続平成太平記

アジアの中の日本

韓国、「FTA再交渉」米が8月の協議開始を決定「強硬姿勢」

2017-07-18 09:28:26 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


2017-07-18 05:00:00

韓国、「FTA再交渉」米が8月の協議開始を決定「強硬姿勢」

米がFTA見直しに積極的

為替介入禁止へ発展すると




6月末の米韓首脳会談は表面的に穏やかであったが、裏に回ると米側の不満が鬱積していた。

韓国が、前政権の決定したTHAAD(超高高度ミサイル網)設置を、1年以上も稼働を送らせる措置に出たからだ。

理由は、環境影響評価を実施するというもの。韓国の制度では、軍事施設には、環境アセスメントは不要となっている。

米国側は、文政権が明らかに中国へ配慮した措置と激怒した。

この激怒が、米韓FTA(自由貿易協定)の見直しという形で、韓国へ突きつけられている。

米韓FTAでは、韓国の対米輸出が増える一方で、米国の対韓輸出は減少している。

トランプ大統領は「不公平」だとして、再交渉を一方的に決めてきたもの。米国がTHAADを巡る韓国政権の動きを「裏切り」と見ている結果だ。

韓国の文在寅政権は、政権発足直後とはいえ米国の対北朝鮮政策を甘く見てきた節がある。

だが、文氏は先のG20からの帰国後の閣僚会議で次のように述べざるを得なくなった。

「韓国一国の力では北朝鮮の核開発を止められない」と悲痛な思いを口にした。

それまで韓国は、米中外交の間に入って、「バランサー役」を務める積もりでいた。

要するに、米中を適当にあしらいながら、韓国のリードで北朝鮮問題を解決可能と見ていた。

私はこれについて、韓国にその実力がなく、強固な米韓同盟を築くことでしか韓国の安全保障を守られないと指摘してきた。現実に、文氏はそれを認めざるを得なくなった。

THAADといえば、米国議会は着々と手を打っている。韓国の「遅延」を許さない雰囲気が浮かび上がってきた。次の記事がそれを証明している。

「米上院が審議中の『2018会計年度』(2017年10月~2018年9月)の国防権限法に韓国における高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を『同盟防衛の一環』と明文化したことが明らかになった。

国防権限法は、国防分野と関連した行政府に対する議会の政策指針であり、韓国へのTHAAD配備を既成事実化するための議会レベルの“地固め”と見られる。

ジョン・マケイン上院軍事委員長の名義で11日に提出された同法案は、

『韓米同盟の重要性』という項目で、『議会は、北朝鮮の平和的な(核兵器)廃棄を達成するため、韓国へのTHAAD砲台の配備を含め、域内同盟国に対する防衛公約を再確認しなければならないという認識を持っている』と明らかにした」(韓国『ハンギョレ』7月13日付)

文氏にとっては、もはや「後悔先に立たず」である。一度、米国を怒らせた代償は大きいことが分かった。

それは、「米韓FTA見直し」という請求書になって帰ってきた。

後述の通り、「8月再交渉」というのだ。

日本は、1980年代の日米経済摩擦で、米国の強硬な要求に遭ってきた。

米高官による「口先介入」で、円高ドル安を一方的に押しつけたのだ。

あのとき、日本中を見舞った恐怖感は大変なものだった。

現役記者として取材していた私の経験からいえば、まさに「日本沈没」という悲観したムードであった。

私が常々、「米国は怖い存在である」という裏に、米国が攻撃相手を絞って畳み込んでくる姿は、その雰囲気を経験した者でなければ分からないであろう。

文氏は、これからそれを味わうに違いない。米国というトラの尾を踏んだのである。

米がFTA見直しに積極的

『日本経済新聞』(7月13日付電子版)は、次のように伝えた。

この記事では、米国が具体的に日時を切って米韓FTAの再交渉を迫っていることだ。

むろん、韓国の了承が得られなければ交渉は始まらない。

ただ、米韓FTAには2国間で協定を検証する特別合同委員会を開く条項がある。

米通商代表部(USTR)は同条項に基づいて2国間協議を正式に要求した。

条項では30日以内に合同委を開く必要があるという。これに従えば、8月開催は不可避である。

(1)「米通商代表部(USTR)は7月12日、韓国との自由貿易協定(FTA)の再交渉に向け、8月に2国間での協議を求めると発表した。米国製品の輸出拡大に向け韓国に追加の市場開放を促した。一方、韓国政府は再交渉には両国の同意が必要と表明した」



(2)「ライトハイザーUSTR代表が12日付の書簡で、韓国政府に2国間協議を正式要請した。

書簡では『トランプ政権が重視するのは貿易赤字の削減だ』とFTA見直しの狙いを強調した。トランプ大統領は6月末に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と首脳会談し、FTAの再交渉を提案したが、韓国側は受け入れていない。

米韓FTAには2国間で協定を検証する特別合同委員会を開く条項があり、USTRは同条項に基づいて2国間協議を正式に要求した。条項では30日以内に合同委を開く必要があるという」



米側は、対韓貿易赤字の削減を求めているが、後で取り上げるように韓国経済の実態が脆弱であるため、どれだけ米国の対韓輸出が増えるか疑問視する意見がある。

となると、為替相場の問題に行き着く可能性がある。この点は、韓国が最もナーバスになっている点だ。密かに為替相場に介入して輸出を促進してきたからだ。韓国にとっては正念場である。

(3)「韓国産業通商資源省も13日、米政府が米韓FTA見直しに向けた合同委設置を要求したことについて、『韓国が必ず米国の改定交渉提案に応じる義務があるわけではなく、交渉開始には双方の合意が必要』とのコメントを発表した。合同委の設置要求が、即座にFTAの改定につながるわけではないとの立場を示した」

この韓国側のコメントは、米国に不要な刺激を与えたと見える。

米韓FTA協定では、一方が再交渉を申し入れたら30日以内に開催する決まりになっている。

それをあえて無視するような発言をする。日韓問題でも、こういう類いの発言が実に多いのだ。米側も愉快な気持ちにはなれないだろう。


交渉開始前から、わざわざ米側を強硬姿勢に向けさせる点で、交渉下手という印象が強い。


為替介入禁止へ発展すると

ここで、米国が米韓FTAを問題している背景について見ておきたい。

『ロイター』(5月4日付)は、「米韓貿易協定の見直し、米赤字の改善につながるか」と題して次のように報じていた。

(4)「トランプ米大統領は4月27日のロイターとのインタビューで、発効から5年を迎える韓国との自由貿易協定(FTA)について、再交渉するか停止すると述べた。

再交渉が行われれば米国製自動車の韓国市場へのアクセスが改善し、為替介入に対する締め付けは厳しくなりそうだが、米国の対韓貿易赤字が縮小するかどうかは不透明だ。

米韓FTA(KORUS)の導入で米国の対韓輸出は年100億ドル増えると予想されていたが、実際には世界的な貿易の落ち込みなどにより2016年末までに30億ドル減少した。

半面、韓国の対米貿易黒字は280億ドルへと膨らんだ」


米韓の貿易推移を、FTA発効後の2012~16年までを見ると、米国の対韓輸出は年100億ドル増の予想に反して、30億ドルの減少という予想外の結果になった。

一方、韓国の対米貿易黒字は、280億ドルに増えている。この30億ドル減(米国)と280億ドル増(韓国)の違いは余りにも差がありすぎる。

ただ、二国間貿易ではこういうチグハグな状態になるから、本来は多国間貿易で調整すべきである。

TPPは、まさにこの多国間貿易の舞台を提供するものだ。トランプ大統領が、この違いを理解できないのは大統領として失格である。不動産業は二者取引だ。この感覚で、世界貿易を論じることの矛盾を知らなければならない。

(5)「アメリカン・エンタープライズ研究所のアジア貿易の専門家、デレク・シザーズ氏は、『KORUSに盛り込まれた基準は適切で、問題は韓国経済が非常に弱いことだ』と指摘。『韓国経済の成長ペースはそれほど速くなく、たとえ再交渉しても米国の対韓輸出が急増することはないだろう』と述べた。一方、米経済は堅調で、韓国製の自動車や電気製品など輸入財に対する消費者の需要を下支えしている」

前のパラグラフで指摘された、米韓貿易における不均衡の背景には、次の点がかかわっている。

2012~16年まで米韓の経済成長率に見られた「勢い」の違いだ。韓国経済は下降局面。米国経済は上昇局面である。

これでは、韓国の対米黒字が増え、米国の対韓輸出は不振に陥って当然なのだ。

こういう米韓経済の基調の差を考慮すれば、FTA再交渉をしてもさして違いは出ないのでないか。

したがって、二国間貿易協定よりも、米はTPPへ復帰してその果実を得た方がはるかにメリットは大きいはずだ。

(6)「KORUSの交渉担当者など貿易専門家は、トランプ政権は韓国との再交渉にあたり、米国製自動車に対する非関税障壁を狙い撃ちする公算が大きいとみている。

これは従来の協定で、米国側の手にした恩恵が期待を大幅に下回った分野だ。韓国の自動車市場は世界でトップ10に入るが、米国の16年の韓国向け自動車輸出はわずか6万台程度にとどまった。

これに対して韓国の対米自動車輸出は100万台近くに上る。米下院歳入委員会のサンダー・レビン議員(民主党)は『韓国市場は基本的に閉鎖されたままだ。開放させる策が必要だ』と述べた」


米韓FTAの再交渉では、製品ごとの貿易不均衡が取り上げられる気配だ。焦点は、自動車である。韓国車の米国市場でのシェアは次の通りである。

2011年8.9%

2014年7.9%

2016年8.1%

今年1~5月7.6%

販売シェアとしてみれば、韓国車が米国市場で突出したシェアを占めている訳ではない。今年は8%を割っている。

だが、韓国での米車シェアは日独車に食われているのだ。となると、米車の魅力低下が災いしていると言うほかない。

(7)「米財務省は対米貿易黒字額が大きく、経常収支黒字の対GDP比が7%に達しているとして、韓国を為替監視リストに掲載し続けている。

また韓国政府の為替市場への介入は透明性を欠いていると批判している。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロ―、ジェフリー・ショット氏は、『トランプ政権が為替操作に対する新たな規則について先行となる事例を作ろうと考えるなら、KORUSの再交渉が絶好の機会になるだろう』と述べた」


米国は、為替面で韓国へ注文を出す公算が大きいと予測される。これは、韓国が最も警戒する点だ。

為替面での操作を禁じられると、韓国にとっては大きな影響が出よう。

対米貿易だけでなく貿易全般に制約が加えられるからだ。韓国は為替操作というダーティな手を使ってきたのは周知のことである。

韓国は、最も痛いところを突かれかねない。


(2017年7月18日)
『政治』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 安倍晋三氏とケネディ氏に送... | トップ | 韓国オロオロ、米がFTA再... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。