自作の俳句

長谷川圭雲

0809健太郎日記・勝手に春樹讃歌「騎士団長殺し・顕れるイデア編ー7」-長谷川圭一

2017-07-14 09:11:50 | 自作の俳句

            勝手に春樹讃歌「騎士団長殺し・顕れるイデア編―7」

                   ― 長谷川圭一

 

「7」の表題はー良くも悪くも覚えやすい名前ーである。最初に主人公の肖像画に対する意識が示される。

「肖像画を描くために必要なのは言うまでもなく、相手の顔の特徴を的確にとらえる能力だが、それだけでは十分とは言えない。それだけだとただの似顔絵(カリカチュア)になってしまいかねない。」

 本稿の「3」で述べた、湯島天神梅まつりで描いてもらった東大まんがクラブによる私の似顔絵は、まだ精進の途中にある純真な女学生によるものであり、それによって私の顔立ちの核心にあるものを描いてもらいたかったからであった。

 ありのままの自分を知ってもらいたくて送ったそのコピーの送り先からは「あて所に尋ねあたりません」と、私の手元に戻ってきた。まさに無というよりは空であった。

 肖像画の依頼人が銀色の豪華なスポーツ・クーペに乗って主人公の住む邸宅に現れた。

「身長は百七十センチより少し高いくらいだろう。・・・軽くウェーブのかかった豊富な髪は、おそらく一本残らず白髪だった。」

「メンシキです。よろしく・・・・。免税店の免に、色合いの色と書きます」

 居間に案内し、そこでの会話で、メンシキは居間に面したテラスから自分の家が見えると言った。

 まさに免色の家は谷間を隔てた向かい側にある、主人公が感嘆して眺めていた瀟洒な邸宅であった。

 主人公は、自分がここに住んでいる事がどうして分かったのかと質問すると、「いろんな情報を効率よく手に入れるのが、私の仕事の一部になっています」と返事した。

「インターネット関連ということですか?」

「そうです。・・・」と肯定し、さらにそれは仕事の一部にすぎないと言った。

 主人公は素直な疑問をぶっつける。

「ぼくがあなたの家の近くに住んでいるということは、今回の肖像画のご依頼と何か関係あるのでしょうか?」

「答えはイエスであり、ノーです」と免色は答えた。

 そして免色は言った。谷間越しにちょくちょく顔を合わせていると。

勿論主人公は知らない。それで主人公は免色は望遠鏡で主人公の家を観察しているのではないかとふと思った。

 この憶測は後のストーリーに絡んでくる。春樹はストーリーの展開を事前にさらりと晒(さら)す事が多い。

 会話が居間にある、この邸宅の持ち主で、今は伊豆高原の養護施設にいる、主人公の友人の父の持ち物である、オペラのレコードの話になり、当然「ドンジョバンニ」の話になる。

 免色はヨーロッパに何度も行っていて、モーツアルトの「ドンジョバンニ」をあちこちで聴いていた。

 そして言う「公演が終わって外に出ると、プラハの街に深い霧がかかっていました。・・・石畳の道をあてもなく歩いていると、そこに古い銅像がぽつんと建っていました。・・・中世の騎士のような格好をしていました。そこで私は思わず彼を夕食に招待したくなりました。」

 これはオペラ「ドンジョバンニ」で、ドンファンのジョバンニが従者のレポレロとたまたま、自分が殺した騎士団長の眠る墓に来た時、その墓にあった騎士団長の石像がジョバンニに口を開いて「悔い改めよ」と言ったことに由来する。

 ジョバンニは笑って、その石像に対し、あなたを自分の家の食事に招待すると冗談を言う。

 約束通りその石像はジョバンニの家に現れた。そして「悔い改めよ」と更に忠告するが、ジョバンニはそれを拒否する。石像が消えると、地獄の扉が開き、ジョバンニはその中に引きずり込まれた。

 この話を知っていると、免色の「思わず彼を夕食に招待したくなりました」の諧謔(かいぎゃく)が分かる。

 主人公は免色と会って、肖像画を描く事を受諾する。そして段取りを決める。免色は主人公の家のアトリエに通う事になる。

 免色は自分の肖像画なのに肖像画を描く際「それがどのようなスタイルであれ、あなたが好きなように、そうしたいと思うように描いていただければ」と奇妙な注文を出す。

「つまり一時期のピカソの絵のように、顔の片側に目が二つついていてもかまわない、ということですか?」

この会話の部分に不必要に漢字でなく、平仮名が使われているのはこの会話の内容を面白くする技巧であろうか。

 免色との会話で主人公は免色に対する秘められた謎の部分を強く感じる様になった。

「免色という人物の中には、何かしらひっそり隠されているものがある。その秘密は鍵の掛かった小箱に入れられ、地中深く埋められている。・・・今ではその上に・・・緑の草が茂っている。」

 この部分の記述も後で、実際に免色が自分で地中に埋められたものを掘り起こす行為の暗示とも言える。

 免色が超高級車とも言える銀色のジャガーで帰って行った後、主人公は自分に法外な報酬で肖像画を依頼した免色の動機に強い疑問を抱く。

「日が落ちると、谷間の向かい側の白いコンクリートの屋敷に明かりがついた。・・その家は遠くから見ると、夜の海を静かに進んでいく豪華客船のように見えた。」

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