ヤナーチェクは19世紀から20世紀前半にかけて活躍したチェコの作曲家です。音楽ファンの間でもさほどポピュラーではありませんが、「シンフォニエッタ」が村上春樹の小説『1Q84』のプロローグで印象的に描かれてにわかに評判になりました。6,7年前になりますか。
リオのオリンピック開幕に触発されて久しぶりにレコード棚を探して針を落としました。チェコの民謡に取材した旋律やリズムがちりばめられて親しみやすい小交響曲の風情ですが、金管楽器のファンファーレが全曲の序奏となって特徴的です。つまり、オリンピックに協賛のレコードコンサート?
レコードジャケットに若い小澤征爾の顔があしらわれています。ボストン交響楽団の音楽監督に就任したばかりの頃でしょうか。30年以上も前、シカゴ交響楽団を指揮した珍しい記録です。
若々しい情熱とリズム感が若き小澤らしい、と言えば後付けです。当時、ベルリンフィルに匹敵すると評された腕達者のシカゴ響。合奏のみごとさは当然として華やかな金管の響きはリオのオリンピックにふさわしいものでした。オルトフォンのMC30カートリッジが音盤から拾い上げた音響をマッキントッシュの管球アンプが老兵タンノイ・ウエストミンスターを励まして立派に再現してくれました。
さて、村上春樹氏の『1Q84』。青豆という奇妙な名を持つヒロインが渋滞の高速道路のタクシーで耳にする設定でした。一節を聴いただけで彼女に「ねじれに似た奇妙な感覚をもたらす」ことになります。分厚い2巻の大著は難解でした。読書中に感じた不思議な感覚だけが残って、「シンフォニエッタ」が小説の中でどのような意味をなしたのかも忘れ果てていました・・・。