中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

残業250時間でうつ病

2016年11月23日 | 情報

記事を読む限りでは、会社側、労働者側の主張にかなりの乖離があります。
真実はどこにあるのか、相当難しい争いになると感じました。

「残業250時間でうつ病」 ホテルの元コック、地位確認求め仮処分申請へ 滋賀・長浜
16.11.19 産経

滋賀県長浜市の「北ビワコホテルグラツィエ」に勤務していた同市の40代の男性が
「月約250時間の残業や同僚の暴行で発症したうつ病などを理由に退職を通知された」として、
従業員としての地位確認や未払い残業代約630万円の支払いを求め、
近く仮処分などを大津地裁に申し立てることが19日、分かった。
男性や代理人弁護士によると、男性は2000年からコックとして勤務し、
調理や配膳業務を担当。職場は慢性的に人員不足で、11年初めに同僚の1人が辞めると、
1日の勤務が20~23時間になる日もあり、
繁忙期の年末年始は入浴や仮眠のため1~2時間だけ帰宅する日が続いたという。
残業時間が月約250時間に上ることもあったが、支給された残業代は100時間分に満たなかったとしている。
男性はタイムカードの導入を求めたが、拒否された。
14年12月には職場で同僚に殴られ、頭や目を負傷。
入院し、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされ休職を余儀なくされたという。
しかし、ホテル側は警察などに相談せず、労災ではなく傷病手当金の手続きを取った。
ホテル側は、男性のうつ病などが回復する見込みがないとして今月18日付での退職を通知した。
男性は「調理以外の仕事ならできるという趣旨の診断書も出しており、納得できない。
同僚の暴行も疲労によるいら立ちが原因の一つで、長時間労働がもたらした労災だ」と訴えている。
一方、ホテルを経営する「住文」(長浜市)の上羽輝明社長は取材に「そのような長時間労働はありえない。
けがは同僚の一方的な暴行ではなく、けんかだと聞いている
診断書を見た上で産業医や社会保険労務士と面談し、復職は難しいと判断した
」と説明した。

残業250時間、うつ病に
地位確認求め仮処分申請へ、滋賀
16.11.19 共同

滋賀県長浜市の「北ビワコホテルグラツィエ」に勤務していた同市の40代の男性が
「月約250時間の残業や同僚の暴行で発症したうつ病などを理由に退職を通知された」として、
従業員としての地位確認や未払い残業代約630万円の支払いを求め、
近く仮処分などを大津地裁に申し立てることが19日、分かった。
男性や代理人弁護士によると、男性は2000年からコックとして勤務し、調理や配膳業務を担当。
職場は慢性的に人員不足で、11年初めに同僚の1人が辞めると、1日の勤務が20~23時間になる日もあり、
繁忙期の年末年始は入浴や仮眠のため1~2時間だけ帰宅する日が続いたという。

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高裁逆転判決

2016年11月22日 | 情報

当事案は、公務災害ですから、規程が分かりませんので詳細については避けます。
しかし、労災の場合と同じと考えると、1か月だけでも長時間残業という事実があれば、
精神障害の労災認定基準に合致しますので、認定基準どおりに判断した結果と理解することができます。
具体的には、「精神障害の労災認定基準の長時間労働がある場合の評価方法 ③他の出来事と関連した長時間労働」に
該当します。しかも、地方公務員災害補償基金は、労災に当たる公務災害と認定していますので、原告勝訴は順当と考えます。

糸島市職員自殺 過労を認定 福岡高裁逆転判決
2016年11月11日 読売

福岡県糸島市の男性職員(当時52歳)が過労でうつ病になって自殺したのは
市が適切な労働環境の整備を怠ったためだとして、
男性の妻ら遺族が市に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。
金村敏彦裁判長は市の安全配慮義務違反を認め、請求を棄却した1審・福岡地裁判決を変更し、
市に約1650万円の支払いを命じた。
男性は市農林土木課の担当課長だった2010年6月に自殺。
市町村合併に伴う条例制定などの業務に追われ、自殺直前の1か月の時間外勤務は114時間に及んだ。
1月の1審判決は、「時間外勤務が100時間を超えたのは自殺前の1か月だけで、
業務が過度の負担をしいるものではなかった」などとして、原告の主張を退けた。
控訴審判決で金村裁判長は「男性は自殺直前、業務が集中し、疲労や心理的負荷が過度に蓄積していたのに、
男性の上司は健康状態を認識していなかった」と指摘し、市の安全配慮義務違反を認定。
その上で、「上司が勤務時間を減らしたり、職務分担を変更したりすれば自殺を回避することも可能だった」と言及した。

過労自殺「糸島市に安全配慮違反」賠償命令 福岡高裁
2016年11月11日 朝日

福岡県糸島市の男性課長(当時52)が自殺したのは、市が適正な業務分担を怠ったことによる過労が原因だとして、
遺族が市に約7760万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。
金村敏彦裁判長は「上司に安全配慮義務違反があった」などとして、遺族の請求を退けた一審判決を変更し、
市に計約1650万円の支払いを命じる逆転勝訴の判決を言い渡した。
判決によると、男性は農林土木担当課長だった2010年6月に自殺。
条例案をめぐる地元説明や議会対応に追われ、自殺直前の1カ月間の時間外労働は約114時間に及んだ。
うつ病も発症していたとして13年に公務災害と認定された。
今年1月の一審・福岡地裁判決は、自殺前の半年間に時間外勤務が100時間を超えたのは1カ月だけで、
男性の心身の不調を市が認識できたとは認められないと判断し、原告敗訴の判決を言い渡した。
高裁判決は、自殺前の仕事量が管理職の平均的な業務と比べ過重で、疲労や心理的負荷が過度に蓄積していたと指摘。
自殺直前にうつ病も発症し、「公務と自殺の因果関係を認めることができる」とした。
また上司の部長が男性の過重な業務を認識し、勤務時間を減らしたり職務分担を変更したりすれば、
負担の軽減が可能だったと判断。
メンタルヘルスに関する相談を受けるよう勧めることで自殺回避の可能性があった点も含め、市の安全配慮義務違反を認めた。
一方で賠償額については、男性が管理職として
業務を部下に割り振って自分の労働時間を適正に管理する意識が弱かったことや、
メンタルヘルスの相談制度を利用しなかったことなどが自殺に寄与したとし、8割の過失相殺をするのが相当と判断した。
男性の妻は代理人弁護士を通じて「これでやっと仕事が原因で亡くなったと認めてもらった。
市には二度と同じような犠牲者を出さないことを願う」とコメントした。
糸島市は「判決の内容を確認したうえで今後の対応を検討する」とした。

福岡・糸島市職員の自殺、過労認めず…地裁、「質的に過重とは言えない」と賠償請求棄却
2016.1.21 産経

平成22年に福岡県糸島市の農林土木担当課長だった男性=当時(52)=が自殺したのは、
市が過重労働にならない配慮を怠ったためとして、遺族が約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、
福岡地裁(岡田健裁判長)は21日、請求を棄却した。
判決によると、男性は農業施設の工事で受益者から分担金を徴収する条例案の担当となり、
農家や市議への説明などで、自殺前1カ月の時間外勤務が114時間に上った。
地方公務員災害補償基金は25年、労災に当たる公務災害と認定した。
判決で岡田裁判長は「時間外勤務が100時間を超えたのは、条例案に関する業務が集中した1カ月だけ。
責任の重い公務だが、質的に過重とは言えない」と判断した。

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労災認定「補償不十分」

2016年11月21日 | 情報

記事の通り、労災補償は、被害、被災の補償の一部でしかないのです。
ですから民事損害賠償に繋がるのですね。
訴えられた企業にとっては、先日紹介した民間保険も対策のひとつになります。

元原発作業員、東電など提訴へ 労災認定「補償不十分」
2016年11月17日 朝日

東京電力福島第一原発事故後の作業で被曝(ひばく)し白血病になったとして
労災認定された北九州市の元作業員の男性(42)が、「被曝対策を怠った」として
東電と九州電力に計約5900万円の損害賠償を求める訴訟を22日に東京地裁に起こす。
弁護団によると、福島第一原発事故後の作業で労災認定を受けた人が東電を提訴するのは初めてという

男性は2011年10月~13年12月、福島第一原発4号機のカバー設置作業などに従事したほか、
九電玄海原発(佐賀県)で定期点検工事などに関わった。
その間の被曝量は計約20ミリシーベルトで、男性は14年1月に急性骨髄性白血病と診断され、
昨年10月に労災認定を受けた。白血病による不安からうつ病とも診断され、労災が認められた。
弁護団は、労災認定の際、原発事故後の作業による被曝と白血病との因果関係が認められた点を指摘。
「東電や九電は現場施設管理者として作業員の安全を守る責任があったのに、十分な被曝対策を取っていなかった。
男性は東電などのずさんな現場管理のために無用な被曝を強いられ、生命の危険と死の恐怖にさらされた」と主張する。
ログイン前の続き原告代理人の海渡雄一弁護士は「労災認定されても、十分な補償とは言えない。
原発作業員の被曝の問題を闇に埋もれさせず、今後の救済につながるよう訴えていきたい」と述べた。
東電は「訴状が届いていないため詳細は承知しておりませんが、訴状が届き次第適切に対応して参ります」、
九電は「提訴については承知しておらず、現時点でコメントのしようがありません」としている。

 (参考)「精神疾患退社」に備え
2016年10月27日

東京海上、「精神疾患退社」に備え 中小向け保険
2016/9/18 日本経済新聞
東京海上日動火災保険は10月から中小企業の従業員が精神疾患で退社した場合などに対応する保険を販売する。
退職金に100万円を上乗せする商品や、会社が訴訟に備えて弁護士などに相談する費用を補償する。
いずれも訴訟前に発生する費用を保険で賄う点が特徴だ。
最近はメンタルヘルスに関係する訴訟が増加しており、需要が見込めると判断した。
精神疾患などで退社する従業員への退職金上乗せを補償するのは損害保険業界で初めての取り組み。
転職費用などを賄えるため、未然に訴訟を防ぐ効果も見込める。
企業向けの法律相談費用補償は上限が10万円。顧問弁護士がいない中小企業の利用を見込む。
労働災害事故を補償する企業向け業務災害保険に精神疾患での費用負担補償を新たに加えた。

 

 

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千葉大病院、認知行動療法センター

2016年11月18日 | 情報

認知行動療法は、精神疾患に対する有力な療法として定着しています。
しかし、今回も、公的医療保険が適用されないのですね。残念です。
因みに、記事に従えば、1回1万円で16~20回程度実施すると、16~20万円の自己負担になりますが、
これでも従来の自由診療に比べれば、かなり安価であることは事実なのですが。

千葉大病院、認知行動療法センターを開設、心の病に対応  ニュースリリース
2016/11/3 日経

千葉大学医学部付属病院は精神療法を専門に手掛ける「認知行動療法センター」を開設した。
不安障害など心の病気の相談件数が増えていることに対応する。
従来はカウンセリングを相談事業と位置づけてきたが、今後は医療として本格的に取り組む。
国立大学病院でこうした部門を設けるのは初という。
認知行動療法は患者との面接を通じて考え方や行動を見直し、感情の問題を解決する心理療法の一種。
近年では不安障害やうつ病など心の病気に加え、不眠症や慢性的な痛みにも効果があるとの報告がされている。
認知行動療法センターでは医師の指導のもと、臨床心理士が同療法を提供する。
原則として週1回、50分の個人面接を16~20回程度実施する。公的医療保険は適用されないため、
料金は1回あたり1万円となる。
従来は千葉大の研究所で認知行動療法を手掛け、昨年度は約120人に1800回ほどのカウンセリングを実施した。

千葉大学医学部付属病院 ニュースリリース 2016年10月31日 

国立大学病院で初めて 「認知行動療法センター」を創設
~「医療としての提供モデル」の確立を目指して~

千葉大学医学部附属病院(病院長 山本修一 千葉市中央区亥鼻1-8-1)では、
臨床試験でエビデンスが証明された「不安障害」等の相談件数の増加に対応するため、国立大学病院で初となる、
医療としての認知行動療法の提供モデルに特化した専門部門「認知行動療法センター」を10月1日に新設しました。
認知行動療法は、認知(考え方)や行動のアンバランスなパターンを見直し、
感情(気持ち)の問題を解決するための精神療法(心理療法)の一種です。
不安障害、うつ病などの心の病気はもとより、
近年は不眠症、慢性疼痛や肥満症のような身体疾患に対してもエビデンスが国内外で報告されています。
千葉大学では、これまで「相談」事業として実施してきた認知行動カウンセリングの件数が年間約1,800回あり
(平均1人15回で約120人/昨年度の実績)、4分の3にあたる約1,400回は、
臨床試験でエビデンスが証明された「不安障害」等に該当します。
このたび、全国の国立大学病院に先駆けて認知行動療法に特化したセンターを設置し、医師の指導のもと、
病院内において臨床心理士が個人認知行動療法の提供を行います。
原則的に、毎週1回50分の個人面接を連続16~20回程度行い、料金は1回50分1万円(消費税別)で、
各種公的医療保険は適用されません。
報道機関の皆様におかれましては、周知にご協力いただけますと幸いです。

<清水栄司 千葉大学病院・認知行動療法センター長>
当センターでは、医師・臨床心理士・看護師などが連携して、エビデンスの強い、
認知行動療法を提供するとともに、患者さんの問題および生活の質(QOL)の改善を目指します。
精神科医。千葉大学大学院・医学研究院・認知行動生理学・教授、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター長、
千葉認知行動療法士トレーニングコースを2010年4月より主宰。
日本不安症学会理事、日本認知・行動療法学会理事、日本認知療法学会役員、日本脳科学会理事など

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職場は物置、カメラで監視

2016年11月17日 | 情報

この中年男性は、5年間耐えに耐えてきたのですね。よく精神疾患を発症しなかったのか、不幸中の幸いでしょう。
過重労働、長時間残業やサービス残業もそうですが、こうしたパワハラもなくなりませんね。
不思議なのは、記事のような経営をしてきて、よく会社が存続できたのか。知りたいものです。

職場は物置、カメラで監視… 元社員が兵庫の機械メーカー提訴
神戸新聞 16.11.8

今年6月、阪神間にある機械メーカーに出社した男性(40)は、職場の壁に前日までなかった監視カメラを発見した。
モニターが映し出すのは男性の姿のみ。「勤務態度が悪い」として退職を迫る社長の意向だと直感した。
嫌がらせのような発言を繰り返され、最終的に「勤務時間中の私語」などを理由に懲戒解雇された男性は今年10月、
解雇無効などを求める地位確認訴訟を大阪地裁に起こした。(森本尚樹)

訴状によると、男性は2005年に入社し、旋盤工として勤務した。
だが、12年に就任した社長から嫌がらせのような発言をたびたび受けるようになり、13年に塗装部門に異動となった。
異動3カ月後に指導役の社員が退職。外部での研修は認められなかったため、インターネットや専門書で塗装を覚えた。
今年4月、男性は塗装場の掃除を命じられた。
掃除が終わっても社長に「まだや」と言われ、さらに掃除しても続けるように指示され、
結局、社長の横で1時間掃除をさせられた。男性はうつ病を発症した。
1カ月半後に復帰した男性は、カスタマーサービスセンターに異動となった。
だが、男性の机だけが物品置き場の片隅に置かれた。その1週間後、男性だけを監視するカメラが設置された。
会社は「会社幹部を威嚇し失礼な発言をした」「勤務時間中に私語を行った」「勤務中に私用電話をした」
「上司をにらみつけた」などを理由に懲戒処分を連発し、男性に出勤停止を命じた。
それでも復帰した男性に、社長が近づいてきて言った。「今すぐ辞めろ」。間もなくして男性に懲戒解雇が言い渡された。
訴状によると、この会社は従業員50人規模ながら、現社長就任後の約4年間に自主退職したのは32人に上る
男性側は、ベテランを若手に置き換える狙いがあると指摘する。
さらに、別の社員もうつ病からの復帰後に不利益な異動をさせられ、賞与を半減させられたとして、
未払い賃金の支払いや嫌がらせの慰謝料を求めて調停を申し立てている。
この社員によると、会社は過去、社員の残業隠しで労働基準監督署から改善を求められたこともあるという。
社長は神戸新聞社の取材に「一定数の社員が諸事情で退社したのは事実だ」とした上で、
懲戒解雇した男性については「素行が悪い社員を手続きを踏んで解雇にした。後ろめたい気持ちはない」と話した。

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