中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

職場復帰支援②

2017年07月17日 | 情報

Q①:会社は、休職者がどの程度まで回復したら、復職を認めてもよいのでしょうか?

A①:いま、「こうだ」と特定できる判断基準がありません。また、法令や、行政からの通達、指針もありません。
結論としては、事例や専門家のアドバイスに基づいて、会社独自の判断基準、判断指針や人員体制、予算等の
受け入れ能力を勘案し、決めていただくことになります。

以下、できるだけ具体的な考え方を示します。
復職希望者にとって最も厳しい基準は、「休職前のパフォーマンスを発揮できる能力を回復できたと、
自己判断出来たら認める」というものです。即ち、会社判断ではなく、労働者の判断に委ねていることです。
従って、会社は、自動的に原職復帰させ、休職前の職務に就かせます。
職務を遂行できるかどうかは、復職者当人の責任としています。
また、職務を遂行できないのであれば、再休職するか、配置転換を受け入れるということになります。
一方、復職希望者にとって最も優しい(緩い)基準は、
「主治医の復職を可とする診断書が提出されたら認める」というものです。
即ち、これも、会社判断ではなく、労働者の判断に委ねていることです。
ところが、というか、当然というか、前の基準と後の基準の間で、復職基準を決める場合は、
多くの会社判断が必要ということになります。

前者の基準は、多くの大企業をはじめ、採用企業はたくさんあります。
採用するメリットは、職場復帰支援制度が必要ないことです。何物のも代えがたいメリットです。
費用、時間、人材、それに法的問題等、一切の課題から解放されていることです。
デメリットは、きびしい基準ですから、会社にとって有益で貴重な人材を失いかねない危険があることです。
なお、特別な運用や配慮も可能ですが、待遇の格差は、揉め事の原因にもなりかねません。

ただし、片山組事件の最高裁判決(最一小判平10.4.9)を参照してください。
「職種・職務内容を特定していない労働契約の従業員が、原職には復帰できないが復職を希望している場合ですが、
就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできなくても、
その能力、経験、地位、企業の規模・業種、企業における労働者の配置・異動の実情等を総合的に考慮して、
他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているのなら、
債務の本旨に従った履行の提供があるとして、新たな職務をつくる必要まではないものの、
他の業務への就労の可能性を追求すること」が求められています。

例えば、休職期間満了の期限が迫っている場合を想定してください。
休職者は、休職期間が満了すると、原則として、社員の身分を失うことになるのです。
休職者は、職を失うことを恐れて、会社に対しいろいろな要望を申し出てきます。
会社は、この要望に対して、ひとつひとつ丁寧に対応しなければなりません。
就業規則どおりに運用しているとして、単純に解雇すると、不当解雇であるとして争いに発展しかねません。
ですから、「休職前のパフォーマンスを発揮できる能力を回復できたと、自己判断出来たら認める」という基準を
決めることには、何ら問題はないのですが、前項(職場復帰支援①)に記載した、
「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を
意識した運用策を、新たに策定する必要があるでしょう。

次に、後者を採用する企業は、現在のところ、当職が認識しているかぎりでは、1社のみです。
他に探しても、ほとんどないでしょうね。
通常であれば、たとえ体力ある大企業であっても、なかなか採用できる制度ではないでしょう。
なぜならば、運用を間違えると、会社が、事業場が、仕事をしている状況ではなくなり、
リハビリ施設状態になってしまう可能性もあるからです。
しかし、これは、厚労省が推奨している「事業場における治療と職業生活の両立支援」を具現化している理想形と、
解してもよいかもしれません。
なお、具体的には厚労省が発出した「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
(平成28年2月)を参照してください。

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000113625_1.pdf#search=%27%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%A8%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AE%E4%B8%A1%E7%AB%8B%E6%94%AF%E6%8F%B4%27

 

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