中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

復職不可は違法

2017年08月25日 | 情報

当事案は、精神障がいによる係争ではありませんが、参考になりますので取り上げました。
新聞各紙の報道内容からの考えですが、結論から云えば、原告勝訴。
ですから、早期に話し合いで解決してほしいと思います。
まず、参考判例として、当ブログでも再三紹介している片山組事件(最一小判平10.4.9労判736号15頁)があります。
他にも、類似の判例がありますが、当判例に従えば、主治医の診断書があることや、原告が復職に意思を示していること、
等から、争いの余地はないように思えます。
さらには、障害者枠での継続雇用も可能なのですから、不当解雇になるのではと考えます。
しかし、代理人弁護士として、当然の知識、対応のはずですから、報道からは窺えない何かがあったのでしょうね。

事故で障害「復職不可は違法」元社員、日東電工を提訴へ
2017年8月16日 朝日

事故で重い障害を負ったあと、会社が復職を認めず退職させたのは違法として、
電子部品大手の日東電工(大阪市)の元男性社員(43)が近く、大阪地裁に裁判を起こす。
雇用の継続と障害への配慮などを求める考えだ。
人生の途中で障害者となった社員に企業はどう対応すべきかを問う裁判になりそうだ。
代理人弁護士によると、男性は1999年に正社員として採用された。
広島県尾道市の事業所で研究開発に携わっていた2014年5月、休日にバイクを運転中、衝突事故に遭い、首の骨を骨折。
下半身が完全にまひし、上半身も十分動かせなくなって車いすを使うようになった。
休職し、昨年7月、通院に便利な神戸市内に転居した。
リハビリの結果、時間はかかるがパソコンを使えるようになり、昨年8月、復職を申し出た。
会社側には、週の半分は在宅勤務▽それが不可でも週1日は昼に早退
▽自宅から尾道市内の職場までの新幹線と介護タクシー代で1日あたり計約1万5千円の支給などを求めた一方、
給与が下がってもやむをえないとも伝えたという。
しかし同社は今年1月に「復職不可」と決定。2月には休職期間満了とし、退職扱いにした。理由は説明されなかったという
男性側は訴状で、早退を認めることや交通費支給が、「企業規模からして過大な負担を及ぼすとは言えない」と主張。
「企業には障害のある社員に配慮する法的義務がある。
復職は可能だったのに退職扱いとしたのは解雇権の乱用だ」と訴えている。
16年4月施行の改正障害者雇用促進法は、企業に「労働者の障害の特性に配慮した施設の整備や必要な措置」を
義務づけている。厚生労働省の指針は「企業は過重な負担にならない範囲で措置を講じる」としており、
裁判では退職させた日東電工の対応の適否が争点になりそうだ。
男性は朝日新聞の取材に「会社には柔軟な対応をしてほしかった。
復職を希望するほかの中途障害者の後押しになる判決が出ることを願っている」と述べた。
同社は「個人情報に関係することもありコメントは差し控える」としている。(釆沢嘉高)

長瀬修・立命館大学生存学研究センター教授(障害学)の話  
障害者雇用促進法の改正で、企業は「過重な負担」がない範囲で障害者の社員が働きやすい環境へと
変更する「合理的配慮」をしなければならなくなった。
しかし何が「過重な負担」なのか明確な基準はなく、判例も不十分だ。障害の状況は一人ひとり異なり、
企業の対応を画一的に決めにくい。今回のような裁判は、企業と障害者が協議する際の目安を示すことになり、
社会的影響や意義は大きい。


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