤコブ病を発症し死亡したとの報告があがる。死亡報告から1ヶ月以上経過した3月9日の時点では、製造販売元のワイス株式会社はその旨を承知していた。その後、3月17日になって初めて、ワイス株式会社は、エンブレル注使用者にクロイツフェルト・ヤコブ病が発症し致死した旨を、(独)医薬品医療機器総合機構を通して厚生労働省に報告している。そして、18日の時点で、ワイス株式会社はエンブレル注の発売延期を決定した。

厚生労働省は、ワイス株式会社の報告を受けて、3月24日「薬事・食品衛生審議会安全対策部会伝達性海綿状脳症対策調査会」を開くこととなる。その調査会に、食品安全委員会プリオン専門調査会の座長以下5名が含まれていることには驚いたが、調査会が、ワイス株式会社から提出された資料のみをもとに、「エンブレル注と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)との因果関係は非常に低い」と瞬時に結論を出していたことには、もっと驚いた。その結果、昨日の3月30日、ついにエンブレル注は、日本国内で発売されてしまったのだ。あまりにもスピーディで、独断に満ちた決定だとはいえないだろうか。

更に、不信感を増幅させるのは、当初の発売予定日の翌日である3月26日に、厚生労働省で開かれた会議の席で、インスリンのようにエンブレル注も、患者本人による自己注射を認める決定を下している点だ。

3月29日、ワイス株式会社と、共同販売する武田薬品とは、連名で、エンブレル注新発売の旨を、文書で報道発表している。この文面に、ヤコブ病やBSEについての一連の経緯がまったく触れられていないことにも、不信感が募る。この間の経緯の情報公開とvCJDへの注意喚起が、なされてしかるべきではないか。

時系列でいくと、3月24日の調査会が最も怪しい。発売元のワイス株式会社が提出した資料のみで、適確な判断ができるのだろうか。それで本当に良かったのか。最悪なのは、エンブレル注とvCJDとの因果関係が「非常に低い」というくだりだ。ゼロではないのだ。可能性を否定できない中、早々に発売を再決定した厚生労働省の真意を測りかねる。たった1日でも英国滞在歴のある人の献血は止めても、こんなにあやふやな、少なくとも、英国1日滞在者の献血よりはリスクが高いと思われる事態を看過することは、国民の安全の観点から言っても絶対におかしい。

厚生労働省の言い分は、「多くのリウマチ患者がエンブレルを待ち望んでいるから」だそうだ。もともと、リウマチ専門医であっても、暫く様子を見てから採用するという話もあったくらいで、1分1秒を争うような状態であるとはとても思えない。仮に100歩譲って、厚生労働省が言うように、多くの患者さんにとって待望の薬であるならば、だからこそ、厳重な調査と情報公開が必要なのだ。調査をしたのかしないのかわからないような不十分な状態のまま上梓に踏み切ることは、安全性にもとり絶対にあってはならないことだ。このような状態で、本当に大丈夫なのだろうか。

そして、我が国で使用されている2,600品目にも及ぶ医薬品の原料に、米国産ウシが使用されていることも、忘れてはいけない。厚生労働省は、米国からBSEを発症していない国へと、原料の原産国を切り替えるよう製薬メーカーに通知による指導をしているが、そんな生ぬるいことで良いのだろうか。このまま患者が何も知らされぬまま医薬品を使用することは、果たして許される話なのだろうか。

とにかく今は、エンブレル注について、川内代議士に更に突っ込んだ真相究明をしていただきたいと心から望む。こんな状態では、真に国民を守ってくれるのは、いったい誰なのかと、つくづく考えさせられる。
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