中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「別室1人勤務」に賠償命令

2015年05月29日 | 情報
古典的な、典型的ないやがらせ行為です。
社員にどのような手落ちがあったのか不明ですが、記事のような行為をしてはいけません。
明らかな不当労働行為、ハラスメント行為です。
争ったら会社側は確実に負けます。
なぜなら、当該従業員の精神状態は、いたって正常ですし、考える時間は十分にありますから、
関係者にも相談できますので、証拠を集める時間もたっぷりあるからです。

「別室1人勤務」に賠償命令…嫌がらせと認める
2015年04月25日 読売

一人だけ別室で働かされて不当に退職を強要されたとして、大和証券(東京)から
関連会社の日の出証券(大阪市)に出向した男性(42)が、両社に200万円の慰謝料などを求めた訴訟で、
大阪地裁は24日、両社に150万円の支払いを命じた。

中島崇裁判官(三重野真人裁判官代読)は「ほかの社員から長期間隔離し、
退職に追い込むための嫌がらせだった」と述べた。
判決によると、男性は2012年10月、日の出証券に出向し、一人の部屋で顧客開拓を担当した。
労働組合を通じて抗議し、約4か月後、同僚らがいる部屋に移った。
中島裁判官は、出向直後で指導が必要なのに一人だけ別室としたのは極めて不自然だと指摘。
会社から与えられたパソコンでは、業務に必要な情報が閲覧できず、
会議にも呼ばれなかったことなどを踏まえ、「組織的な嫌がらせで不法行為にあたる」とした。
大和証券についても、日の出証券から男性の業務に関する報告を受けていたとし、賠償責任を認めた。
両社は控訴するか検討するとしている。

大和証券などに賠償命令=「追い出し部屋」で退職迫る―大阪地裁
時事通信 4月24日
大和証券(東京)からグループ会社の日の出証券(大阪)に転籍の上、
退職を迫る「追い出し部屋」で勤務させられたとして、
男性社員(42)が両社に200万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決が24日、大阪地裁であった。
中島崇裁判官は「組織的、長期にわたる嫌がらせで悪質」と述べ、両社に150万円を支払うよう命じた。
中島裁判官は、一人きりの別室勤務や、新規顧客開拓業務への専従について、
大和証券から了解を得ていたと認め、「退職に追い込むための嫌がらせ」と指摘した。
転籍の無効確認については、男性が書面で同意しているため、請求を退けた。 

会社のいやがらせ行為として、有名な判例があります。

トナミ運輸事件です。
原告B氏は、当時所属していた営業所で、過当競争を避けるために談合し、
違法な割増運賃をとっていた状況に不満を持ち、最高幹部が営業所を訪ねてきた時に直訴をしましたが
「役員会で決めたことだ」と取り合ってくれませんでした。
そこで、原告はトラック業界の闇カルテルをY新聞社へ告発し、新聞に掲載されることになりました。
原告B氏は、告発後(1975年)以降、研修所に異動を命じられました。
2002年1月、B氏は、同社を相手取り、25年以上に及ぶ昇格差別、人権侵害による経済的・精神的損失として
4,500万円の損害賠償と謝罪を求める訴訟を富山地裁に起こしました。
2005年、富山地裁は同社に対し1,365万円の支払いを命じる判決を下しました。
その後、控訴審で1審判決の金額に上乗せした賠償金を支払うことで和解しました。
原告のBさんは、家族と生活を守るために、25年以上も我慢を強いられてきました。

この裁判は、今日の「公益通報者保護法」制定のきっかけを作りました。
しかし、内部告発する者を保護することを目的にしてできた法律ですが、
実際に内部告発することは、現代の企業社会において、余程の精神力がないとできません。
通常、内部告発者は、四面楚歌に逢って、精神的に多くの負担を背負う結果になってしまいます。
一個人と、企業という組織とが戦うことになるからです。

「公益通報者保護法」の概要を紹介します。

公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者
及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護等を図る、法律です。
(1)目的
公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を
図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること
(2)「公益通報」とは
()労働者(公務員を含む。)が、()不正の目的でなく、()労務提供先等について
()「通報対象事実」が()生じ又は生じようとする旨を、()「通報先」に通報すること
(3)「通報対象事実」()とは
① 国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として
別表に掲げるものに規定する罪の犯罪行為の事実
② 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが①の事実となる場合に
おける当該処分の理由とされている事実等
(4)「通報先」()と保護要件
① 事業者内部(内部通報)
:通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると思料する場合
② 通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関
:通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合(*)
③ 事業者外部(通報対象事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者)
:上記(*)及び一定の要件(内部通報では証拠隠滅のおそれがあること、
内部通報後20日以内に調査を行う旨の通知がないこと、
人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険があること等)を満たす場合
(5)公益通報者の保護
保護要件を満たして「公益通報」した労働者(公益通報者)は、以下の保護を受ける。
① 公益通報をしたことを理由とする解雇の無効・その他不利益な取扱いの禁止
② (公益通報者が派遣労働者である場合)公益通報をしたことを理由とする
労働者派遣契約の解除の無効・その他不利益な取扱いの禁止
(6)公益通報者・事業者・行政機関の義務
① 公益通報者が他人の正当な利益等を害さないようにする努力義務
② 公益通報に対して事業者がとった是正措置等を公益通報者に通知する努力義務
③ 公益通報に対して行政機関が必要な調査及び適当な措置をとる義務
④ 誤って通報を受けた行政機関が処分等の権限を有する行政機関を教示する義務
(公益通報者保護制度ウェブサイトより)






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