中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

労働安全衛生規則の改正(続編)

2017年04月20日 | 情報

私見を含め、改正安衛則の実務対応策です。

1.産業医の定期巡視の頻度の見直し(則15条関係)
現行:産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、労働者の健康障害防止のために必要な措置を講ずる。
⇒改正:
少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、
事業者から毎月1回以上産業医に所定の情報が提供されている場合であって
事業者の同意がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回にすることを可能とする。
①    衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果
②    ①に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

(解説)産業医の巡視を、「2月に1回にする」にすることが可能になりますが、そのためには前提条件があります。
①事業者の同意
②事業者から毎月1回以上産業医に所定の情報が提供されている
(私見)①②については、容易というより当然のことですから、何ら問題はありません。
むしろ背景には、産業医の業務範囲が拡大し、時代の変化に伴い、その軽重に差が生じてしまい、整理が必要になったことがあげられます。
当職が知り得る限りでは、産業医の巡視は、形式化、形骸化していますし、労働者の就労形態も在宅勤務などで多様化しています。
法律を厳密に履行するには、在宅勤務先まで産業医が巡視しなければなりませんので、見直しは当然でしょう。
安全衛生分科会の審議結果の通りなのですが、当職は、産業医の業務範囲が拡大し、企業や事業場の金銭的負担が増えている現状を
行政側にとって少しでも緩和したい、という本音が現れたのではないでしょうか。
これは、以前にも紹介したのですが、ストレスチェック制度の検討会である委員が、「ストレスチェック制度の導入で、
産業医の負荷が増えるが、その対価はどのように考えているのか」という問いに対し、当事の安全衛生課長が、
「それは、民民の問題であるから、言及しない」と回答しているのです。
因みに、このやり取りは、よほど拙かったと考えたようで、正式の記録公開が他の検討会に比べ、大幅に遅れましたし、
しかも正式の記録に掲載されていません。
当局にとって、相当の問題意識を与えたのでしょうね。

2.健康診断の結果に基づく医師等からの意見聴取に必要となる情報の医師等への提供
現行:事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、
当該労働者の健康保持に必要な措置について、医師等からの意見を聴取する。(法第66条の4、則第51条の2ほか8省令8条文)
改正⇒
事業者は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行う上で
必要となる労働者の業務に関する情報を当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならないこととする。

(解説)医師等からの意見を聴取する前に、情報を提供しなければならない、ということですから、
言わずもがな、というステップを明確化したということです。
(私見)産業医の立場からは、当然のことを、規定化したということでしょう。
実務レベルでは、既に当然のこととして、一般化していることと考えます。

3.事業者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が
1月当たり100時間を超える労働者について、当該労働者からの申出に基づいて医師による面接指導を行う。
(法第66条の8、則第52条の2)
改正⇒
事業者は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合における
その超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の
氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供
しなければならないものとする。

(解説)2.項と同様に、医師による面接指導を行うには、
当該労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならない、という
当然の対応を規定化したものです。情報を産業医に提供しなければ、産業医による面接指導を行うことはできない、ということです。
(私見)現在、労基法改正の議論が行われていますが、新聞紙上でも報道されている通り、
そもそも月100時間を超える時間外労働は禁じられることになっていますから、
「1月当たり100時間を超える労働者について、当該労働者からの申出に基づいて医師による面接指導を行う。」ことは
あり得ないことで、明らかな法令違反です。
改正安衛法と、労基法改正とでどのような整合性を確保するのでしょうか?

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