中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

2年目の「ストレスチェック」⑥

2017年05月23日 | 情報

最も質問が多いと推測できる項目を、やっと公開することができました。

Q5.面接の希望者が、とても少ないようです。対応策は?(1番)

A5.この質問が、1番多いのではと推測しています。
しかし、原則論としては、制度上、会社側にとって、全く問題のないことなのです。
厚労省の検討会報告書やパブリックコメント結果においても、
「情報の遮断は法の予定するところ」であるとして、実施者(即ち、会社側)には責任が及ばないものとされています。

参考までに、厚労省の目論見では、面接対象者は、受検者の10%、面接希望者は、対象者の10%、です。 
しかも、実際は、目論み以下で、数パーセントいう定性情報です。
さらなる情報ですが、さらに面接者の10%が、要治療者という推定もあります。
すなわち、1000人の受検者に対して、要治療者は1名という推定値になります。

〇従って、実施者(即ち、会社側)としては、面接指導を担当する医師に、一任しても制度上、OKということになります。
会社側にとっては、制度を運用する責任はありますが、中身は全く窺い知れないことなのですから。

〇ところが、ここで早とちりをしてはいけません。
行政側も、原則論で終わっては、「まずい」と考えたのでしょうね。
ストレスチェック制度Q&A;Q21-3を見てみましょう。
Q:産業医が実施者としてストレスチェックを実施し、医師による面接指導が必要と判断した労働者が、
面接指導を希望せず、事業者へのストレスチェック結果の通知にも同意しない場合に、
産業医から通常の産業保健活動の一環として実施する面談を受けるよう強く勧奨してもよいのでしょうか。
A;面接指導を希望しない労働者についても、通常の産業保健活動の中で相談対応が行われることは望ましいことですので、
実施者である産業医から、通常の産業保健活動の一環として実施する面談を受けるよう強く勧奨することは問題ありません。
このようなストレスチェック後の対応方法については、必要に応じて衛生委員会等において調査審議を行って、
社内ルールを決めていただくようお願いします。

〇ですから、「同意・申出がない以上、安全配慮義務は生じない」という、ストレスチェック制度のみに限定した、
短絡的な結論付けには、大きな問題が生じることになります。

〇具体的には、どのように対応すればよいのか?
ストレスチェックは、1次予防が目的ですから、上述の予測のとおり、
面接希望者の目的は、医師の専門分野以外のことが、大半であると予測できます。
ですから、事業者(会社)は、医師と相談し、医師面接以外の選択肢を、面接対象者に提示することが必要でしょう。

〇例えば、通常の産業保健活動として、保健師や産業カウンセラーと相談できる体制を整える、
または、産業医との面談機会を用意する等でしょう。
これならば、通常の産業保健活動になるわけですから、いちいち会社側に報告する義務はありません。
むしろ、個人情報の保護を求められますから、当然に、個人情報は産業医の段階で秘匿されることになります。
しかも、産業医のみが知っているストレスチェックの結果が実施者(即ち、会社側)に伝わらず、
さらに、産業医個人の責任が問われることにならないと考えられます。

〇ただし、注意点が一つあります。ストレスチェックの結果は全くの別問題として、取り扱うことです。
即ち、ストレスチェックの結果を基にして、産業医面談をしてはいけない、ということです。
通常の産業保健活動と、ストレスチェック制度は、全くの別物という理解が必要です。


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